文教産業委員会「白川郷学園視察調査報告」
文教経済委員会:中田清介
視察日:平成26年11月10日
視察目的:小中一貫教育とコミュニティスクール

川郷学園の概要

・児童生徒数(平成26年度)

小学校:96名 8クラス(特別支援2
   中学校:61名 4クラス(特別支援1

・小中統合と校舎の建設

 平瀬小学校と白川小学校の統合に至る経緯は、もともと平瀬小学校は複式の小規模校であったことと、白川小学校の児童数の減少により統合が図られた。
 そうした経緯から、まず小中一貫教育による「白川郷学園」として平成23年に発足した。発足に当たっては、白川中学校の敷地内に新たに小学校校舎を新築し、中学校校舎については大規模改修し、渡り廊下で両者を継ぐ構造とした。その後地域とのかかわりをより重視する見地から、平成25年に学校運営協議会制度に伴うコミュニティスクールとして位置付けられた。

「小中一貫教育」

文部科学相は本年63日の閣議後会見で、公立の「小中一貫校」を設置できる制度を導入する方向で検討に入ったことを明らかにしています。実現すれば、現行の義務教育の課程を、小学校6年、中学校3年の「63制」だけではなく、「54」「432」など地域の実情に応じて弾力的に編成することが可能になります。一部の自治体が特例的に導入している小中一貫校を新たな学校種として認め、制度化で普及拡大を狙うとみられます。

現行の学校教育法は、学校の種類として、幼稚園、小学校、中学校、高校、中等教育学校(中高一貫校)、特別支援学校、大学、高等専門学校を定めているが、新たに小中一貫校を「義務教育学校」(仮称)として加える方向で検討するといわれています。

小中一貫校については、現行では国の制度として位置付けられておらず、国は早ければ来年の通常国会への学校教育法改正案提出を目指すとされています。

「取り組みの経緯」 

・昭和51年度:研究開発学校制度の創設

  平成12年度広島県呉市取り組みを開始
・平成164月:

構造改革特別区域研究開発学校の創設

平成16年度東京都品川区取り組みを開始
   平成184月東京都三鷹市「にしみたか学園」
   (教育課程特例を用いない取組)

・平成204月:教育課程特例校制度の創設

   現在施設一体型の小中一貫校は100校といわれ、全体では
   960校以上に。

「学校校舎の設置状況

    基本的には同一敷地内での施設一体型と既存の校舎を利用した連携型がある。

・施設一体型校舎      ・施設分離型校舎

   ・施設隣接型校舎      ・施設一体型と施設分離型が併存   

   

白川郷学園小中一貫教育の取り組み

@  9年間の学びの連続性を大切にする教育

・共通の教育目標、共通の指導理念により発達段階に応じた指導。

   ・ただし小学校、中学校の教育課程はこれまで通り。 

A  教員の兼務辞令による小中の交流と連携

・小学校の先生が中学校へ、中学校の先生が小学校へ行き授業を行う。

・ただし双方が相手校の担任を行うことはできない。 

B  教科教室の活用

・中学校にはHRの他に教科教室が準備されています。 

 (国語科教室、英語科教室、社会科教室、数学家教室)

   ・理科室(中学校校舎)、音楽室(小学校校舎)、家庭科室・技術室(中学校校舎)

   ・小学校高学年と中学生は各教科教室へ移動しての授業。

     資料提示など教科独自の学習環境での学習。

   ・図書館は小学校校舎に設置して共用。村民図書館の位置づけで村民も利用。

C  小学校での教科担任制導入 

・中学校の教員も参加して小学校の専門性を有する教科を指導。

・小学校高学年の理科と社会は教科担任制。   

・小学校の国語、算数、外国語は担任が授業し、かつ中学校教科担任が補佐。

・音楽は小学3~中学3年まで中学の教科担任が担当 。

・中学の美術と技術は小学校の専門職員が担当。

D  きめ細やかな指導

・中学校の数学は数学専門の教科担任の他に、二人の教員が加わり3人での指導体制。
 習熟度別指導体制を実施。

・小学校高学年の算数、外国語は担任に加え中学校の教科担任が加わり授業。

E  白川村の一貫教育の3つの特色

一、どの子にも確かな学力をはぐくむ教育

   二、地域に根差した故郷学習を推進する学校

   三、英語学習を充実し国際理解力をはぐくむ学校

小学校英語授業

中学校教科別教室:数学

図書館は小・中・村民共用

小学校教諭が中学技術を担任

中学校 小学校
国語・社会・理科
数学・英語・技術
調理・被服室
音楽室・図工室
図書室・生活科室

中3 体育 美術 技術
中学校からは6人小学校からは3人
の教員が教員交流で教科を担任。
中2 数学 美術 技術
中1 数学 美術 技術
小6 社会 理科 外語 算数
小5 社会 理科 外語 音楽
小3・4 音楽

