H24文教経済委員会行政視察報告書

     作成委員名:中田清介

記 載 項 目 内   容
1.委員会名 文教経済委員会
2.視察年月日 平成24年7月24日(火)
3.視察先 高知県県高知市ひろめ市場
.視察参加者

相手先の参加者名:ひろめ市場支配人 尾崎さん

倉田博之委員長、岩垣和彦副委員長、

若山加代子委員 中田清介委員 藤江久子委員

随行:藤白書記 川田秀文次長

5.調査項目 ・若者雇用の創出
6.視察項目 ・ひろめ市場の運営と中心市街地の賑わい創出並びに雇用の創出
7.検討課題

(1)若者定住(2)起業支援(3)ファンドの活用 

(4)中心市街地の賑わい創出

8.高山市の現状
と課題
・高山市産業活性化への課題については、昨年度文教経済委員会に於いて産業構造や就業構造を中心に検証したところである。
・基本的に人口減少化社会に向かう中で、高山市に於いては特に生産年齢人口が大きく減少する問題が浮かび上がっている。地域の産業構造や域内総生産に与える影響は大きく、いかに若年層の流出を食い止めると共に、他地域からの移住を大いに受け入れ持続ある成長へと繋げるかが課題となっている。
・そうした中にあっては、雇用の場の確保と起業支援による若年層の受け入れ体制を整備する必要に迫られている。行政には若者定住へ向けた諸施策の充実が求められるところである。
・また観光都市として第3次産業の構成率が高い点からいえば、創業資金の負担を軽減し中心市街地の活性化にも資するサービス業、小売業の起業を積極的に支援する必要もあると考える。
特に最近低下している中心市街地の商業機能と賑わいを活性化する方策が求められている。
・今、中心市街地に求められる要素は、休める場所と快適なトイレ、そして飲食機能であるといわれています。
・また夜の賑わいスポットの整備は、大切な視点でもあるといわれます。安心して楽しめる屋台街は今回視察した「ひろめ市場」の成功からも伺えます。
・高山市に欠けている地元の市民に受け入れられ、観光客の皆さんにも受け入れられる賑わいスポット創出の可能性を探ってみたいと思います。
9.視察地の状況

平成浪漫商店街ひろめ市場について(視察時の研修及び資料から)

基本コンセプト)

―民間による柔軟な運営で地域のための居場所づくりー

・高知市の中心市街地の活性化と中心部の遊休地の有効活用が課題

・人が集まり、都心部で夜でも安心できる「場」の形成を目的としている

[施設概要]

 ・平成10年10月、高知市中心部通称「ひろめ屋敷」跡に開設

   地域の食文化、地場産業の発信基地として開業した。

 ・敷地面積4,056u 建築延床面積5,192u(内ひろめ市場3,061u)

   1階:ひろめ市場(店舗部を賃貸9 よさこい広場(イベント広場)

   2階、屋上:駐車場 220台収容(24時間営業)

 ・店舗数 当初63店舗 H2212現在60店舗

   4坪が基本小間割 6坪、8坪、それ以上もあり。

 ・来客数

   平日:約3,0006,000人(地元主体)

   土日休日:約10,00015,000以上

   年間200万人以上

 ・当初60のブースに150件の申し込みがあった。

   約一年半で店舗の入れ替え等は落ち着いた

   店舗の定着率は常に80%以上。

   内装に過大な投資をする必要なし

 ・運営会社:有限会社ひろめカンパニー(平成17年土地建物取得)

年間約3億円(店舗からの賃貸収入約2億円 駐車場約1億円

[設立の経緯・背景]

 ・当該地は藩政時代の家老深尾弘人蕃顕(ひろめ・しげあき)の屋敷跡

 ・当初ミサワホームが1,300坪の土地を約50億円で取得していた。

 ・その後バブル後の景気後退から民間都市開発機構に譲渡。

 ・1998年2月

   帯屋町2丁目商店街振興組合が、駐車場予定地を仮設店舗へ移設の

   立体駐車場とする構想を提案。地元企業「大旺建設株式会社」が賛同  

   して、民都機構より定期借地権(5年)によるひろめ市場建設を決定。

 ・199810月竣工・オープン

   有限会社ひろめカンパニー発足

   地域を対象とした地道なマーケティングで安定化へ

 ・2003年定期租借権を更新 以後一年ごとの更新

 ・2005年 土地・建物を取得

   坪100万円 約13〜4億円が必要
   徳島県の銀行との間で融資が成立まず土地を取得、建設会社の破綻により、次ぎ
    に建物を約2億円で建物も取得することとなった。

