「高山市第八次総合計画」基本計画素案を発表した行政の対応の甘さを指摘する。
 先日725日高山市議会「総合計画に関する特別委員会」が開催され、行政から示されている「高山市第八次総合計画」基本計画素案に対し調査研究のための質疑を行いました。会議は午前930分から午後530分までの長時間を要し、議会側の指摘事項に対する行政側の答弁が的確でなく、議会側に非常に不満の残る結果となりました。
 議会は平成251225日に高山市総合計画条例を可決制定し、総合計画に関する根拠条例とするとともに、総合計画は基本計画と実施計画・財政計画の2層制とすることを定めています。その後、平成25年度に「総合計画に関する特別委員会を設置、平成25年度を主に調査研究期間とし平成26年度を審議審査機関とする方針を決定しました。
 それに伴い平成25年度は常任委員会を分科会とする体制で基礎調査と提言策定にあて、平成264高山市第八次総合計画に対する政策提言書を市長に対し提出しました。また、総合計画条例を制定した時点で「高山市議会の議決すべき事件を定める条例」の一部を改正し、第2条で「議会の議決すべき事件は、高山市総合計画における基本計画の策定、変更または廃止とする。」としたところです。
 今回の素案は、最初に総合計画の体系を示し、序章で計画策定の趣旨、計画の構成と趣旨を述べ、その後の基本計画編で第1章目指すまちの姿、第2章重点プロジェクト、第3章分野別計画を列挙しています。素案についてはこちらからご覧ください。

以下に25日の質疑応答を経たうえで、行政の素案に対する考え方についてその問題点を指摘しておきます。

1.    議決事項としたことへの認識の欠如
 これまでの体制と異なり、総合計画は行政が終始主導する行政計画から、議会が議決する自治体計画へと変わったと認識すべきといわれています。その為議会はそれにふさわしい総合計画の位置づけや計画手法の改革への流れを主導する一方の柱として行動することを求められているといえます。また、行政側にも議決を経なければ決定できない自治体計画という面を認識してその策定に当たらねばならないといえます。
 その為、平成25年度に総合計画に関する特別委員会を設定した時点で、議会側から行政へは次のような考えを伝えております。
 「平成25年度には議会からの政策提言を実施し、26年度の審議・審査期間中には行政は素案の提出に努め、議会からの意見具申等の機会を設け、お互いの意思疎通を密にして市民のためのより良い計画づくりへの道筋作りに励むということを。お互いキャッチボールを繰り返しながらよりよい計画作りに励む」という考えです。そしてそれをお互いに確認してきたところです。
 しかし、
25日の質疑応答を経て浮かび上がってきたことは、いまだ行政は従前の計画づくりの姿勢に終始しているということです。そのような点は、素案に対して疑問点や改善点を指摘する議員の質疑に対する答弁が、非常に硬直した姿勢に終始した点にあらわれていました。
 あくまで素案は提案した計画案なのであり、指摘事項に対しては柔軟に対応して改善に向け努力すべきです。議員はお願いしているわけではなく提案しているのです。
 議会は上程された段階で審議・審査を徹底して問題点があれば,可決ではなく継続審査を選択することのできます。高山市議会の改革ポイントの一つは「決定の前に審議審査を尽くす」ことです。
 こんなことはあまり言いたくはないのですが、計画策定への指針が行政内部で一本化されていないというか、議決事項としたことへの認識が足りないし、計画策定作業が硬直しているのではないか、総合的に見て計画全体がコントロールされていないと考えます。

2.    総合計画を2層制としたことへの認識の欠如
 次に総合計画を基本構想・基本計画・実施計画及び財政計画の3層制から、総合計画条例に定めた基本計画・実施計画及び財政計画の2層制としたことの意義が理解されていないと感じたことです。
 地域主権改革に伴う「義務付け枠づけ改革」により、基本構想が議決事項から外れたため、地方自治体の総合計画の位置づけは各自治体の自主的判断に委ねられ、高山市も「総合計画条例」で対応することを決定してきました。
 その際2層制で総合計画を策定すると定めたわけですが、その際肝心なことは基本計画の冒頭部分において、これまで基本構想で述べてきた政策の前提となる行財政の分析と向かうべき改善の具体策およびその方向を明示することが肝要であり、その中には行革の方向性や財政の健全化へのプログラムなどについても触れるべきであると考えます。いわば今後のあるべき姿を明示する記述が欠かせないという点です。
 当然今後の問題点の核心の部分は「人口減少化社会」にどう対応していくかであり、その観点からの政策の方向性を明示するべきであると考えます。
 素案の中で述べている時代の潮流についても、そうした潮流の中で高山市にあってはどこが課題なのかの記述を盛り込まなければ、本市の基本計画案たるを全うしないと考えます。そうした指摘があってこその基本理念であり、都市像の明示である考えます。
 この部分は書き改めない限り分野別計画との整合性も取れないと感じています。特に先ほど述べた行革大綱等の整合性をどうとれるのかという点も含めて、認識が甘すぎるのではないかと考えます。
 私は「創造的縮小」という言葉をかりて今後の高山市のあるべき姿を模索してきましたが、様々な点で縮小は図らなければならないが、社会生活の維持に欠かせない活力の維持には、まさにCreative Shrinkageの理念のもと、地域の持つ豊かさを再評価して政策を整えていくこととが肝要であり、人口減少化社会をきちんと受け止めていく計画行政が求められていると考えます。大風呂敷は広げたが実現不可能な計画であったり、未熟な計画案の希望的列挙では許されないのではないでしょうか。
 基本計画の冒頭部分に記述せねばならないことから逃げないことが肝要です!

