平成23年度文教経済委員会調査報告A
報告日 平成4418日           報告者:中田清介

調査研究項目

概要説明(主な内容)

産業振興に係る条例及び計画等のあり方

長引く不況の中、度重なる景気対策を発動しても一向に市内各業界の景況は回復しない状況である。人口減少化社会に向かう等社会的変化が地域に与える影響も大きく、今後の高山市の向かうべき産業構造のあり方、何で稼ぎ何で雇用を維持していくのかが問われる事となる。改めて高山市の産業振興に係る条例及び計画等のあり方を調査する。

調査内容 調査結果
1−1.現状の把握(経済状況
(1)高山市経済を取り巻く現状について
@地域の人口構造
 住民基本台帳調査によると平成23年10月1日現在で、高山市は93,666人。平成21年比で中心市街地では2.7%、支所地域では1.55%の減少。中心市街地の減少は様々な意味でまちづくりに大きな影響を与えると予想されます。(高山市のあらまし)

 今後の人口推計を見ると平成35年では76,645人まで減少することが予測されており、特に生産年齢人口の減少は平成10年対比74%に減少。人口構成比では60%から54%まで低下する事が指摘されています。(国立社会保障人口問題研究所)

 
H21よりまちなか居住推進策の為、中心市街地区域を一部変更したが、未だ中心市街地人口は回復するに至っていません。
◆地域別年齢割合(住民基本台帳:平成23101日現在)
地域名 人口(人)
15歳未満 1564 65歳以上 合計
中心市街地 1,655 8,947 5,753 16,355
中心市街地以外の
高山地域の合計
7,604 30,036 10,879 48,519
支所地域 3,890 16,543 8,359 28,792
合  計 13,149 55,526 24,991 93,666
地域名 割合(%)
15歳未満 (H21) 1564 (H21) 65歳以上 (H21)
中心市街地 10% (11) 55% (54) 35% (35)
中心市街地以外の
高山地域の合計
16% (16) 62% (62) 22% (22)
支所地域 14% (14) 57% (57) 29% (29)
合  計 14% (14) 59% (60) 27% (26)
地域別の人口構成では、高齢化も少子化も一番進んでいるのが中心市街地です。
A地域の総生産額及び所得構造(岐阜県市町村民経済計算)

岐阜県市町村民経済計算によると高山市の総生産は349,101 百万円、総所得は230,639百万円となっています。

高山市総生産と所得の推移(百万円)

区分

H17

H18

H19

H20

H17

所得

239,849

239,938

243,038

230,639

96%

総生産

356,985

366,426

369,388

349,101

98%

 それぞれH17年度比では、H20年度所得で96%、総生産で98%と減少しています。所得金額ベースでは約100億円、総生産では約788千万円の減少となっています。21年度以降のデータが未発表のためはっきりと言えませんが、リーマンショック以降の影響は少なくとも見て取れます。
 又、給与所得ベースでの減少は、次のグラフからご覧いただけますが、団塊の世代の退職に伴う影響額を見て頂けます。H19年度以降の影響額はH20から現れてきますが、こちらの減少額も約100億円と出ています。
 人口構造や経済動向で揺れる地域の経済の一端を見て頂けると思います。

B高山市の産業構造(類似都市との比較)
 
次に高山市の産業構造を見て頂きます。何で稼ぎ何で雇用を守っているかを類似都市と比較して見て頂きます。

・就業人口では、類似都市の中で第3次産業人口が一番多いのが高山市です。

・産業構造の比較から言えば商品販売額の上位にあるのは、伊勢原市、宇和島市、岩見沢市、大和郡山市、三木市です。

・就業構造の中での商業従事者と製造業従事者を比べる中では、商業従事者が多いのが高山市です。これらの比較からは、飛騨地域の需要を賄う商業都市としての性格と、サービス業を含めた観光都市としての性格が大きくクローズアップされているのではないでしょうか。(2011政府統計経済基盤)
類似団体Uー1(123団体)  
人口5万〜10万産業構造U次・V次95%未満かつ55%以上
高山市 石狩市 むつ市 大館市 田辺市 豊岡市 三次市 益田市
萩市 佐伯市 岩見沢市  大仙市 大館市 米沢市 石岡市 笠間市
牛久市 日光市 渋川市 茂原市 君津市 印西市 香取市 伊勢原市
柏崎市 坂井市 安曇野市 近江八幡市 福知山市 舞鶴市 亀岡市 三木市
大和郡山市 宇和島市 宗像市 大村市 天草市 中津市
ここでは高山市のように面積が大きい団体並びに8万人以上の団体を選んで分析しました。