教科別教室の共用

教員交流による教科担任制

白川村学園

白川村の教育目標

 

心豊かでたくましく

ひとりだちする子

〜ふるさと白川郷に夢と誇りを〜

白川村学園

学校の教育目標

ひとりだち

自立

共生

貢献

自分で考え行動できる

仲間と関わり自己を高める

仲間のために働く

コミュニティスクールと白川郷学園

「コミュニティスクール」とは、学校運営協議会が設置された学校のことを言います。

学校運営協議会は、平成16年に改正された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づいて設置されます。この法律には次のようなことが定められています。

@ 教育委員会は、学校を指定して、学校の運営に関して協議する機関として、学校運営協議会を置くことができます。

A 学校運営協議会の委員は、保護者や地域の皆さんの中から、教育委員会が任命します。

B 指定された学校の校長は、教育課程の編成などについての学校運営の基本的な方針を作成し、学校運営協議会の承認を得なければなりません。

C 学校運営協議会は、学校の運営について、教育委員会や校長に対して、意見を述べることができます。

D 学校運営協議会は、学校の教職員の採用などについて、任命権を持つ教育委員会に意見を述べることができます。

 E 学校の運営に大きな問題が生じている場合には、教育委員会は指定を取り消さなければな  りません。

F学校の指定の手続きなど、学校運営協議会の運営に関して必要な事柄は、教育委員会が規則で定めます。

 平成17年に17校で始まったコミュニティスクールですが、平成26年では1919校にまで増加しています。

白川郷学園とコミュニティスクール並びに学校運営協議会

 平成25101日、白川郷学園を白川村教育委員会より学校運営協議会を設置する学校として指定されています。

 小中一貫校として発足したのが平成23年度ですから、その間の問題意識がコミュニティスクールへの指定へと発展したものといえます。

○小中一貫教育実践の中で見えてきた成果と課題

成果・「確かな学力の定着」について、一貫教育の推進は有効である。

・「ふるさと学習」「英語学習」を9年間一貫して取り組むことができる。

・一貫教育は、教員の資質向上、授業力向上の場として大変有効である。

課題・学校と地域の繋がりがやや薄くなったように感じる。

○地域の抱える課題

・これからの地域力低下が心配される。

こうしたことが学校と地域の改題として浮かび上がった段階で、

 ○学校は地域の力を取り入れ地域とともに子供を育てていきたい。

 ○地域は学校とのつながりを深め今以上に地域を活性化したい。

 とし、

 ○各地区の力を結集して一つの大きな力としていきたい

という思いが地域と学校で確認された。

そうした機運により

「学校運営協議会(コミュニティ・スクール)」立ち上げに向かった。

 その後の経過

  ・学校運営協議会設立準備委員会の立ち上げ。

    「どんな白川っ子になってほしいか」を熟議した。

夢・誇り・自信をもった自立した白川っ子

思いやりにあふれあいさつができる白川っ子

ふるさと白川郷を愛し村を大切にする白川っ子

  ・教職員、準備委員合同で「コミュニティ・スクール」について学ぶ会を開催した。

「地域とともにある学校づくり」という演題で

文部科学省初等中等教育局参事官:奈良 哲氏の講演による研修を実施。

    この研修を通じて

★地域の力や意見が加われば、学校(教職員)が変わる!

★学校が変われば、子どもたちが変わる!

★子どもたちが変われば、地域が変わる!

これらの教育の姿を実現してくれる仕組み(道具)がコミュニティ・スクール

ということを確認した。

  ・学校が地域連携するために必要なこと。

   地域と学校をつなげるためには何が必要か。

   その為の準備委員と学校職員との交流会などをつうじて必要な事項を煮詰めていった。

  ・そのうえで必要な会則や組織を整えた。

 

こうした経緯を経て設立された学校運営協議会ですが、まずは、学校に多くの地域の方が来られる環境づくりからはじめ、学校と家庭・地域が将来の担い手となる子供たちを「ともにはぐくむ」努力をされているところです。

学校運営協議会の組織

上図のように、学校運営協議会の活動を具現化するために二部会を設け活動しています。

「高山市における児童生徒数の現状と小中一貫教育並びにコミュニティスクール」

 高山市学校別児童生徒数及び学級数(平成26年度)
 小学校      黄色は支所地域

学校名

全児童数

(特別支援)

全学級数

(特別支援)

505

17

20

3

西

180

46

9

3

392

6

14

2

713

7

23

2

山王

546

10

20

2

江名子

267

5

13

2

新宮

455

9

17

2

三枝

150

8

8

2

岩滝

20

1

4

1

花里

306

7

15

3

丹生川

273

7

13

3

清見

145

4

8

2

荘川

63

2

8

2

138

7

8

2

久々野

181

5

9

2

朝日

81

0

6

0

国府

455

18

18

4

本郷

82

0

6

0

栃尾

65

1

7

1

 中学校

学校名

全生徒数

(特別支援)

