平成18年度総務委員会行政視察報告 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
岡山県赤磐市:民間活力を利用した地域振興「叶ヤ坂天然ライスの事例」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2006.07.12中田清介 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【赤磐市誕生と赤坂町】
赤磐市は平成17年3月7日、赤磐郡内の山陽町、赤坂町、熊山町、及び吉井町が合併して誕生しました。赤磐市は、豊かな自然や文化遺産に恵まれる一方で、交通網の発達などで都市的な環境整備も進んでいます。合併後の総人口は45,646人(3月7日現在)、総面積209.43平方kmです。「人“いきいき”まち“きらり”」をキャッチフレーズに、活力と個性あふれる、新たなまちづくりを目指します。
【赤坂地域の紹介】
岡山県の南東部、赤磐市の中央に位置する。地域内には高塚古墳のほか、約150カ所の古墳があり、須恵器が出土するなど、古くから生活が営まれていた。地域内には5つの寺院と、30の神社が立地している。現在の赤坂地域は昭和28年に鳥取上村、軽部村、笹岡村、昭和31年に布都美村の一部が合併して誕生した。
●農業
平成13年生産農業所得統計によれば、赤坂地域の農業産出額は8.9億円であり、4地域全体の19.5%を占める。主要な農産物は、水稲、ぶどう、なすなどである。
●工業
平成14年工業統計によれば、赤坂地域の製造品出荷額等は199.8億円であり、4地域全体の33.0%を占める。主要な事業所としては、地元農産品(米、ぶどう)を原料とする「(株)赤坂天然ライス」「サッポロワイン(株)岡山ワイナリー」などがある。
●商業
平成14年商業統計によれば、赤坂地域の小売業販売額は38.6億円であり、4地域全体の10.2%を占める。人口一人当たりの小売販売額は73.6万円である。
●地勢その他
山林面積62%、田40ha、畑50ha、の農村地帯
兼業農家がほとんどであり、従事者の65%は高齢者である。
旧赤坂町での地域活性化への取り組み
「赤坂21プラン」の策定
21世紀へ向かってのまちおこしの計画を策定し、2大事業に絞って取り組むこととし
た。 1.大和ハウス工業の工場誘致
60億円の用地買収、敷地造成を地域内の山林50haで実施した。
人口の1割に当たる約500名の雇用を確保できた。
2.「赤坂天然ライス」の設立
製造業・工場誘致による産業立地においては地域経済に与えるインパクトは少ないこ
とから、地域経済循環にプラス要因となる農業の活性化策として、米の炊飯事業を取 り上げ、「赤坂天然ライス」を設立して事業化することとした。 旧赤坂町の事例は、域内調達・域外販売・域内雇用等の地域循環構造を把握した地域活性化事例として、マスコミ等でも取り上げられた事例です。
それではこの事業について次の4点から見てみたいと思います。
@総合商社はまちおこしのプロセスにどう関わったか
A事業設立から現在までの3セク会社としての動向
B地域経済循環分析の考え方
C叶ヤ坂天然ライス:事業継続への課題
D高山市における地域振興:地域経済循環の考えを取り入れることは可能か
1.総合商社はまちおこしのプロセスにどう関わったか
2.事業設立から現在までの3セク会社としての動向
『赤磐市地域食材供給施設について(赤坂天然ライス)』
1.事業の目的
平成5年ガットウルグウァイラウンドでの農業合意に米の輸入自由化が決議されその結果として国内では米の生産調整の強化は勿論、米の価格低下など農業を取り巻く環境は
一層厳しくなることは明白であり、そうなれば農業生産意欲の減退による遊休農地の増大等農業に大きな打撃が予想されることから、わが国としての緊急の解決策が全国的な行政課題であった。そのような状況の中で、市町村合併前の赤坂町としては、町の基幹作物である米作の振興を除いては考えられないという検討結果に基づき岡山県のブランド米である朝日米を推進すべきとの要望をふまえ、安定的な需要の場を検討した結果、米に付加価値をつける炊飯製品にすべきとの結論を得、その計画は国のウルグウァイ・ラウンド緊急対策事業として認定され、国庫補助を受けることとなった。