・平成20年度の高山市の就業構造から見てみると、上の円グラフの示したとおりです。就業人口は52,495 人。主な業種は以下のとおりです。

卸・小売業 18% 9,259 建設業 12% 6,326
製造業 13% 6,653 農林漁業 11% 5,726
サービス業 12% 6,361 飲食宿泊業 10% 5,351

(2)各産業分野の動向
@高山市の商業の動向

(商業統計調査)
 H19で卸小売りを含めた販売額は226 925百万円、事業所数1,795 、従業者数9,586 というところです。(H24の経済センサス調査の結果が待たれるが変動が予想される)高山市の構造としては平成19年度で以下のとおり。
H19 卸売業 小売業

年間販売額(万円)

10,744,845

11,947,731

事業所数

342

1,454

従業者数

2,656

6,930

売り場面積(u)

158,252





小売り商業の動向を地域の総所得動向、売り場面積、販売額、従業者数で分析してみると、地域の総所得が減少する中で、大型店の売り場面積の拡大が販売額、従業者数の拡大に結びつかない姿が現れています。大型店の出店は地域経済にとってプラスの要因にはならず、零細商業者の転廃業に結びつき、地域コミュニティの崩壊等社会的悪影響を及ぼす原因ともなっています。地方の小都市にとっては、売り場面積の総量規制を導入しなければ地域が崩壊すると指摘されています。そうした中にあっては中心商店街指標の推移は下のグラフのとおりです。

A高山市の工業の動向





高山市の工業の動向を見ます。H19年に1,234億円の実績を残している製造品出荷額ですが、リーマンショック後の退潮ぶりがそれぞれ見て取れます。
高山市主要3業種
の推移
H19 H20 H21
出荷額(万円) 出荷額(万円) 出荷額(万円)
化学工業・プラ 3,937,618 31.9 3,709,065 32 4,170,291 39.3
食料品 2,372,696 19.2 2,410,964 20.8 2,240,479 21.2
家具・装備品 1,189,746 9.6 1,131,056 9.8 1,006,496 9.5
 う一点製薬会社の工場拡張の影響から、H21では高山市の製造品出荷額における割合は39.3%と大きな位置を占めるに至っています。その他の業種はいずれも現状維持又は退潮を示しています。市としても工場拡張に伴い水道増強工事等で対応してきました。こちらの方はこれからの成長業種として業績や雇用の面で期待されるところですが、多くの下請けや関連会社を地域に根付かせる業種ではない為、社会・経済状況の変動による影響も今後考えられるところです。
B高山市の観光の動向

 高山市の観光消費額及び入り込み数の推移です。H20で80,367,121 千円あった消費額はH2264,462,616 千円まで落ち込んでいます。観光客入込み数もH194345千をピークに、H22では381.2万人と低下しています。こちらもリーマンショック後の景気の後退から来る影響を受けています。しかしながら、昨今の観光の質の転換や地域間競争の激化からくる変化も大きな要因となっていると考えるべきです。


外国人観光客の流れは上のグラフのとおりです。(高山市観光統計H23
H18 H19 H20 H21 H22
北米 15,210 16,280 18,487 15,386 16,004
ヨーロッパ 18,160 24,260 37,440 45,217 52,521
アジア 64,960 81,280 101,812 72,189 100,687
中南米 3,630 2,600 2,554 3,561 3,619
オセアニア 5,080 7,830 10,841 10,562 13,733
アフリカ 180 50 46 1,088 436
合 計 107,220 132,300 171,180 148,003 187,000
3.11大震災の影響で、H23では大きく落ち込みが予想されていますが、欧州金融危機の影響は今後世界経済に大きなダメージを与えかねません。そうした中にあってはこれまでに大きく増加してきたアジア、ヨーロッパからの誘客に影響が出かねません。今まで以上のきめ細かな対応とともに、地域の風土や文化に根ざした観光の質の転換に努力せねばならないと考えます。
C高山市の農畜産業の動向

