平成26年10月 新風会視察調査報告書   中田清介
松江市の平成の開府元年まちづくり構想並びに中心市街地活性化計画

○松江市の生い立ち

松江市は、古代出雲の中心地として早くから開け、奈良時代には国庁や国分寺が置かれていました。地名の由来は、慶長16年(1611年)堀尾吉晴が亀田山に城を築き、白潟・末次の二郷をあわせて松江と称したことにはじまります。江戸時代には堀尾氏3代・京極氏1代・松平氏10代の城下町として栄えました。そして、この頃、今日に見る都市の基礎が形成されました。
 明治4年(1871年)廃藩置県によって県庁が置かれ、同224月(1889年)全国の38市とともに市政を施行しております。当時の市域4.78km²・人口35,513人でした。

その後、昭和9年から35年にかけて9回にわたり周辺の村を合併、そして平成17331日に八束郡7町村と合併し、さらに平成2381日に八束郡東出雲町を合併し、現在の市域になっております。この間、昭和26年(1951年)には松江国際文化観光都市建設法が制定され、奈良市・京都市と並んで国際文化観光都市となりました。さらに、平成7年(1995年)には出雲・宍道湖・中海拠点都市地域に指定され、山陰の中核都市として発展してきております。

松江市の総合計画と平成の開府元年まちづくり構想
 平成17年3月に八束郡7町村と合併したことにより、平成19年を初年度とし平成28年を目標年次とする総合計画が策定されており、平成24年度から28年度にまたがる後期基本計画が策定されています。またそれに基づき平成の開府元年まちづくり構想が別途策定されています。
松江市の総合計画
基本構想 10年 松江市がめざすべき都市像と、これを実現する施策の柱、都市像実現に向けたまちづくり方針などを示すものです。
基本計画

前期後期の5年間 基本構想を実現するための具体的な施策・主な事業を体系的に示すものです。

実施計画 3年間とし、毎年度見直しする。基本計画で定めた施策体系に基づいて、3 年間の事業実施方策を明らかにし、事業内容を具体的に示すものです。
          

H19

H20

H21

H22

H23

H24

H25

H26

H27

H28

          基本構想(目標年次平成28年度)
   
   前期基本計画(目標年次平成23年度)     後期基本計画(目標年次平成28年度
     
                       実施計画(3年間)    ローリング
                        
「後期基本計画の基本的な考え方」
   
  

      

こうして基本構想の理念・将来都市像・基本目標を尊重しながら・前期計画の検証・市民アンケート結果の結果・市民との意見交換会・松江市を取り巻く状況の変化などを考慮して24年度からの後期計画は策定されました。特に取り巻く状況の変化については以下の項目を取り上げています。

     ・人口減少と少子高齢化の進展。

     ・東日本大震災の発生。

     ・経済状況の変化。

     ・雇用環境の変化。

     ・地域主権の推進。

     ・広域連携の推進。

    後期計画で掲げた重点プロジェクト

    こうした背景の中で後期の重点プロジェクトを

@    定住の促進 

A    安全安心なまちづくり 

B    ポスト400年祭    と定めています。

 この中で「ポスト400年祭」と位置づけた背景は、前期計画の中の重点プロジェクトに「松江開府400年祭」に取り組み、5年間にわたって歴史・文化・伝統・自然などについて市民の明皆さんと再認識し・再発見し、全国へ情報発信してきた経緯があります。

 この成果を市民共有の財産とし、市民の皆さんをはじめ様々な団体が主体となるまちづくりをいっそう推進するために「ポスト400年祭」を重点プロジェクトに組み入れています。    