   総額15億円以上を25年返済
   現在は何とか運営会社として3億円余の売り上げを上げており、返済を続けな
   がら営業を続けている。
 2003年4月姫路市のダイエー跡地にこれをモデルにした「姫路ひろめ市場」がオ
  ープンし、本家から移った支配人(岩目一郎氏)が運営に携わっていたが、集客
  が急速に落ち込んだことにより運営会社が破綻し、200410月に閉店している。
 
  山口でも請われて出店したが失敗。
姫路市80万人商圏、高知市は34万人商
  圏。食と酒に対する文化の違い、店舗面積が課題であった、相席を好まない等県
  民性によるところと、売り場設定で小径の先のワクワク感がなかった等が失敗の

  理由とのこと。

 2012年5月 高松いろは市場オープン(約40店でスタート)
  岩目一郎氏が企画。ひろめ市場の名称は使わず、若者に商売のイロハと教えると
   言う意味を込めて
高松いろは市場と命名した。

高知ひろめ市場 http://www.hirome.co.jp/
高松いろは市場 http://www.irohaichiba.com/
岩目一郎ドットコム http://www.iwame-ichiro.com/

[今後の展望]
 ・市場周辺では移転の決まっている小学校跡地への県立図書館建設予定
 ・高知城近くの約
1,000坪の土地には資料館が建設予定。
 ・帯屋町旧ダイエー跡地には14階建ての店舗併設マンション計画
 ・中心部に誘客施設が集中する予定。

   ひろめ市場は集客施設、駐車場機能として期待されている。
 ・施設は老朽化してきている。再投資には約4,000万円が必要。

 

[活動のポイント]

 ・定期借地権を利用した身の丈にあった開発により事業性を確保
   ○地元建設業者も率先して事業採算性を重視。仕上げを簡素化し建設費を圧縮。
    コストパフォーマンスを上げている。

   ○定期借地権を利用した事業性の確保と、地元に根付いた施設運営、経営方針で
    定着。土地取得資金については金融機関から「プロジェクトファイナンス」
    での融資を獲得できた。融資の条件は事業に専念する環境を求められた。
    徳島県の金融機関であった

 立地を活かした施設を地元企業が率先して整備、地域の活性化を実現。
   ○商店街、観光資源としての高知城に隣接し、周辺はオフィス街・官庁街・学校
    等が集積する立地条件から、需要が安定して見込めると共に
周辺商店街の活
    性化を実現できる。

   ○夜でも安全な場所を商店街に提供できることで、地域からの信頼を得て地
    域との共存をはかれる。
    ○地元住民に評判。地元放送局の取り上げ、県内外の観光利用も増えて周辺
    への波及効果が出ている。

 ・地元密着のマーケティングにより地域の需要を創出する

ひろめ市場は地元商店出身者:初代ひろめカンパニー支配人岩目一郎の発
想により高知の食文化の発信を実現した。

○ひろめ市場コンセプト

高知の新しい観光スポットとして、高知の衣食住文化を「ひろめる」

高知の人情・人となりを「ひろめる」

高知の基礎知識・芸術・文化を「ひろめる」

 

小規模店を誘導してテナント参入を容易にすると共に多様性を確保 
地元密着のマーケティングで小中高大学生、地元サラリーマン等地元
 需要が高い。平日の8割は地元客。

若い経営者が多い:40代が約半分 
60ブースで2/3が飲食店 
集客力が高いためひろめ市場での経営にこだわる経営者が多い

    ○市場を代表する店・個性的な店が育ってきた

     明神丸(魚介類、)珍味堂(土佐のお総菜)さんは市場を代表する店。 

     やいろ亭吉照(鰹たたきにこだわる個性的な店)

     こうした店はブログなどで口コミの宣伝が効いている。

  「明神丸」 明神水産:ひろめ市場以外に3店舗経営

 「鰹漁の漁師が新鮮な鰹を提供」
  2年ごとの設備投資で客を引きつけている。周辺店はコバンザメ商法で共
  存共栄。名物メニュー「鰹の塩たたき」などあり、小学生からお年寄りま
  で行列する繁盛店