 高山市の農業では、ほうれん草・トマトを中心とした野菜生産と、畜産が大きな生産基盤です。しかしながら農家戸数の推移を見ると専業農家の割合は少なく、H22では全農家数
4,486 の内575戸が専業農家となっています。又全体では高齢化、過疎化から来る農家戸数の減少も目立ちます。
専業 一種兼業 二種兼業 自給農家 合計
H2 567 775 4,541 5,873
H7 384 788 2,929 1,342 5,453
H12 420 656 2,616 1,419 5,111
H17 410 574 2,123 1,623 4,730
H22 575 411 1,791 1,709 4,486
(高山市のあらましH23)



 飛騨牛銘柄で伸びてきた畜産関係です。特に肉用牛の飼育が大きな比重を占めますが、H20で肥育頭数が約900頭減少しています。高齢化による廃業や頭数よりも質への転換を図る経営判断が影響したといわれています。                      (高山市畜産課頭羽数調査H23
D高山市の林業の動向



(高山市のあらましH23

(高山市林務課資料H23)
千立米 人工林 天然林 総蓄積
 H1 4,778 6,912 11,690
H5 6,568 8,297 14,865
H10 7,948 8,924 16,872
H18 10,140 9,549 19,689
H19 10,416 9,663 20,079
H20 10,693 9,734 20,427
H21 10,885 9,639 20,524
H22 11,159 9,740 20,899
H32予測 13,890 10,240 24,130
 高山市の林業の状況です。H2で6,937戸あった林家数はH22で2,597戸まで減少しています。いわゆる過疎と高齢化がもたらした減少です。山林地積調査、間伐の推進が言われる所以です。しかし山の木は手入れすれば自ら育っていく資源です。資産価値を高める資源管理が求められます。また、岡山県真庭市や埼玉県秩父市に見られるような木質バイオマス発電や木質エタノール生産等のエネルギー生産の可能性を追求するなど、新たな視点からの林業政策の検討が求められます。
1−2.現状の把握(事業・予算)
(1)市の主な関係事業等のチェック
@産業振興に係る主な事業費 
 概算総事業費(23年度予算)
 商工課関係

科 目

H23当初予算

(内一般財源)

商工振興費・労政振興費

3,813,535 千円

943,604

(内預託金

2,661,028千円

観光課関連 

科 目

H23当初予算

内一般財源

観光振興費

411,956千円

128,572

観光施設

269,339千円

国際観光推進費

68,529千円

自然公園費

74,011千円

特別会計分

106,900千円

合 計

930,735千円

 農政部関連                      

科 目

H23当初予算

内一般財源

農務課

1,078,605千円

528,058

林務課
地積調査、エコ住宅分含む

423,085千円

畜産課

401,173千円

93,602

合 計

1,902,863 千円

 3部門総合計               6,647,133千円

観光関連予算の内訳

一般会計科目

予算額

入湯税充当額

観光振興費

411,956千円

観光課

174,700千円

国際観光都市推進費

68,529千円

戦略室

15,600千円

観光施設費

269,339千円

13,970千円

自然公園費地域政策課

74,011千円

38,035千円

合 計

823,835千円

204,270千円

特別会計科目

予算額

スキー場駐車場等観光施設事業

106,900千円

合 計

106,900千円


A産業振興に係る主な事業の評価
      事業名 H23年度
予算(千円)
担当課 2次評価
評価点 課題と指針 コメント
 (産業関連の107事業について、行政内部の事業評価シートにより担当課の評価と企画・財政の2次評価を上記の様に一覧表として調べたが、ここでは発表を省きます。)