このため、市町村合併前の赤坂町では、営農意欲豊かな農業者の育成を通じ、地域農業の活性化を図るため、地元で栽培された朝日米やその他の農産物を原料に加工する炊飯施設を県下で最初に整備し、「米を売る時代からごはんを売る時代へ」をキャッチフレーズに地元米の6次産業化を目指して事業を行ったものである。
2.事業概要
(1)事業名 地域農業基盤確立農業構造改善事業
(2)事業主体 赤 坂 町
(3)事業費(補助金) 676,834千円(328,417千円)
(4)事業実施期間
平成6年度〜平成7年度〈着工:平成7年3月30日・竣工:平成7年10月7日)
(5)設置場所 赤磐市東軽部
(6)施設の概要
○敷地面積 6,197u(有効面積3,766u)
○延床面積1,407.73u(1階 1,037.67u 2階 370.06u)
○主要な設備
3.施設の運営管理
国への事業計画の中で、炊飯事業等の専門家を含む第三セクター(株式会社赤坂天然ライ ス)を設立し、施設の管理運営を委託することとした。ただし、運営上の委託料は支払わ
ないこととしている. (1)管理運営主体:〈株)赤坂天然ライス(第3セクター)
設 立:平成7年3月22日
設立当初資本金:70,000千円(1,400株)
内訳 赤坂町 714株(51.0%)
芙蓉物産梶@ 546株(39.0%)
三井物産梶@ 140株(10.0%)
平成12年8月15日 500株増資により資本金95,000千円とする
内訳 赤坂町 954株(50.2%)
葛竏ヌ家 546株(28.7%)、
三井物産梶@ 140株(7.4%)
岡山県経済連 190株(10.0%)
樺国銀行 70株(3.7%)
(2)経営主体の移譲
平成15年9月末までは、難波赤坂町長が当会社の社長を務め経営を行っていたが、地方自
治体の再編(市町村合併)、市場の販売環境の激化等に伴い経営の効率化及び経営の合理 化等を進めるべく農産物取り扱いの専門衰である全国農業協同組合連合会へ株の譲渡を行 い(67%1,274株)経営の移譲を行った. ●移譲に伴う基本的事項 ・会社の経営については全農が全責任を負う.
・地元産米、地元農産物の使用及び地元雇用を基本に会社経営を行う.
・市有財産(建物、設備等)の管理は委託業務の方法で行い、基幹均機械準備等の修繕
は、会社において対応するが、市が設置する審査会において必要と認められた場合は 、赤坂天然ライス基金から委託料として会社に支払う. 経営主体の移譲に伴い、会社の構成は以下のとおりである.(平成18年7月現在)
○役 員:取締役会長 武久 源男 (JA瀬戸内組合長)
代表取締役社長 多胡 準 (JA全農岡山県本部)
代表取締役専務 芦田 元 (岡山パールライス梶j
取締役 荒嶋 龍一 (赤磐市長〉
取締役 難波 勉 〈元赤坂町長)
取締役 岡 毅 (岡山パールライス且謦役)
〃 小宮山 潤 (JA全農岡山県本部副本部長)
監査役 岩本 浩 (JAあかいわ組合長)
〃 小林 豊 (JA全農岡山県本部副本部長〉
○従.業 員:社員14名,パート等 58名 計 72名(平成18年3月31日現在)
(3)主な加工品目
舎利、寿司用舎利玉、ちらし寿司、稲荷寿司、巻き寿司、おにぎり、おこわ、各種弁当
(4)平成17年度の米使用料 約358,000kg(約5,966俵)JAあかいわ赤坂支店の米取扱量の40.2%
米の品種:朝日米、吉備の華、ヒメノモチ
(5)主な販売先
岡山県内量販店:天満屋グループ、マルナカ 等
県外量販店:フジ、フレスタ、マックスバリュー
(6)売上高の推移
4.赤坂天然ライス基金
赤坂天然ライスは、農業振興施策として地域産米を有利に販売すると共に、地元雇用の新たな創出による所得向上を図るということを政策決定し、国の補助事業で建設したものであるため、施設は行政目的を持った公共用財産である.
地方財政法第8条により「地方公共団体の財産は、所有者の責任において常に良好な状態に管理しておかなければならない」とされてレさることから、建物及び機械設備の修繕に要する財源を確保するため、平成8年から13年にかけて叶ヤ坂天琴ライスから受領した寄付金や配当金を原資に基金を積んだもので、現在115,00・0千円の赤坂天然ライス基金を保有している. 5.事業効果 ○朝日米等地域産米の消費が大幅に拡大した.
○新規雇用が創出され、地域経済の発展に大きく貢献した.