    「日曜市」に隣接しお互いの相乗効果がある。

追手筋の片側駐車帯を解放して行われる路上市。300年の歴史があり、
約600店の露店が出る。しかし近年高齢化が進んでいる。
500円の商品券 ギフト用

500円のクーポン券発行 8%の手数料がエージェントに入るように
 なっている。 旅行代理店用に販売している。

 周辺ビジネスホテルの企画として宿泊料金に含め販売。

 ビジネス客に好評 夕食は一杯をかねてひろめ市場へ

 新たな集客の手段として期待

雇用の場としてのひろめ市場 

 250人〜300人の雇用の場となっている

ひろめ市場全体の売り上げ:13億円〜14億円/年

    周辺商店街等との共存共栄

 当初は醒めた目で見られていた。積極的に周辺と協調する中で認知されてい
 った。イベントの共催等で商店街の一員として認知されてきた。

 ・民間ならではの柔軟な経営と効率化の実践

   ○有限会社ひろめカンパニー

テナントの斡旋交渉並びに決定、施設維持管理、食器のレンタルサービス、施
設全体の広報宣伝を実施。

   ○小規模施設、低層建築とすることで固定費を縮小 事業を安定化

   ○駐車場併設・運営 経営を安定化

   小規模店舗(4坪)商店街並みの賃貸料で設定したテナントで契約

   ○飲食の食器はレンタル方式で共同利用

   有料で配達、回収、洗浄、再配達を行う食器のセンター方式

   店舗での経費軽減(バックヤード設置食器の購入・保管等)

常時回収に回る食器レンタル方式


 ・民間による規制の緩い管理で柔軟な経営を実践

   「チャレンジ出店:3ヶ月」

   季節にあわせたイベント・継続的なイベントの実践

     テナント会の協力を得てひろめ市場全体で取り組んでいる

 ・ひろめ市場の構成
   
2つの大きな広場:お城下広場、自由広場

    ○ユニークな名前の横町・小路など

     龍馬通り、いごっそう横町、乙女小路、はいから横町、 

 ・よさこい広場

    ひろめ市場入り口にあるイベント広場:約100坪



当日ひろめ市場の尾崎さんから店内施設の説明を受けた後、市場外の喫茶店に移り説明を受けました。設立の経緯から現在の経営状況など包み隠すところなく約一時間半にわたって丁寧な説明を受けました。

隣接地は高知の台所といわれる大橋通り商店街、アーケードのある帯屋町商店街。追手筋の日曜市など賑わいポイントが集中する地区です。

 夕食時と重なった市場内は、親子連れ、サラリーマン、県外客とみられる出張族など多様な客筋で賑わっていました。

 広報活動も活発で、インターネットは勿論、数種類のパンフレットを準備すると共に、観光課やコンベンション協会などの活動にも積極的に働きかけています。

 時代の趨勢の中で、当初建設に関わった大旺建設さんも倒産し、運営会社は建物を買い取ることとなりましたが、そうした中で親会社は酒の卸会社となった様です。尾崎支配人もそちらからの出向とのことでした。

10考察 ・今回 高知市の「ひろめ市場」を視察することが出来ました。
 アイデアと行動で成功した活性化事業。古今東西で大成功した活性化事業。民間により成功した活性化事例として、中心市街地における地元住民のための居場所づくりの成功例 
などの讃辞が送られていることでもお解りいただける様に、街の商店街の理事長の奮闘物語とも言える活性化事業です。当時の帯屋町2丁目商店街振興組合理事長、高知ひろめ市場の発案者で創業者そして初代総支配人の岩目一郎氏のエネルギッシュな活動と行動力があって初めてひろめ市場が出来たと言えます。

 氏は現在高松の「いろは市場」を立ち上げ活動中です。氏のHP岩目一郎ドットコムひろめ市場誕生秘話が掲載されています。バブル期を通じて大きな変化にさらされた地方の商店街は、規制緩和の中で次第に衰退化への道を進まざるを得なかったのですが、身の丈にあった事業計画、地元密着のマーケティング、小規模店舗展開による多様性、駐車場運営と組み合わせた事業の安定性など、緻密な計画に裏打ちされて成功した事業でもあるといえます。
 現在は隣接する商店街等とも連携して、多くのイベントにも進んで参加し、その集客力から地域のパワーセンターとしての役目を果たしています。そんな岩目一郎氏が語る誕生秘話の中で、氏が指摘されている中の2点を紹介します。
ひろめ市場の店舗構成に際して
 後は市場内にどのようなレイアウトで店舗配置をするか?各店から要望を聞くと「もめる元」私が独断で決定!しかも店舗を沢山並べるので無く、お客が滞在出来るイス・テーブルのスペース(客席400席)を多く取ることにしたのです。実は商店街でお客様アンケートで街に足らない物を調べた結果、
@トイレ
A休憩場所
B食事場所が欲しい!
と多くの意見があり、今回の計画にお客が求める3つのスペースを大きく取り入れたのです」(まさにこれが成功につながったのです)