 産業関連の107事業に66億4700万投入されています。しかしながら事業評価兼予算査定シートの2次評価では、多くの検討課題も述べられており、事業の効果や効率性さらに担当課の取組姿勢が問われているものもあります。
 こうした点からいえば産業全体をにらんだ戦略と計画行政を取り仕切ってコントロールする部門が必要です。
 特に日々刻々と変化する産業経済分野ではきわめて重要といえます。本来ならば企画管理部門が担当する分野でもありますが、経済分野に絞り込んでの戦略性と機動力が求められます。
B関係する条例・計画等
 ここでは、高山市における総合計画に準じた主な52の計画の内、産業関連主のを洗い出した。
 「高山市第7次総合計画後期計画」おける産業関連の記述の基づき、を洗い出した。後期計画における記述内容は以下の形式でなされているが、ここでは省略する。
◇商業
基本目標 (略)
現状と課題 (略)
施策の体系 (1)地域の特色を生かした魅力ある商業の振興を図る
@ 商店経営の充実
A にぎわいのある商業空間の形成と中心市街地の活性化
施策の概要 (略)
主要な計画 ・中心市街地活性化基本計画 H22〜26年度
・産業振興計画 H22〜26年度
産業関連の記述における主な計画は以下のとうりであった。
  ・産業振興計画
  ・農業振興地域整備計画
  ・農山村地域活性化計画
  ・農業経営基盤の強化の促進に関する基本的な構想
  ・鳥獣被害防止計画
  ・森林整備計画
  ・酪農、肉用牛生産近代化計画
  ・中心市街地活性化基本計画
    等、総合計画から洗い出した。
 総合計画の下位にあって産業経済分野に位置づけられる計画は以上のような体系です。補助金の受け皿として国の政策に沿って作られる計画も多くあります。
 計画そのものは行政が策定し議会へ報告を受ける形となり、一応の意見交換は出来るものの議会の立ち位置としては、予算・決算を通じてその政策が目的通りの効果を発揮したか、予算が適正に使われたか等をチェックする事になり、議会改革を通じて政策提言等で議会の意思を表明できる体制が整ったところです。
 いわゆる行政内部の検証と議会という立場での評価を重ねる中で、政策に磨きをかけていくことになります。もう一歩いえば制度としての市民参加も整える必要もあると考えます

2.調査
(1)市民意見の聴取
@分野別市民意見交換会
  委員会活動の中で2分野で分野別市民意見交換会を実施した。

  1)まちなみ保存会との意見交換
    () 文教経済委員会:観光と文化に関する報告書参照

    観光と伝統文化については、H24.4.21に東京大学副学長
    「西村幸夫」先生による議員研修会を実施。調査研究報告書を
    次年度へ引き継いだ。


  2)公設卸売市場関係者との意見交換
    () 卸売市場使用料の減免に関する意見交換
      並びに報告書参照

   公設卸売市場の問題点については別に調査報告をまとめ、
   H24.4.12に政策提言を行った。

(2)視察調査:平成23年度文教経済委員会視察調査報告参照:まとめ部分を以下に提示する

1.   視察の目的と調査内容について
 本年、文教経済委員会は年間調査目標を「産業振興基本条例制定後の地元企業等の振興策」と設定し、長引く景気低迷下での産業振興に関する問題を幅広く捉え、調査活動を活発に行う方針で臨んでいます。そうした中にあって、各種陳情・要望に対する対応調査や分野別意見交換会を実施してきたところですが、今年度の視察調査項目を
 @   観光と伝統文化に関する事項
 A   産業振興に係る条例及び計画のあり方
 の2点に絞って実施することとしました。視察先及び視察項目として
   奈良市 ・奈良市文化振興計画
         ・奈良市観光交流推進計画
   彦根市 ・彦根市歴史的風致維持交流計画
   高岡市 ・高岡市歴史文化基本構想
         ・高岡市産業振興ビジョン 
  を選定し、平成23824日、25日、26日に実施しました。視察に当たっては次の点に留意し、それぞれ担当者の事前調査内容を検討しあう中で、視察先の特徴等諸事情を理解した上で視察調査を実施しました。
 (留意事項)
  ・高山市にある条例、計画等との比較で相互の違いを調査検討するもの
    「彦根市歴史的風致維持交流計画」
    「高岡市歴史文化基本構想」
    「高岡市産業振興ビジョン」
  ・高山市には無い条例、計画等について調査検討するもの
    「奈良市文化振興計画」
     「奈良市観光交流推進計画」