3.    誰がコントロールしてどう組み立てるかの戦略の欠如
 もう一点誰がコントロールして計画案づくりに取り組んでいるのかの点で、非常に粗雑な計画作りでもあるとみてしまいます。
 分野別計画の記述と序章から1章、2章までの記述の整合性が取れるのか、第3章の分野別計画の記述に絞っても、計画行政たる全体のコントロールは一体だれが組み立てているのかの点で、非常に疑問を持っています。
 誰がどうコントロールして全体を整えていくのか、どんな分野で経済を引っ張っていくのか、なんで稼ぎどのようにして雇用を守っていくのかの点では、産業連関という点からみれば全くお粗末な素案の提示であるといえます。
 本当に計画行政について真剣に取り組んでいるのか、現状の認識についてどう分析しているのか、危機感の欠如というべきなのではないか。
 3年前、文教経済委員会で高山市の「産業振興計画」についてその目標値と現状の把握をしてみました。七次総後期計画と連動するその数値は、平成26年度を最終目標年度としていましたが、その目標値は到達できない点も多く、その際の目標値を八次総に持ち越しているものも見受けられます。
 現状についての基礎調査を徹底しそれを認識し、人口減少化社会の到来というフィルターをかけると予想される姿はどうなのか。それならば改善ポイントはどこにあるのか、目標値を現状よりも伸びる数値と設定するならば、どの点で可能なのかを具体的に明示するべきです。それでこその計画目標ということになります。農業分野などでは人口減少という点を加味した計画の修正はされていると捉えました。
 今回目立ったのは観光客入込数の500万人と観光消費額890億円の目標値です。入込数で105万人増、消費額で235億円の増です。地域の産業連関で観光消費額の波及効果は2.18倍と発表したのは平成24年です。それならば第3次産業や第2次産業、第1次産業たる農林畜産業への波及効果はそれなりにあると捉えるのが本来の姿であり、雇用における記述にしても関連してくると考えます。観光まちづくりというのは文化・商業政策と都市計画の連動による街の活力の維持向上であり、第1次産業から第2次産業、第3次産業にまでその波及効果をもたらすと政策提言したのは、文教産業委員会の八次総への提言です。
 産業経済分野の目標において整合性の取れない目標数値をそのまま提示するなど、まともに考えて産業・経済政策を牽引できるポジションはないのか、疑ってしまいます。

4.    政策と施策の方向性を統括し自治体経営の指針を示すのがトップとヘッドクォーターの仕事 
 今後の自治体経営の視点で大切なことは、「地域経済循環」を高めることであるといわれています。それには産業連関という視点でまちの姿をとらえ、地域資源の配分を適正に整えていかねばなりません。今後の人口減少化社会を考えた時にまちの持続可能性を基本において自治体経営というものをとらえていく。計画行政の必要性はそうしたことを指針として基本理念を整え、あるべき姿を明示していくことではないのでしょうか。

 思い付き行政ではなく計画行政といえる真の計画の在り方は、トップが示していく責任があります。少なくとも戦略をたてそれをコントロールしていくヘッドクォーターたる部署は企画し、管理していくべき部門のはずです。
 司令塔不在のままで、「計画のための計画を立てている」といった姿なのではないでしょうか。
 笛吹けど踊らずのスタッフとラインに問題があるのなら、真剣に「事業仕分け」にでも取り組んでみたらどうかと考えてしまいます。

5.議会が関与すべき基本計画と行政の裁量に任せる実施計画・財政計画
 総合計画条例は2層制で計画することを定めていますが、議会が議決する基本計画部分と、行政の裁量に任せる実施計画並びに財政計画とがあり、、今後の町づくりの指針たる政策の明示と背策の方向性については議会が責任を持って議決することとなっています。その為の議会の関与の方法についてはこれまで言及してきたところですが、実施計画並びに財政計画が示されない限り議会は核心に入っていけないと主張される方もいますが、政策や背策の在り方を述べる基本計画と、主にそれから派生する事務事業について述べていくのが実施計画並びに財政計画であり、基本計画の策定と同時に示されるのも理想といえますが、議会としてはそれがすべてではないということです。
 総合計画に付随する34の計画についても、これから順次発表されるとみていますが、最上位にランクされる計画としての総合計画の趣旨に沿った計画となっているのかなどについてチェックしていくことになりますが、そうした観点については節度を守
ってチェックしていくことになると考えます。

 今回指摘した部分のほかにも、今後行政の見解を質していかねばならない点はいくつかあります。今回の議会からの指摘に対して行政の対応をまって、順次意見を交換しあいたいと思います。
 もう少し意思の疎通を図り、今後もよりよい計画作りに議会と行政が努力していきたいものです。
                                                     H26.07・29