平成13年度厚生委員会行政視察
一般廃棄物の溶融処理と広域行政                
レポート:中田清介
岩手県沿岸南部・大船渡地区一般廃棄物広域処理 の仕組み。
近年問題となってきたダイオキシン対策や産業廃棄物の処理にあたるため、岩手県は、県内6圏域での広域処理を推進しています。一般廃棄物処理については、大船渡地区は左図の様に、2市3町での広域処理を実施しています。
 まず、大船渡市・住田町・三陸町による「大船渡地区環境衛生組合」が協同で一般廃棄物処理にあたっており、釜石市と大槌町は別の一部事務組合を立ち上げ、それぞれ釜石市の「ガス化溶融炉」を機軸としてのゴミ処理にあたっています。

特徴は釜石市の「ガス化高温溶融炉」と、大船渡市の「一般廃棄物積込中継施設」です。どちらも日本で最初の先駆的施設整備です。
釜石市のガス化溶融炉
釜石市清掃工場と溶融スラグメタル見本 釜石市清掃工場      施設内容
敷地面積 約15,000u
建築面積 約 2,300u
処理方式 ガス化・高温溶融一体型
処理能力 100d/24h(50t/24h×2基)
稼働開始 昭和54年9月
基幹改良 H8年・H11.12年度実施
設計施工 新日本製鐵株式会社
処理対象物 資源ゴミを覗く可燃ゴミ・不燃ゴミ・粗大ゴミ・フロ
排ガス環境対策 煤塵量 0.05g/Nm 以下
ダイオキシン濃度 1ng−TEQ/Nm 以下
その他は大気汚染防止法に準拠
溶融物利用 溶融物(スラグ・メタル)は全量を資源として再利用
  メタル 建設機械のカウンターウェイト(重り)
  スラグ アスファルト骨材として使用
上図のように、釜石市の溶融炉は可燃ゴミ(生ゴミ・プラスチック等の不燃ゴミ)と、大船渡地区からの中継ゴミ、地区の粗大ゴミ、及びフロンガスをガス化・高温溶融方式により、安定的に処理しています。特徴はといえば
@多用なゴミを一括処理できます 資源ゴミ以外を一括溶融します。
Aゴミを資源化・再利用できます 1700度〜1800度の高温で溶融するため、ゴミが高品質で無害なスラグとメタルに生まれ変わります。 
スラグはアスファルト骨材メタルは建築機械用カウンターウエイト として再資源化します。
B環境対策も万全です
◆ガス化・高温溶融炉に投入する石灰石が、熱分解ガス中の有害成分と中和反応し有害ガスの発生を押さえます。
◆可燃性の熱分解ガスは、後段の燃焼室で完全燃焼します。燃焼室では、ダイオキシン類の発生を押さえる充分な燃焼制御を行います。
叉、排ガスは濾過式集塵器により、ガス中の煤塵を濾過すると共に、HCI及びSO を一定値以下まで除去します。
 昭和54年からの操業実績があり、新日鐵の高炉技術転用の実証炉としては、第1号  の施設です。当時建設に際しては、既存の焼却施設の建設費の4倍強の経費見積もりに 対して、種々反対意見があったようですが、現在では、平成12年に全国で建設された ゴミ処分施設の約7割が溶融炉であることから見ても、その先進性が高く評価されてい ます。地域住民にとって、安全安心な溶融方式は、埋め立て処分しなければならない焼却灰の量が約1/6に減少し、埋め立て処分場の延命策としてもりっぱに機能してい ます。
大船渡地区環境衛生組合・一般廃棄物積込中継施設
既存の焼却施設を中継施設として転用 施設概要
名称 大船渡地区クリーンセンター
竣工 平成12年・国内第1号機
処理能力 40t/5h
所在地 大船渡市猪川町字藤沢口54-1
設備方式
受入供給設備 ピットアンドクレーン
圧縮設備 圧縮梱包方式
集塵脱臭方式 濾過式集塵及び活性炭吸着方式
給水設備 上水及び河川水利用