2.視察先の主な特徴
 奈良市の二つの計画は高山市にはない計画であり、伝統文化を生かすまちづくりやまちなみ保存と観光といった面で、これから高山市でも見習いたい視点でした。
 彦根市歴史的風致維持向上計画と高岡市歴史文化基本構想については、高山市と比較検討させて頂く中で伝統文化と守るべき歴史的風致・まちなみ保存と生活環境の問題等で参考になりました。
 「高岡市産業振興ビジョン」については、非常に明確な将来都市像のもと5つの基本方針を打ち立て、その施策の方針や具体的施策に言及している点が、高山市の産業振興計画の対極にあると見てきました。
 その後、事前調査担当者による調査結果報告をもとに議員間で自由討議を行い、今回の視察の総括を行ったところです。以下に調査項目ごとの総括について報告します。
3.総括
(1)観光と伝統文化に関する事項
(略)文教経済委員会:観光と文化に関する報告書参照
(2)産業振興に係る条例及び計画のあり方  

【高山市産業振興基本条例、高山市産業進行計画と
      高岡市産業振興ビジョンの比較による検証】

 @高岡市の特徴
   ・高岡市は時代背景や現状での諸課題を把握した後に、今後の産業の
    活性化と持続的な発展を図る為に必要な取組みを、新産業の育成
    、地場産業の振興、企業立地誘致の促進、観光振興、農商工連
    携、産業支援環境体制の充実
などと、
わかりやすく明確に捉え、
    その上で明確な高岡市の将来像を示している。

   ・産業振興ビジョンの対象分野をはっきりと示し、農業分野について
    は6次産業
化の進展にも配慮して一部を加えている。
   ・あくまでももの作りを基軸として成長が見込まれる分野を対象
    としている。         

   ・東海北陸道の開通、北陸新幹線高岡駅開業などを契機とした、広域
    観光拠点化
を打ち出しているなどが基本部分からうかがえる。
   その他実行体制部分でも、評価検証体制を位置づけている。また、
   産業創造
プラットフォーム体制を敷くなど、新事業展開・新分野進
   出等への支援体制を
ワンストップで行える体制を取るなど、国、県の
   支援体制との連携をもしっか
り位置づけられている。もう一点ビジョ
   ン策定にあたっては、専門的知見の活用をはかるなど幅広い視
野での
   組み立てを行っている点などが高岡市のビジョンでは印象に残った。
 A考察
     ・高岡市では農商工連携関連のみを産業振興ビジョンでは取り入れ 
    ており(関連する計画としては高岡市農林水産業振興プランを位 
    置づけている)、高山市は産業振興計画に農業を全面的に取り入 
    れているが、国の制度に大きく左右される農業分野は、農商工連 
    携関連のみとするのが適当ではないか。

   ・高岡市では産業の位置づけを明確に分析している。人口15万〜 
    20万人の類似都市の中での製造品出荷額と卸・小売商品販売額 
    について、マトリックス分析を行い冷静に分析している。(ちな 
    みに商品販売額の方が多い商業都市としての姿と、第2次産業従 
    事者の多い工業都市としての構造を併せ持つ産業構造)その上で
    戦略的な将来構想を組み立てているが、高山市ははじめに「飛騨 
    高山ブランド強化による産業の振興」を第1命題として計画を組 
    み立てているため、高岡市のようにその産業構造の「強みと弱み 
     」を分析して、どう今後の環境変化に対応していくのかといった
    戦略に欠けている点が目立ってしまっている。

     ・国の成長戦略や県との連携による産業振興の指針という位置づけを
    取り入れて
いる高岡市と比べ、やはり経営戦略といった点で見劣り
    する。

     ・観光面でも、まず観光に特化した計画やビジョンの必要性を、奈良
    市において
強く感じてきたところであるが、高山市の計画における
    記述はそうした面にお
いて将来ビジョンを打ち出せずにいるのでは
    ないかと感じている

(3)高山市の取るべき方向性について
     国の新成長戦略(2010)においては、まず「グリーンイノベーション
    」、「ライフイノベーション」、「アジア戦略」、「観光・地域」
   を成長分野として捉え、これを支える基盤として「科学・技術・情報
   通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を進めるとしている
   。高山市にとって見れば、「何で稼ぎ」、「どう雇用を守っていくの
   か」の戦略が求められているといえ、産業振興に関する考え方もその
   基本姿勢を打ち出し、産業振興へのガイドラインを打ち立てることが
   強く求められているといえます。