○国から高い評価の下に事業採択され農林水産大臣、自治大臣、構造
改善局長等から表彰され、全国各地から視察が相次ぎ知名度が向上 した. @米の使用量及び阪売主
赤坂の米生産量約24,000俵
使用量は11年間で4年分を加工 販売量は7年間で12年分を県外へ販売
8,700俵/年 43,000俵/年
A従業員給料の支払額
従業員の約80%を市内雇用している
B年度別法人町民税 単位:千円
約2,200/年 赤磐市説明資料より
3.地域経済循環分析の考え方
旧赤坂町が総合商社のシンクタンクを使って、まちおこしのプランニングに活用したのが地域経済循環の考え方です。
この考え方について識者は次のように述べています。
”赤坂町では1997年からシンクタンクの協力を得て経済循環構造を調査し、町版の産業連関表とも言うべき「町内・町際取引表」を作成した。
これによって、製造業は域外への出荷で資金獲得に責献しているものの、中間投入の大半が町外からの調達であり、町内資源を活用して製品を作る製造業者がほとんどいないことが明らかとなった。さらに、町内の製造業従業者のうち町民が少なく、従業員給与に占める町内への分配が15%にすぎないことも判明。誘致した工場の多くは域内の資金循環が希薄な「地域外調達・地域外販売」で、地域経済や財政への効果が少ない構造であることがわかった。
一方で農業生産額は小さいものの、農業生産物の約86%が町外へ移出されていた。また町内での購入・分配率は76%と主要産業の中で最も高く、「地域内調達・地域外販売」で、地域綻済への波及効果は製造業に比べて高いことがわかった。
同時に、町内で余剰となっているはずの農産品まで他地域から晴入していたことも判明した。
このような分析の結果、赤坂町では、地域の基盤産業たる農業、特に米に着目し、再生を図った。単純に米を売るのではなぐ、付加価値を高めるため、製造と流通のプロセスを付け加えた。域外に出荷されていた地元産米を、町内需要以外すペて町が農協から購入し、それを原材料として地元の工場でおにぎりや弁当などに加工して販売したのである。
従業員は地元農家の主婦を中心に雇用した。 地域の基盤産業である農業を軸に地域循環構造の確立に取り組んだ効果は、赤町で米加工工場の創業後五年間にわたって税収が増加したのに対して、同時期の県内他町村の税収が横ばいだったことに表れている。
地域循環構造を把握するポイントは
@域内市場で地域雇用に貢献している産業の識別
A域外を市場として成立し地域経済に貢献している産業の識別
B付加価値の域内外に於ける分配の識別
C消費の域内外への流出入程度の識別
D域内への再投資(資金の循環)の識別
−などである。
地域経済の循環構造を高めるというコンセプトは、できるだけ地域からの流出(漏れ)を小さくし域内波及効果を高めることが目的だが、それは何でも循環すればいいという意味ではない。地域で充足できるものや余っているものまで移入しない、移出できる競争力を堅持する、といったことである。
地域碇済循環に関しては、江戸時代の経済に倣って「地域内自給自足型経済を志向するもの」と、誤解される恐れがある。たとえば、できるだけ地元産品を地元の商店から購入し、域外から調達しない、というようにである。確かにこれによって所得の流出は防げるが、やがては高コスト構造になり、地域居住者の効用はかえって低下することになる。
そして、こういった域内の経済互助関係が競争力を低下させ、地域経済基盤を弱めてきたことは、商店街を見るまでもなく、枚挙にいとまがない。ましてや、江戸時代の行動範囲とインターネットを操れる今日の行動範囲は比較にならず、地域としては、いいもの(付加価値の高い需要のあるもの)をいかに域外に売りだし、不得意なものや地域で供給できないものを移入するといった機能分担が重要になる。地域再生を現実のものとするには、地域の産業振興策を地域自らが再評価し、有効な政策を実施することが不可欠である。そのためには、まず地域経済を読み解く手段として、循環構造の把握とその枠組みづくりが必要となってくる。”
日経掲載:岡山大学教授 中村良平氏による「地域経済循環把握を・振興策検討に必要」
.7.22経済教室記事より抜粋 4.叶ヤ坂天然ライス:事業継続への課題
これまで事業設立の経緯、事業概要、バックボーンとなる考え方を見て頂きました。
会社設立が平成7年、平成12年に増資、平成15年には経営移譲に踏切り現在にいたっています。設立後2回の財務のテコ入れが、時代の変化の中に於かれた会社を取り巻く環境変化と、経営の転換点・事業継続への問題点を表しているともいえると思います。