排水処理設備 貯留搬出方式(ごみピット)
触媒ばっ気方式(床・機械・洗車排水)
圧縮梱包方式(ラウンドベーリング)
スエーデン・パラプレス社製圧縮梱包機
C圧縮成型されごみはポリエチレンフィルムで密閉梱包されます。約600kg Dベイリングされたごみは専用車で釜石市へ搬送されます。 E釜石市では破袋機を使い、ごみピットに投入されます。
ラウンドベーリング方式の特徴 ポリエチレンフィルムで密閉梱包するため汚水・悪臭もれがない。
長期保管が可能 (溶融炉の保守点検時等にも対応が可能)
大船渡地区環境衛生組合・一般廃棄物最終処分場
施設概要
所在地 岩手県気仙郡住田町世田米字大平
施設面積 61,721u
埋立面積 6,800u
埋立容量 58,000u
埋立対象物 焼却残さ・不燃残さ
埋立方式 準好気性埋立構造
竣工  平成8年8月
事業費 1、025、645千円
広域処理における相互補完
  大船渡地区の可燃ごみ・粗大ごみなどは、釜石市の溶融炉へ持ち込まれますが、その溶融残渣については、処分量を案分して引き取ることになっています。
 釜石市はお隣の大槌町と一部事務組合を組織しており、大槌町の焼却施設の焼却灰を、 溶融炉に投入して、その減容量を引き受けています。現在釜石市の埋め立て処分場は満 杯ですが、釜石市・大槌町の溶融残差を大槌町に引き受けて貰うことで、相互補完を行 っています。
人口減・過疎化と広域処理
  大船渡地区は三陸沿岸に位置し、過疎化が進行しています。また、最盛期9万人に達 した釜石市も、新日鐵の高炉運転停止以来、現在の人口は47.000人台と人口減少 が続いています。昭和54年可動の溶融炉も、日量100トンの連続運転が可能ですが、 ここに来て、その処理量に広域でのこの地区のごみ処理を引き受けられるだけの余裕が でてきています。広域処理するための条件は、既存施設の活用と最低限の施設改良で整 う好条件だったといえます。広域処理に当たり大船渡市の焼却施設を、中継積込施設へ と改良することで、可能にしました。叉、住田町の埋立処分場も、溶融処理から来る埋 め立て量の減少から、延命が可能となっています
溶融方式と焼却方式の比較:釜石市の平成11年度実績より
溶融方式
ごみ100トン
焼却方式
ごみ100トン
可燃ごみ
94t
不燃残渣
6t
可燃ごみ
94t
不燃残渣
6t
溶融炉 焼却炉 比重0.3〜0.5
 6t/0.5=12m
5% 4%  14%
スラグ
メタル
15t
集塵灰
4t
焼却灰
13t
(比重2)
7.5m 
(比重1)
 4m
(比重1)
13m 
有効利用
スラグ10.5t
メタル 4.5t
埋立
4m
埋立 25m
3市の比較数値
  高山市 増減率 大船渡市 増減率 釜石市 増減率
面積(km
人口
人口増加率(%)
世帯数
65歳以上(%)
歳出(億円)
財政力指数
公債費負担率(%)
農業粗生産額
工業出荷額
小売店数
小売販売額(億円)
公共下水道普及率
ゴミ排出量人/日
事業所数(民間)
従業者数(民間)
課税対象所得(億)
139.57
65,874
1.0
23,400
16.7
270
0.72
13.5
78.4
724
1379
1154
76.9
1181g/日
5,579
35,610
1,028




2.8
▲2.5



 7.6
▲1.9
▲5.2


▲2.0
▲2.8
 6.0
186.05
36,832
▲1.1
12,030
17.9
140
0.52
15.8
15.5
934
725
462
10.4
780g/日
2,454
17,063
423