     今後さらに調査研究を加え、産業振興に係る条例計画のあり方などを
   検証していきたい。

3.問題点等の整理

(1)高山市における人口構成並びに人口予測
 高山市もすでに人口減少化社会に突入しており、合併時に9万7千を数えた人口は、現在9万3千人台となっている。また、その高齢化率は27%に達している。特に人口分布からいえば旧高山地域における中心市街地の高齢化は35%と、支所地域の高齢化率29%を上回るなど、今後の就業構造や経済基盤の面から考えても一考を要する状況となっている。また、人口予測における生産年齢人口の低下や、その時点での生産年齢人口の構成比率を見てみると、2035年では人口は76,645人まで減少することが予測されており、特に生産年齢人口の減少は平成10年対比74%に減少。人口構成比では60%から54%まで低下する事が指摘されている。
 そうした動向を考えたとき、産業構造からいっても人的資源をどこに集中させて地域の経済を活性化するのかの選択も迫られることになると考える。
(2)地域の総生産並びに所得構造の変化
 岐阜県市町村民経済計算によると、高山市の総生産は349,101 百万円、総所得は230,639百万円となっている。それぞれH17年度比では、H20年度所得で96%、総生産で98%と減少しています。所得金額ベースでは約100億円、総生産では約788千万円の減少となっており、給与所得ベースでの減少は、見ていただいたとおり、団塊の世代の退職に伴う影響額は、H19年度以降の影響額はH20から現れてきますが、こちらの減少額も約100億円と出ている。今後その傾向はますます拡大すると考えられ、地域の経済のパイを減少させることとなる。中長期的に見ればそうした地域経済におけるマイナス面を、どのような産業構造で克服していくのかが問われることとなる。特に県下5圏域での総生産・所得構造を比較すると、飛騨圏域の数値は大きく引き離されている状況も確認できる。今一度高山市経済の足元を見直す必要がある。
(3)地域の就業構造と産業基盤

 類似都市との比較から見ても、高山市の就業構造は第3次産業が第2次産業より多く、その中でもサービス業を含め観光関連に従事される比率は高く、商業と観光に依存した構造となっている。しかし卸・小売りの販売額、観光での消費額、工業製品出荷額、農産物出荷額、建設業の動向などを見ると、現状停滞感が否めない状況となっている。

  こうした産業基盤の中で各種統計数値はいずれもH19年度以降大きな変化を見せ始めており、リーマンショック後の世界経済の動向も混沌を極めている。高山市においても経済構造・産業基盤等に大きな影響を受けており、なんで稼ぎどう雇用を守っていくのかの点で大きな転換点に立っていることがわかる。また高山市においてはこうした分野とは別に建設業の位置づけも忘れてはならない。別の項でふれることとするが将来にわたって今の就業構造を持続していけるのかが問われることになる。劇的な経済基盤の転換は難しく、地域の人的資源をどの産業に集中させていくのか、外からの移住者はどの世代を重点としてどんな業種で可能なのか、政策の向うべき方向性が問われることとなる。

(4)地域を取り巻く経済構造の変化

 経済のグローバル化の影響や人口減少化社会の到来など、日本を取り巻く社会経済環境の変化は、私たちの周りにも大きな影響を及ぼしています。特に成熟化社会を迎えた日本の経済環境にも変化が出ており、観光動向、流通構造、消費動向、地域の所得構造に大きな変化が出ている。

  又、我が国のデフレ構造からの脱却は難しく、長引く不況下で市民生活は苦しくなるばかりである。そうした中で追い打ちをかけるように円高による輸出産業への打撃は地方の経済基盤にまで影響を与えている。特に高山市における工業出荷額の変化に現れているように、汎用機会器具、生産用機械器具、電子部品等の業種においては、大きな打撃となって現れている。又、当市の大切な産業基盤である観光部門を見てみると、H20年度比で観光客入り込み数は430万人から380万人に、観光消費額は803億円から634億円まで減少している。

  又、商業統計から見ると、最盛期に約2900億円あった卸小売りを併せた商品販売額は、約2270億円にまで低下しており、商業統計がH19であることを考えればさらにその構造は変化していると見なければならない。特に小売り業界における大型店出店の影響は大きく。地域の売り場面積は増加している中にあって、その販売額や従業者数は減少するという構造にあり、大型店の出店が地域経済にマイナスの効果を果たしている姿が伺える。

