平成23年度:文教経済委員会行政視察調査報告 | ||||||||||||||||||
今回の視察調査については、文教経済委員会所属委員がそれぞれ担当を受け持ち、それぞれの観点から事前調査、事後報告を行いました。その理由は今年度の委員会重点調査項目に従って、今後の調査研究においてさらにその内容を深め、政策提言への努力を続けていくためです。 私の担当するまとめの部分を中心に報告させて頂きます。 |
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今回の視察調査についてのまとめ | ||||||||||||||||||
1.視察の目的と調査内容について 本年、文教経済委員会は年間調査目標を「産業振興基本条例制定後の地元企業等の振興策」と設定し、長引く景気低迷下での産業振興に関する問題を幅広く捉え、調査活動を活発に行う方針で臨んでいます。そうした中にあって、各種陳情・要望に対する対応調査や分野別意見交換会を実施してきたところですが、 今年度の視察調査項目を @観光と伝統文化に関する事項 A産業振興に係る条例及び計画のあり方 の2点に絞って実施することとし、視察先及び視察項目として 奈良市 ・奈良市文化振興計画 ・奈良市観光交流推進計画 彦根市 ・彦根市歴史的風致維持交流計画 高岡市 ・高岡市歴史文化基本構想 ・高岡市産業振興ビジョン を選定し、平成23年8月24日、25日、26日に実施しました。 視察に当たっては次の点に留意し、それぞれ担当者の事前調査内容を検討しあう中で、視察先の特徴等諸事情を理解した上で視察調査を実施しました。 留意事項) ・高山市にある条例、計画等との比較で彼我の違いを調査検討するもの 「彦根市歴史的風致維持向上計画」 「高岡市歴史文化基本構想」 「高岡市産業振興ビジョン」 ・高山市には無い条例、計画等について調査検討するもの 「奈良市文化振興計画」 「奈良市観光交流推進計画」 事前調査担当責任者) ・奈良市文化振興計画 水門義昭議員 ・奈良市観光交流推進計画 溝端甚一郎議員 ・彦根市歴史的風致維持向上計画 谷澤政司議員 ・高岡市歴史文化基本構想 村瀬祐治副委員長 ・高岡市産業振興ビジョン 山腰恵一議員 ・総 括 中田清介委員長 2.視察先の主な特徴 奈良市の二つの計画は高山市にはない計画であり、伝統文化を生かすまちづくりやまちなみ保存と観光といった面で、これから高山市でも見習いたい視点でした。彦根市歴史的風致維持向上計画と高岡市歴史文化基本構想については、高山市と比較検討させて頂く中で伝統文化と守るべき歴史的風致・まちなみ保存と生活環境の問題等で参考になりました。 「高岡市産業振興ビジョン」については、非常に明確な将来都市像のもと5つの基本方針を打ち立て、その施策の方針や具体的施策に言及している点が、高山市の産業振興計画の対極にあると見てきました。その後、事前調査担当者による調査結果報告をもとに議員間で自由討議を行い、今回の視察の総括を行ったところです。以下に調査項目ごとの総括について報告します。 3.総括 (1)観光と伝統文化に関する事項 @高山市の取るべき方向性について ・文化と経済、大切な伝統や文化と観光等がしっかりとした関係を築き上げることは重要な課題である。 ・住民こぞって意識改革を進めなければならない。そのために、日頃からの地域住民同士の連携、行政 と住民の連携及び情報の共有化を図り、市は「文化財の保存活用と観光の両面」において将来を見 据えた政策を立案する必要がある。 ・「100年後まで城下町高山を残すにはどうしたらよいか?」等、伝統文化、歴史を後世に残していくた めの大きな指針というものが問われている。 ・我々は、これまで、豊かな文化資源の上にあぐらをかいてきたのではないか? 古い伝統や文化を大切に保存し、その上で新しい文化の芽をどのように育て上げて行くのか、またそ れらをどのように経済活動のベースに取り入れて行けばよいか等について、行政や市民との行動指 針を出していかなければならない。 ・伝統・文化がまちづくりの核であるという認識を全ての市民が認識し、その上で観光など経済との関 係を市民に示していくためにも、文化に関する条例や計画等はわが市にも重要で必要なものである。 A方向性を具現化するための取り組みについて 以下の1)〜4)の事柄を順に実施する必要があるのではないか。 1)伝統文化を核としたまちづくりを行うためのスキームの作成 2)伝統文化を核としたまちづくりを行うための条例等の策定 3)文化資源を保存・活用・開発するため総合的な計画の策定 4)−1 個別具体的な計画の新規策定 ・観光に特化した条例や計画・ビジョン等 4)−2 既存の条例、計画等の見直し ・産業振興計画 ・歴史的風致維持向上計画 ・その他関係する条例、計画等 B取り組みの体制について ・歴史文化の保存や活用を行政と市民が一体となってつくり上げて行くことが必要である。 ・高山地域と支所地域を一体として捉えた観光戦略を練る必要がある。 ・地域住民と行政の役割の明確化が必要である。 ・庁内でも関係部署間の連携をより緊密にし、横軸で連携して横断的に取り組む必要がある。 ・今後はNPO等との協働を進め、民間活力を導入するべきである。 C取り組みにあたっての主な重要事項 ・住民のこだわりが、いずれ観光客の本物志向に合致し観光客が増加する。特に外国人は本物を見 に来るので、こだわりのあるまちづくりは必要だ。 ・人情味あふれるもてなしの心の素朴さを、幼少時代からの教育においても培っていく必要がある。 ・モノづくりの伝統を市の重要政策として小学校教育から取り入れ、未来を担う人材輩出に力を注ぐ 必要がある。 ・大学教授や著名な有識者等との連携を強化し、彼らの知見を、街並み景観・文化財の保存・活用 や地元の人材育成に活かす必要がある。 ・三町(上町)は三町、下町は下町、空町は空町等、それぞれの地域で個性を磨き、観光地としての 総合力の強化を図る必要がある。 先日、7月に調査された第6回「地域ブランド調査2011」(株式会社ブランド総合研究所)の調査結果を見ました。 「全国市区町村魅力度ランキング」の中で、高山市は全国ベスト100中で本年66位、昨年36位。飛騨市本年53位、昨年31位。下呂市本年97位、昨年100位。白川村本年106位、昨年69位。の結果が出ていました。 昨年対比で飛騨地域の高山市、飛騨市、白川村は大幅にその順位を下げています。唯一若者にターゲットを絞ったイベント企画等で下呂市が上昇に転じたところです。 この調査はインターネットによる全国36,000人を抽出した調査であり、比較項目も多岐にわたっていますが、私たちの知らないところで、世間の評価は確実に動いていると見ることができます。 前例を踏襲するばかりでなく、改めて文化と伝統に根ざしたまちづくりにさらに磨きをかけるとともに、魅力ある地域づくりへの不断の努力が求められていると認識するところです。 今回の視察調査において強く感じたことは、以下のとおり。 @ 文化はまちづくりの核であるという市民の連帯感 A 伝統的なものを創造的に活用するという視点での政策展開 B 宿泊自体が目的となるような旅の演出の必要性 C アクセスのよさをアピールできる情報発信 D 本物の良さを活かした高山にしかない魅力の発信 などです。 又、奈良市で調査した内容のように、観光に特化した条例や計画、ビジョン等を高山市においても改めて市民合意を得て策定すべきではないか、そう感じているところです。 (2)産業振興に係る条例及び計画のあり方 【高山市産業振興基本条例、高山市産業振興計画と高岡市産業振興ビジョンの比較による検証】 @高岡市の特徴 ・高岡市は時代背景や現状での諸課題を把握した後に、今後の産業の活性 化と持続的な発展 を図る為に必要な取組みを、新産業の育成、地場産業 の振興、企業立地誘致の促進、観光 振興、農商工連携、産業支援環境体制の充実などと、わかりやすく明確に捉え、その上で明確な 高岡市の将来像を示している。 ・産業振興ビジョンの対象分野をはっきりと示し、農業分野については6次産業化の進展にも配慮し て一部を加えている。 ・あくまでももの作りを基軸として成長が見込まれる分野を対象としてい る。 ・東海北陸道の開通、北陸新幹線高岡駅開業などを契機とした、広域観光拠点化を打ち出している などが基本部分からうかがえる。 その他実行体制部分でも、評価検証体制を位置づけている。また、新産業創造プラットフォーム体制を敷くなど、新事業展開・新分野進出等への支援体制をワンストップで行える体制を取るなど、国、県の支援体制との連携をもしっかりと位置づけられている。 もう一点ビジョン策定にあたっては、専門的知見の活用をはかるなど幅広い視野での組み立てを行っている点などが高岡市のビジョンでは印象に残った。 A考察 ・高岡市では農商工連携関連のみを産業振興ビジョンでは取り入れており (関連する計画として は高岡市農林水産業振興プランを位置づけている)、高山市は産業振興計画に農業を全面的に取 入れているが、国の制度に大きく左右される農業分野は、農商工連携関連のみとするのが適当で はないか。 ・高岡市では産業の位置づけを明確に分析している。人口15万〜20万人の類似都市の中での製 造品出荷額と卸・小売商品販売額について、マトリックス分析を行い冷静に分析している。(ちなみ に商品販売額の方が多い商業都市としての姿と、第2次産業従事者の多い工業都市としての構造 を併せ持つ産業構造)その上で戦略的な将来構想を組み立てているが、高山市ははじめに「飛騨 高山ブランド強化による産業の振興」を第1命題として計画を組み立てているため、高岡市のように その産業構造の「強みと弱み」を分析して、どう今後の環境変化に対応していくのかといった戦略に 欠けている点が目立ってしまっている。 ・国の成長戦略や県との連携による産業振興の指針という位置づけを取り入れている高岡市と比べ、 やはり経営戦略といった点で見劣りする。 ・観光面でも、まず観光に特化した計画やビジョンの必要性を、奈良市において強く感じてきたところ であるが、高山市の計画における記述は、そうした面において将来ビジョンを打ち出せずにいるの ではないかと感 じている。 B高山市の取るべき方向性について 国の新成長戦略(2010)においては、まず「グリーンイノベーション」、ライフイノベーション」、「アジア戦略」、「観光・地域」を成長分野として捉え、これを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を進めるとしています。高山市にとって見れば、「何で稼ぎ」、「どう雇用を守っていくのか」の戦略が求められているといえ、産業振興に関する考え方もその基本姿勢を打ち出し、産業振興へのガイドラインを打ち立てることが強く求められているといえます。 今後さらに調査研究を加え、産業振興に係る条例計画のあり方などを検証していきたいと考えます。 |