赤坂町の経済循環からいえば、事業開始3年目には下記の如く、地域に雇用と経済効果を生み出しました。
平成6年前後といえば、ウルグアイラウンド関連の農林省補助を利用した事業が、全国で立ち上げられた時代です。農業振興対策ということで、なんにでも使える便利な補助金として多くの箱物建設や温泉施設等が作られた時代でもあります。
そうした時代に、地域経済循環を重視して、地元農産物の柱である米に着目し、時代を先取りした事業展開は大いに地域振興に役立つ事業であったといえます。
商社のネットワークを使った販路の開拓と販売数量の確保は、地方の三セク会社の営業力だけでは達成しがたい事業量の確保であったといえます。
販路の確保は安定した生産量の確保に繋がり、地域雇用の安定、高齢化した兼業農家の生産意欲の向上、地域住民の生き甲斐向上、税収UPと経済波及効果を生み出し、まさしく地域経済循環による地域振興を実現したといえます。
赤坂天然ライスは、米としての朝日米の販売と、炊飯事業を事業の柱としてきました。その為、風船構造のビニールハウス「ライスドーム」の導入により、朝日米の二期作に取り組むなど、旧赤坂町内の米生産量確保にも動き、40俵/日、3000俵/月の確保を達成し、2期目には米の販売、炊飯事業の両輪で、14億円の売り上げを達成しています。 こうしたことは、準備段階からの計画、事業化、販売計画等のマーケテイングに、総合商社のノウハウを取り入れた結果ともいえるのではないでしょうか。
平成12年の増資は、明らかに順調に推移した売り上げから、会社の信用度をアップし更なる飛躍へ向けた組織強化の目的があったものと思います。しかしながら、平成15年の経営移譲には、合併を控えた組織の委譲といった面も伺えますが、販売環境の激化に伴う経営テコ入れの面も伺えます。
深刻化する平成不況の中にあって、順調に見えた炊飯事業にも行き詰まるところがあったと言われます。朝日米のブランド力で、一時は1個あたりのおにぎりの単価が100円といわれる中にあっても、130円でも引く手あまただった時代から、消費者の目はより価格志向にシビアにシフトしており、加えてスーパー量販店においても利益確保の為の自社生産への切り替え等、営業面で激しい競争にさらされる状況に追い込まれています。
平成15年経営移譲後は、米の販売は中止せざるを得ず、炊飯事業だけでの事業継続となっていますが、平成16年に落ち込んだ売り上げ高は、ようやく経営移譲前の水準に近づきつつあるとのことです。
いずれにしても営業力の向上で、売り上げ高を確保する事が第一であり、伝えられる中では、月々の資金繰りが苦しいとも言われています。期待した全農の営業面でのテコ入れは今ひとつの状況では、自前の営業力のテコ入れは必須条件と思われます。
順調に見えた第3セクター事業ですが、常に前進を続ける中で環境変化に対応しなければならない民間企業との競争の中で生き抜くには、やはり役所からの自立が必要なのではないでしょうか。
赤坂天然ライス基金の項で述べられているように、地域振興策として政策決定した事業に伴う施設は行政財産の位置づけであり、今後もその施設は設備の維持管理や更新には、行政がテコ入れして行かねばならない宿命にあります。地域雇用、域内経済循環の面から政策決定したことですから仕方ありませんが、一面では事業経営に伴う償却資産を持たない事業を存続させることでもあり、そうした中で税金を投入しての施設整備の面でも、民間企業に対する不公平性も内包することになります。
そうした意味から言えば、一般的に一定期間経過後の3セク会社の位置づけをどうするかは、今後の課題でもあります。3セクといえども会社ですから、営業努力は必要ですし経営のリスクは受け持たねばなりません。出来るだけ自立を促し、公の出資比率は一定限度に減らす必要もあるのではないでしょうか。
地域振興の為の施設投資は行政が受け持つが、経営は民間に徹し切る姿勢が今後重要になってくると思います。赤坂天然ライスの場合も、早く一本立ちする為には、早く生え抜きの経営役員を育てることだと感じました。企業の社会的責任を果たす為にも経営的自立が望まれるのではないでしょうか。
今回事業仕分けについて岡山市の取り組みを調査しましたが、そうした観点から見ても事業設立の経緯から、経営的には黒字化が難しい過疎地の3セク会社の位置づけは、今後の議論となるのではないでしょうか。
5.高山市における地域振興
:地域経済循環の考えを取り入れることは可能か