(5)景気対策補正額とその効果
 リーマンショック以来世界規模での景気後退に対応するため、政府による緊急景気対策補正もあり、高山市もこれまでに約150億円規模の景気対策予算を投じてきた。こうした補正予算でのてこ入れで、これからの産業全体の底上げや成熟社会への対応、都市間競争に入った観光戦略など、高山市の経済全般をにらんだ活性化を果たして役所はリードしていけるのか疑問が残るところである。役所の予算500億円が、経済効果を上げる使い方を模索していかねばならないのではないか。



(6)高山市の投資的経費と建設業

高山市の投資的経費(千円)
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
14,569,108 8,661,589 9,635,057 10,749,294 10,352,485 7,800,018 8,984,303

高山市の投資的経費はこの通り。合併当初の財政推計では合併前後で200億円前後を使える(合併算定替えと合併特例債)環境にあるといわれたが、健全財政志向で約100億円台で推移した。H21H22と低下しているがH23でも当初予算は66.3億円、補正を入れても70億円台かなというところである。民間の建設需要は景気低迷から活発とは言えず、県の財政悪化による投資額の縮小や国の動向を考えれば業況は非常に苦しいところである。小中学校の耐震工事が一巡する中にあっては、従来のような公共事業の在り方では業界そのものが立ち行かなくなる懸念がある。地域の災害対策などを考慮すれば、憂慮すべき問題でもある。

しかしながら公共施設、建築物、道路、橋梁、上下水道等の耐用年数が過ぎた施設の更新については、隠れ債務問題ともいわれ計画的に着実に対応しなければならない公共投資の問題といえる。資産台帳を整え、公共施設の更新計画を示す中で、事業量の把握と投資額の確保を図るべき問題であると認識している。

(7)高山市産業振興計画が掲げる目標数値
高山市産業振興計画が掲げる目標数値
現状値 (平成20年) 目標値 (平成26年)
観光
観光客入り込み数 4,261,000人 5,000,000人
外国人観光客入り込み数
(宿泊客)
171,180人 200,000人
農業
農業販売額(畜産含む) 199億5,500万円 210億円
新規就農者の確保 17件 25件
担い手への農地集積面積 1,387ha 1,500ha
認定農業者数 570人 580人
鳥獣による農作物被害額 59,000千円 32,590千円
林業
民有林内の間伐面積 1,650ha 2,000ha
林業の担い手数 林業技術者 166
(内新規2)
林業技術者 190
(内新規5)
森林組合   1 森林組合   1
林業事業体 12 林業事業体 18
作業道開設延長 22,870m 34,300m
境界の明確化に伴う        森林施業面積面 1,101ha 1,430ha
生活環境保全林利用者 146,075人 175,000人
畜産
農業販売額(畜産) 83.6億円 90.0億円
飼料自給率 23.00% 32.00%
肉用牛飼養頭数(繁殖雌牛) 3,675頭 4,000頭
商業・工業・労働
製造品出荷額 1,300億円 1,600億円
企業誘致対策事業のよる     新規常雇用者数 107人 550人
商業統計商品販売 2,269億円 2,269億円
中心商店街店舗 366店 366店以上
中心市街地居住人口 16,800人 16,800人以上
有効求人倍率 0.62 1
目標指標は上記のとおり。世界的な景気動向からこのまま目標が達成される事は難しくなってきている。それとこうした経済分野の成長管理や経済分野全般の戦略といった面では、民間と意思の疎通が図られねばならないと考える。役所の計画だけではなくまず中長期のビジョンを共有することこそ肝要であり、将来構想を策定する中では大学の研究室、総合シンクタンクの活用など必要と考える。

4.解決の方向性

・「何で稼ぎ」、「どう雇用の場を創出していくのか」についての戦略が求められている中、産業振興に関する基本姿勢を描き、それを基にした新たな産業振興のガイドラインを打ち立てる必要がある。

・民間と行政は、産業経済分野の戦略等について中長期のビジョンを共有する必要がある。

・産業経済分野の成長管理や戦略策定については、民間と行政の意思疎通が図られねばならない。

・地域産業経済における中長期的な視点からの長所短所を正しく評価する中で、高山市の産業経済を発展させる戦略の方向性を打ち出す必要がある。

・生産年齢人口が減少する中、人的資源をどの産業に集中させて地域の経済を活性化させるか選択する必要がある。

・外からの移住者はどの世代を重点としてどんな業種で可能なのか、政策の向かうべき方向を定める必要がある。

・猛烈なスピードで複雑多様に変化する現代の経済活動を踏まえた将来構想や産業経済戦略を策定するためには、大学の研究室、総合シンクタンクの活用などの専門的な知見を活用する必要がある。