ひろめ市場オープン前の水害に際して
 高知市を突然襲った集中豪雨は予想をはるかに超した被害状況でした。商店街中央に山と積まれたゴミは近くの公園に集められその量の多さに驚くばかり、また時間が経過するにつれ強烈な悪臭が町全体を覆う日が何日か続きました。
私は理事長の役職でしたので、公園に隣接している店舗より「早くゴミを何とかしろ!」と朝から夜まで呼びつけられ、叱られる事が仕事になっていたのです。地元の市会議員に何度も連絡し清掃車の出動を依頼しても、被害エリアが高知市全域とあってこちらは後回し!そこで、商店街がイベントなどを手伝ってくれる個人事業所にダンプとスタッフを要請したのです。(もちろん有料)
ただダンプが2台と運転スタッフ2名だけ、仕方がないので私と当社の社員2名の3名でゴミの山に挑戦したのです。きつい・くさい・つらい、その中で約2日間朝から夜まで戦いました。(商店街の人は誰も手伝う事は無かったのです)
この出来事から商店街の人たちは『いざ!』となっても動く事が出来ない。助け合う・協力し合う事が出来ない街の人に、果して商店街を外敵(大型店・情報流通社会)と戦い抜けるのだろうか?多いに疑問に感じた事でした。


 最初の指摘は「商店街に今求められている物は何か」をアンケートから導きだした点。自分たちの思いこみではなく、足らざる所を補う姿勢として大切な視点です。2点目の指摘は、自ら活動して問題解決に向かう商店街の姿勢・意欲の欠如を厳しく指摘しています。

こんな所にも現状打破の気概と行動力の必要性がにじみ出ていると言えます。

高山市の現状を見てみます。

 ・高齢化が進み中心商店街の求心力が低下している。
・商店街においても格差が広がり、空き店舗を埋められなくなっているところが出てきている。
・買い周り品、最寄り品共に地元の需要を満たせる力が失われ、観光に頼るあまり土産品や飲食店・喫茶店などへの転換が目立ってきた。
・営業時間が短くなり、夜間はゴーストタウンの如くなっている。

・夜の賑わいはなくなり、観光都市としての魅力も欠如している。

・いきおい地元住民の居場所はなくなってきている。

・イベントの展開も各種団体が観光という立場で組み立てる物が多く感じられる。

  等々です。

 ではどうしたらいいのかが問われるところです。

 ・行政は民間の経済活動が活発化するための側面支援を強化する。

   ○若年層の起業へ、借りやすい融資制度とともにインキュベート施設を充実展開する。

   ○起業への各種相談業務をワンストップで受けられる体制を整備する。

   ○駐車場経営と一体化したまちづくり会社を立ち上げる。

   ○官民の連携による戦略性ある活性化策について、行政は一歩も二歩も踏みだし、民間では及び腰になるリスク分担を受け持つ事も視野に入れる。

   

 ・民間の側には問題がないか。

   ○自助努力の結果が活性化に結びつくという積極性が不可欠。

   ○地域への貢献を自分たちの活動の中に位置づける必要性を感じる。

   ○身の丈にあった事業展開で、再投資への意欲を持続する。

   ○官の力を十分活用する。しかし頼り切ってはいけない。

   ○街に必要な物は休憩するところ、快適なトイレ、食事をするところといわれる。高山市の公衆トイレは行政の力で大変整備されてきた。また街角スポット整備などもすすみ休憩場所もあるが、こちらはベンチなども含めまだ一工夫いるのではないか。食事をするところは観光地として多い。しかし地元客の居場所が少なくなっているのも確か。ひろめ市場的な開発は大いに望まれる。

   ○経営者の高齢化への対応が必要。積極的な経営者の入れ替えに「商店街まちづくり憲章」を制定し、安心して賃貸が出来る環境を整える。

   ○商店街には新陳代謝はつきもの。若者など新しい経営者を積極的に受け入れる環境作りを推進する。小規模・初期投資を低減出来る出店環境を生み出す。

   ○季節イベントの展開など地元密着の活動を展開し持続する。

 等々考えられるところです。ハードに頼らず身の丈にあった活動から始める。空き店舗が増える中にあっては、店舗部分は街の資源として捉え新しい経営者を迎え入れる体制を整えることも、今以上に必要となってきます。起業環境を整えることは雇用の場を増やすことにも繋がります。中心市街地の小売り商業を考えると、新陳代謝を促す発想も必要ではないかと考えるところです