旧赤坂町の事例で活用された地域経済循環の視点ですが、平成16年7月に経済産業省により発表された「地域経済分析の枠組み 高山都市圏分」では、様々な分析を加えた結果次のような仮説を立てています。
◎「地域に於ける産業振興策の重点及び現状・評価」
以上のような地域経済の実態を踏まえつつ、各地域において活用可能な地域資源を見極めた上で、域外市場産業と域内市場産業の両面において、重点事項を特定し、地域における産業振興策を評価・再構築し、各地域の経済活性化、生活水準の維持・向上のための取組が行われることが期待される。
今後の産業振興の基本的考え方(仮説)
以上のような地域経済の実態を踏まえつつ、各地域において活用可能な地域資源を見極めた上で、域外市場産業と域内市場産業の両面において、重点事項を特定し、地域における産業振興策を評価・再構築し、各地域の経済活性化、生活水準の維持・向上のための取組が行われることが期待される。
仮 説
@農林水産業は、就業者と生産額がともに減少しているため、今後、新しい農産品のブランド化を推進する必要がある。また、全国的に認知されている、飛騨家具製造と木材・木製品等の関連産業との連携強化を図る。
A主要製品の内、食料品製造業、家具・装備品製造業、電気機械器具製造業は、域内調達率が高く再投資も行われている。今後は、新たな製造業への投資促進を図ることが必要。
B商業・サービス業は移出超であり、消費の域外流出も見られない。その主な要因としては、観光産業によるところが大きいことから、今後、観光産業の維持と拡大が重要。
以上のような分析がなされていますが、@ABの指摘事項については、充分うなずける内容と考えます。
@については農林畜産業に於ける後継者不足の問題、ほうれん草・トマト・に続く第3品目の問題、飛騨牛畜産ブランドの確立による慢性的な頭数不足対策、林業振興と家具製造の連携強化等現実対応が迫られている問題の指摘がなされています。
Aについては、域内調達率の高い地域製造業の他に、新たな製造業への投資促進が指摘されており、域外からの工場誘致、新創業やUIJターン、SOHOオフィスでの新規移住等による定住促進等に対応が迫られている高山市の課題であるといえます。
Bについては、観光都市としての維持拡大という点で、重点施策といえます。
この様に見てきましたが、合併後の新高山市の課題の一つは、支所地域の地域振興をどうするのか、特に過疎が進む地域での振興策をどう組み立てていくのかの視点が不可欠です。そうしたことを考えるとき、山林面積か市域の92.5%を占める高山市にとって、林業振興が欠かせぬ課題であることは否定できません。
その意味では Aで指摘されている「全国的に認知されている、飛騨家具製造と木材・木製品等の関連産業との連携強化を図る」必要性は高いといえます。
近年木材価格の低迷から、手入れの行き届かない山林が増え、間伐の推進等森林の保全
対策がいわれて久しいわけですが、森林の多面的機能がいわれる今日、林業振興策を支所地域の地域振興の柱の一つとして位置づけていかねばならないのではないでしょうか。
旧赤坂町の事例でも指摘されていましたが、販売ルートの確立と製品化のプロセスを地域に貼り付けることにより、安定した事業運営を確立する事が、高齢化が進む中でも育林に対する事業意欲を育て、地域の雇用や生き甲斐を産み出す事になります。
林業振興は難しい問題ですが、和歌山県や四国・九州地方の林業県では、人材育成や産業振興策として様々な施策を取り入れているのが現状です。
高山市においては、新たに設立した森林組合の森林・木材生産構造改革事業による杉の間伐材の加工工場や、家具製造において新たな需要が見込まれるの杉材の圧縮加工など、これまでお荷物とされてきた杉の人工林の活用にも新たな視点で、産業振興の芽が出てきたといえます。
こうした点を踏まえ林業振興に結びつけるには、どうしても行政が関わる振興策が必要であり、従来の森林保全の助成策に加えて、国有林を活用させて頂く自然公園整備や、国立公園と連動したツアーガイド等の新たな産業興しへの支援策も必要で有り、その目出しは出来ていると考えます。そうした面も付け加えながら、地場の産業をテコ入れする木材と木材2次製品の販路拡大と利活用に対する助成策や、その情報発信に対する行政の支援策も欠かせぬ課題といえます。
特に杉材の活用による戸建て建築の推奨や、公共施設建設に於ける利用推進、家具製造への利活用などは大いに施策の中に取り入れていかねばならない要素ではないでしょうか。