・高山市の産業経済モデルをつくって、投下されたお金(資本)がどう波及していくのかシミュレーションできるようにする必要がある。

 ・市役所は経済効果の上がる予算の使い方をもっと研究する必要がある。

・市の経済をけん引する観光とそのバックグラウンドとしての伝統産業・農林畜産業に投資を集中させる必要がある。

大型店の出店は、販売額、従業者数の拡大には結びつかず、零細商業者の転廃業を促進し、地域コミュニティの崩壊等社会的悪影響を及ぼす原因ともなっているため、その出店を抑制する必要がある。

・地域の就業構造からいっても、建設業の位置づけと投資的経費の確保は産業政策にとっても重要である。資産台帳を整え、公共施設の更新計画を示す中で事業量の把握と投資額の確保を図る必要がある。

・地方にも環境にやさしいエネルギー創出の取り組みが求められている中、本市の新たな産業の柱とすることを目標として、豊富な森林資源と近代化された製材技術を活用した木質バイオマス発電、木質エタノール生産等の取り組みを、林業振興とリンクさせて積極的に展開を図る必要がある。

5.政策提言の概要
(1)産業振興計画の見直し〜産業経済戦略中長期ビジョンの確立  現行の産業振興計画の見直しを行う中で、「何で稼ぎ」、「どう雇用の場を創出していくのか」を基本とした産業経済戦略の中長期ビジョンを策定し、民間と行政で共有する。
(2)産業経済戦略会議の設立〜戦略的産業経済政策の策定
大学やシンクタンク等外部有識者を多く登用した「産業経済戦略会議」を立ち上げ、市の産業経済政策のあり方等について継続的に検討・議論することにより、産業経済政策の方向を明示していく。
(3)産業経済部の設置〜産業経済政策の総合的管理
観光・商業とこれらを支える伝統産業・農林畜産業をはじめとして、工業、建設、新エネルギー関連産業など、様々な産業経済政策を総合的にコントロールするとともに複合的な産業経済政策群を形成できる部署を新設し、産業経済政策の総合的管理を推進する。
6.政策討論会での議論と結果

(1)論点  産業経済部の設置について
・商工観光部と農政部はそれぞれ良く機能している。新たに産業経済部を設け、商工観光部と農政部を統合・再編するのは反対だ。
・提言の目的は部の新設ではなく、産業経済政策は総合的にコントロールされるべきものであるということではないか。
・ご指摘の通りなので、「産業経済部」の表現は取りやめ、委員会で提言書中の関連部分の修文を検討する。
→ 委員会で「産業経済部門の企画・調整機能の強化」とすることに決定。

7.政策提言 H24.4.12以下の内容で文教経済委員会としての政策提言を市長に対し提出した。
産業政策の展開について
 「何で稼ぎ」、「どう雇用の場を創出していくのか」を明らかにし、この方針に基づいた戦略的な産業経済政策の展開を通じてまちの持続可能性を担保するために、以下の3点について対応を求める。

(1)産業振興計画の見直し〜産業経済戦略中長期ビジョンの確立
現行の産業振興計画の見直しを行う中で、「何で稼ぎ」、「どう雇用の場を創出していくのか」を基本とした産業経済戦略の中長期ビジョンを策定し、民間と行政で共有する。

(2)産業経済戦略会議の設立〜戦略的産業経済政策の形成
大学やシンクタンク等外部有識者を多く登用した「産業経済戦略会議」を立ち上げ、市の産業経済政策のあり方等について継続的に検討・議論することにより、産業経済政策の方向を明示していく。

(3)産業経済部門の企画・調整機能の強化〜産業経済政策の総合的管理
観光・商業とこれらを支える伝統産業・農林畜産業をはじめ、工業、建設、新エネルギー関連産業など、様々な産業経済政策を総合的にコントロールするとともに、複合的な産業経済政策群を形成できる体制を整え、産業経済政策の総合的管理を推進する。