全学級数

(特別支援)

日枝

600

12

20

3

松倉

521

14

18

3

中山

507

9

17

3

東山

394

15

15

3

丹生川

155

4

8

2

清見

73

0

3

0

荘川

40

0

3

0

87

3

5

2

久々野

105

3

6

2

朝日

53

0

3

0

国府

261

5

11

2

北陵

97

0

4

0

          
    高山市の現状と白川村の事例を比較してみます。

白川小

96

8

2

白川中

61

4

1

  高山市で白川郷学園より少ないか同程度の児童生徒数の学校

   中学校:荘川(40)、朝日(53)、清見(73)

小学校:岩滝(20人)、栃尾(65人)、荘川(63人)、朝日(81人)、

本郷(82人)。 

ここでは単純に児童生徒数から市内の学校と白川郷学園を比較してみました。

小学校では、市内で複式の授業を実施しているところは岩滝小のみで、児童数はH26年度で20
人です。栃尾小65人、荘川小63人、朝日小81、本郷小82人と続きます。

中学校では、荘川中26人、朝日中64人、清見中71人、宮中85人となります。

 小中連携で見ると

白川小

96

荘川小

63

朝日小

81

白川中

61

荘川中

40

朝日中

53

  という状況です。

 合併前後から小中学校については特に支所地域で統廃合が進み、現在のような配置となっています。旧上宝地域を除いて1地域1小学校、1中学校となっています。

 旧高山地区では4中学校区と10小学校区が残り、小学校の児童数の偏在とその解消が問題となっています。特に北小学校と西小学校、三枝小学校の児童数については、隣接する通学区域の問題も含めて何らかの対応をとらざるを得ないところまで来ているのではないでしょうか。

 また、旧高山地区では中学校区と連携する小学校区の問題もあります。学校間の連携ばかりでなく、社会教育や地域活動の面を含めて複雑に入り組んでいます。

 こうしたことを考えた時、支所地域、旧高山地区を含めて小中一貫教育やコミュニティスクールといった新しい仕組みや考え方で問題解決を図る必要があると考えます。

考 察」
 教産業委員会では先日1110日にお隣の白川村へ出かけ、小中一貫教育の「白川郷学園」を視察させていただきました。 また、この夏8月には京丹後市の学校再配置計画と小中一貫教育について調査してきました。京丹後市の事例は施設分離型の小中一貫教育でしたが、白川郷学園は施設統合型です。
 白川郷学園の場合は、コミュニティスクールとしての位置づけによる改革も伴い、学校運営協議会による様々な協力と基本方針等の協議で、地域と学校の結びつきを強めています。
 施設統合型という点では、小中教員の相互乗り入れ等により、小学校高学年からの教科別指導が実現しています。その意味では教科の系統性がアップしており一貫した指導体制が実現しています。また中学校ではホームルームの他に教科別教室が充実しており、生徒たちもいきいきとして授業に取り組んでいました。
 そうした意味では教員の相互乗り入れと教科別教室の活用で、大規模校に負けない教育環境を整えているといっても過言ではないと思います。また学習指導体制の面でも一貫教育の利点をどう生かせるのかの研究が推進されていると見えます。
 生徒の視点に立った教育の実現という意味で、また地域との連携を深める学校の使命といった点でうらやましい環境であると実感してきました。
 白川村の事例は、学校施設整備が先行しての改革といった面もあるし、小規模自治体の小規模校だから実現できるといった面があるのかもしれません。それでもこれからの人口減少化社会の中では、こういった取り組みの成果を波及させていくことが必要なのだと感じたところです。

 先にあげた荘川地域・朝日地域などは、白川郷学園の成功例を見れば地域との共同といった意味でも、小中一貫教育への統合と学校運営協議会の立ち上げを研究する必要があると考えます。

旧高山地区の問題については、学区の再編をもう一度考える時に来ていると考えます。中心市街地の空洞化が言われて久しいのですが、そうした中にあっても街の中心部に小学校を残すということは大切なことです。それを是正するには街の中から整えて周辺部へその考えを広げ、適正規模の学校を整えていくことも必要と考えます。

しかし今までにもそのような指摘があったにもかかわらず、一向にそのような改革は進まないままで推移しています。国の方針も63制にこだわらない義務教育学園といった考えが示されるようになりました。また学校運営協議会制度も認められるようになった現在では、これらの問題解決に新しい制度の導入も視野に入れ、対応を検討する時期に来ていると確信します。
 現場にある制約条件を解消して、プラスに転じる改革の視点が必要なことを改めて認識するとともに、白川郷学園が実現できている教育の取り組みが、高山市の教育の中でどう取り込めるのかの視点で今後の調査につなげていきたいと思います。