4.0
27.6



▲11.5
▲3.2
▲4.9


▲4.4
▲7.1
▲0.1
441.29
47,302
▲3.8
18,106
21.4
202
0.47
14.0
6.9
895
796
456
40.6
1171g/日
2,765
19,951
509




4.7
1.1



▲2.6
▲4.6
▲5.8


▲8.5
▲5.8
▲1.1
大船渡地区概況     H13.3.31現在
面積(km 世帯数 人口
大船渡市
住田町
三陸町
186.06
334.83
137.13
12,221
2,223
2,458
36,780
7,423
8,343
合 計 658.02 16,902 52,546
視察地域の特徴と広域処理についての考察
 高山市と比較した場合、まず目に付くのは産業構造の変化に伴う推移が、大きく両市の経済に影響を与えている点です。大船渡市は工業出荷額の約45%を水産を含めた食料品が占めています。叉、近くで産出する石灰岩を利用したセメント・窯業が35%と抜きん出ています。他方釜石市は、新日鐵の高炉運転停止以来、大きな影響が経済面で出ています。新日鐵が火力発電による売電事業に乗り出していますが、従来からの鉄鋼関係・機械関係で工業出荷額の56%を占めています。
 我が国の産業構造の変化は、水産物の輸入量の増加や窯業の国際競争力低下、国際競争力の維持のための高炉の集約等をもたらし、相次いでこの地区の産業の活力を低下させて来ています。民間事業所及び従業者数の低下や、工業出荷額の低下・小売店舗数及び小売り販売額の低下率は、高山と比較してみると大きな数値となっています。
 そうしたことは当然地域の人口増加率や課税対象所得の伸びも鈍らせ、自治体の財政力を弱らせています。財政力指数も低く公債費負担比率もぎりぎりです。住民一人当たりの歳出額も高山市に比べ高い水準であり、効率的な行財政への転換が課題です。
 広い地域に、比較的高齢化が進んだ自治体が多い点は、私達の住む飛騨地域と似ています。広域行政による事業の集約化や、市町村合併による効率的な自治体運営が求められている点は、これも叉飛騨地方と似ております。当該地域では、大船渡市・住田町の合併が遡上に登っています。
 平成12年度から始まった、大船渡地区の「一般廃棄物積込中継施設」の可動は、広域でのごみ処理に対する、望ましい姿を提示してくれています。
昭和54年から稼働している釜石市の「ガス化高温溶融炉」を機軸として、それぞれの自治体が補完しあいながら、地域の自然環境を守り、安全で効率的なごみ処理を実現させています。その裏には、厳しくなる一方のダイオキシン類の基準達成のためには、高額な施設整備が要求され、財政基盤の弱い自治体では手に負えなくなってきていることがあります。こうしたことは、介護保険の問題と共に市町村合併への条件課題の一つとされています。今回視察した圧縮梱包方式による中継施設の建設方式は、誠に時宜を得たものであり、釜石市の人口減少に伴う、処理余力があったことも幸いし、一気に実現したといえます。 飛騨圏域を考えた場合、一般廃棄物・産業廃棄物を含め、域内処理の考えが打ち出されてきています。市町村が担う一般廃棄物処理を考えた場合、益田・吉城・大野・高山と地区毎に施設整備が進められることも考えられますが、広い地域での効率的なごみ処理に対処するには、今回視察した様な中継搬送方式も大いに参考になると思います。
 大船渡市でいわれたことですが、当地は水産都市の特徴なのか、ごみの中の水分量が約50%と高く、各家庭での水切り処理の徹底が望まれるとのことでしたが、ごみの減量は生ゴミの水切り徹底からということが、改めて認識させられました。
          