ブランド化が進んだ高山市の農林畜産業の中で、唯一林業がお荷物扱いされる現状ですが、家具生産や木材2次加工に於ける連携強化の施策が充実しないことには林業振興は成り立ちません。地域の林業者の多くは支所地域の農業者でもあります。そうした人たちが将来にわたって安心して暮らせる土壌づくりが必要であり、その為の施策の充実が望まれます。
国有林野を管理する森林監督署の姿勢も変化しています。国有林野の解放は新たな森林資源の活用をも可能にしています。こうした中では森林を活用した教育に活用できる面も有しており、大自然を活用した観光振興にも役立っています。そして何よりも森林を守ることは防災面で大きな役割を果たしていますし、豊かな水の恵みを人々の生活に与える重要な要素です。
特にこれまでお荷物といわれて久しい杉の人工林は、これからの国際的な森林資源争奪環境にあっては、ボリュームとしては地元の国有林・民有林に充分あるといわれる状況です。アジアの経済発展のなかで木材需要が高まる中にあっては、国策としても人工林の杉材の活用はこれから重要な位置を占めるといわれます。
合併後の新高山市においては、森林の持つ多面的な機能に留意し、今後もその恩恵を享受した豊かなまちづくりを推進する為には、市民・行政一体となって山を守り水を守る決意と努力が欠かせません。
山と森林に人が関わって行くには、保護と保全を通じて適切な管理が欠かせません。間伐の推進、森林地積調査の推進等と共に、後継者育成を含め幅広い林業振興策の充実を望んでやみません。 又、地域振興の柱として森林資源を活用していく為には、現状の木材価格の低迷下にあっては、行政が担ってやれるリスク分担について一歩踏み込むことも必要です。赤坂天然ライスの事例で見たように、地域振興・産業興しには総合的マーケテイングの視点が不可欠です。川下を見据えた計画づくりが必要です。そうした意味ではシンクタンクとしての計画案づくり・販路開拓・製品開発等における産学連携も可能であり、行政がその面で新たな視点で取り組むことも必要ではないでしょうか。 地域経済循環の面から、地域振興に欠かせぬ林業振興について取り上げてみました。 |
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(参考資料):高山市における民間活力を活用した地域振興事例 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地域振興とは 定義:交流人口・定住人口増をはかり、賑わいを創出すること、経済活動・消費活動・文化活動・都 市活動を活発にして地域住民の経済的満足感と精神的な満足感を与えること。生き甲斐の ある暮らしを増進させること。 地域振興の事例としての道の駅関連施設・事業 1.道の駅付帯施設について 8施設(パスカル清見・ななもり清見・桜の郷荘川・モンデウス飛騨位山・飛騨街道なぎさ・ひだ朝日 村・ひだたかね工房・平湯大滝公園) H17に運営連絡協議会を設立。情報発信の拠点。 一面は受身の販売から抜け出せない。 2.特選館あじか 市の直営施設。 H17年度年間利用者は約16万人。 年間売り上げ 1億1700万円。 内7800万円が出荷組合の農産物販売額。 出荷組合員270名 地域の生き甲斐施設としての地歩を築いた。 3.清見農産加工センター・清見野菜花卉育苗施設 第3セクターふるさと清見21が運営 @清見農産加工センター 年間売り上げ約3億円 18名が従事(正社員・パート含め) A清見野菜花卉育苗施設 年間売り上げ約2億円 37名が従事(正社員・パート含め) 付加価値の向上で地域産業発展に寄与している。 市内における成功事例づくりの候補対象として位置づけられている。 また自立可能な委譲の対象としても位置づけられている。 |
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(参)高山市の産業振興施設と出資法人 高山市農産物加工施設の設置及び管理に関する条例に位置づける施設
高山市農産物生産・育苗施設の設置及び管理に関する条例に位置づける施設
高山市交流促進施設(道の駅付帯施設)の設置及び管理に関する条例に位置づける施設
○高山市観光施設の設置及び管理に関する条例に位置づける施設 32施設の内
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○高山市の出資法人等
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