遠野市・健康福祉の里
遠野市は保健・医療・福祉の連携による高齢者の在宅支援システムを充実させています。
「CATVを使った健康管理システム」
平成12年4月から開局した、遠野市のCATV回線を使った在宅での健康管理や在宅確認が実施されています。
@高齢健常者宅の「健やかメイト」 自宅端末:血圧・脈拍・心電図等の測定値を送る市健康福祉の里:管理サーバーにデータを蓄積医療検診データ等と共に、健康管理や介護データとして活用
Aトイレセンサー 一人暮らし高齢者ドア開閉関知 
遠野市の在宅介護支援センター事業
 (目的
在宅要援護高齢者等(概ね65歳以上の要援護及び要支援になるおそれのある  高齢者)家族に対し、在宅介護等の総合相談と個別ニーズに対応した各種保険、福祉  サービスの提供の連絡調整をすることにより、地域福祉の向上を図る。 
      (在宅要援護高齢者等の自立に向けた生活支援
  (実績 @相談事業 電話相談 1350件
訪問相談 1854件
来所相談 882件
その他相談 10件
福祉用具展示・紹介 375件
実態把握 450件
A地域ケア会議開催状況 14回 ケース検討700件
Bサービス提供状況 介護認定者 
介護保険利用者数 
在宅サービス提供者数                 
740人
652人
628人
3400回利用
生き甲斐通所サービス 614件
配食サービス  87件
外出支援サービス 112件
寝具乾燥サービス 7件
軽度生活援助サービス 15件
設置状況 基幹型在宅介護支援センター   福祉の里
地域型在宅介護支援センター    福祉の里等5箇所
遠野市の介護予防・生活支援事業
1.介護予防・生き甲斐活動支援事業
  @介護予防事業      高齢者の食生活改善・生活改善等の老人保健事業
  A生き甲斐活動支援事業  デイサービス施設や公民館を通じた趣味活動の提供
2.高齢者生活支援事業  
  @配食サービス      利用料400円/1食 週2回
  A外出支援      保健・福祉機関送迎  利用料250円/2時間月2回程度
  B寝具乾燥サービス  水洗い乾燥消毒    利用料1500円/1回 年2回
  C軽度生活支援    買い物等の援助を通じた高齢者自立生活の継続
                        利用料200円/1回  週2回
3.老人扶助事業     供託生活困難者の養護老人ホーム入所による生活支援
4.寝たきり老人等紙おむつ支給   年2回
5.在宅寝たきり老人訪問診療    年2回
6.高齢者慶祝事業
7.家族介護支援事業
  @家族介護教室         各町年2回
  A家族介護者交流事業   (元気回復事業)年1回
  B家族介護者ヘルパー事業   家族がホームヘルパー受講した場合に受講料の一部を支給
8.老人保健福祉事業
  @老人日常生活用具給付事業 電気調理器・火災報知器・自動消火器・緊急通報装置
  A生活管理指導短期入所宿泊事業  養護老人ホーム入所による生活指導
遠野健康福祉の里
介護保険導入後も、遠野市はきめ細かな在宅介護支援事業を展開しています。
遠野市は合併により3.6万人の人口を擁していましたが、現在は28,148万人まで減少しています。将来は約2.6万人規模で安定するといわれています。高齢化率は現在27%台で推移していますが、5年後には30%に達するといわれています。     遠野市は660平方キロの広大な面積を要し、昔から農畜林業基幹産業の農村地帯です。柳田国男の「遠野物語」で知られる、伝説・民話の里としても有名で、当地の曲屋は馬を大切にした当地の代表的な農家建築です。叉、遠野市は介護保険導入前から、高齢者福祉の先進都市として、数々の事業を先駆的に実施してきました。
介護保険導入後は、介護保険適用外の在宅支援事業を手厚く準備され、その中核施設として「遠野健康福祉の里」が建設されています。
敷地内には、中央診療所・在宅介護支援センター「薬研堀」も併設され、市の社会福祉課・保健福祉課が中央の建物にオープンスペースで入所しています。
 1箇所に保健・医療・福祉の機能を張り付けることによって、各種診療・検診データの一括管理も可能となり、きめ細かな遠野市の在宅支援サービス事業を可能にしています。

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