  3つの重点プロジェクトとその取り組み                                       

重点プロジェクト

取り組み・施策の柱

目指す姿

1.定住の促進 

・働く支援

・住む支援

・産み育てる支援

・高齢者がいきいき暮らせる支援

山陰最大の特例市として目標人口208,000人を目指す。

2.安全・安心なまちづくり

・災害に強い都市基盤整備

・危機管理体制の充実

・消防、救急、救助体制の重筆

・交通安全対策の充実

・安心して暮らせる環境

・防犯対策、消費生活の安全

都市基盤整理はもとより、地域コミュニティの維持や自助、共助、公助の仕組み作りを進め安全安心なまちづくりを推進する。

3.ポスト400年祭

・まちあるき観光

・歴史的風致維持向上

・外国人観光客の誘致

年間入込客数1,000万人達成(うち外国人8万人)により観光消費額の増加、域内経済循環・波及を図り、地域を活性化し都市のグレードアップを目指す。



「平成の開府元年まちづくり構想」

松江市の後期計画において様々な課題を取り上げ計画策定したところではあるが、時代の大きな転換点にたって考えるとき、発想を変え新たなまちづくりに踏み出すために、総合計画とは別に20年後の将来を見据えた新たな価値観を生み出すために「平成の開府元年まちづくり構想」を策定された。

 【構想のコンセプトと目指すまち】

   「また八雲が歩きはじめるまち」

 120年前に来松した小泉八雲は、当時、誰もあたりまえに思い、気づかない松江の良さを見つけ海外に紹介しました。私たちは、今一度、八雲の視点に立ち返り、松江の良さや松江らしさを再発見し、それを誇りに感じながら、新たな価値を生みだしていく。

 

   「新たにチャレンジするポイント

     ・世界市場で注目を集める松江発の新製品

     ・新しい息吹が吹き込まれる「松江の伝統と文化」

     ・国内外の人を惹きつける松江スタイルの旅

     ・まちなみの統一感に古くからの自然景観がとけ込んだ都市

     ・挑戦を繰り返し新たなものを生み出す人々とまち

 
 【構想の発想
   

  「松江が持っているものを十二分に活かすための逆転の発想

   ・従来型の大規模資本の起業誘致を柱とする産業発展ではない。

    ・世界の大規模市場ではなく、小規模だがなくてはならない製品を
     供給するすき間市場(ニッチ市場)で勝負する。

    ・厳しい状況にある伝統産業・農林水産業の復活の鍵は大量生産型ではない。
     製品価値が高まる少量供給型(小ロット)でストーリー性のあるもの。

    ・高齢化先進地の状況を逆にまちの活力とする。

     

れまで固定化されてきた考え方や発想を「逆転(転換)」させ、逆境と思われていたものは前向きにとらえ、成長につなげていく。 逆転の発想で新たな価値を生み出していく、本物志向のまち、世界にふたつとないまち松江に。

 【松江の挑戦目標】
   

    1.松江に新たな産業を興していく

1-1観光産業のバージョンアップ〜世界を魅了する松江スタイルの旅〜

@    観光消費の域内循環を促進する〜地域全体のおもてなしで観光消費拡大〜

A    松江のインバウンド(海外からの観光客誘致)を増強する

1-2次世代型ものづくり産業の創出〜世界で勝負できる起業を生み出す〜

@    「隠れたチャンピオン企業」が生み出す松江発の新製品

A    中海・宍道湖・大山圏域内企業との「相互補完・共創」により新しい価値を創る

B    産業融合によるものづくり産業の「サービス化」

1-3Rubyが世界を変える〜松江にしかできない情報産業をつくる〜

@    Rubyを核にしたIT産業の世界的集積を創る

A    Rubyを活用して様々な産業課題を解決する

B    Rubyによる子供たちへのプログラミング教育

1-4伝統文化が生活文化産業として発展する

@    松江「和菓子」・「日本酒」を世界の舞台へ

A    不昧公茶の湯スタジオ

B    現代版「松江美術工芸研究所」

1-5農林水産業のさまざまな価値を活用したビジネスの促進

@    本物の食ブランドで「もうかる農業」をつくる

A    中海・宍道湖・日本海の水産資源のさまざまな活用

B    松江「産直フレッシュマーケット」の開設

1-6「産官学民」の「チーム松江」が新たな産業・仕事をつくる

@    日本で最も「創魚婦・企業に挑戦しやすい地域」になる

A    連携をリードする高等教育機関(島根大学・島根県立大学・松江高専)

B    ビジネスを支える専門人材の充実・ネットワーク化

    2.松江が「人」を育てる、「人」が松江で輝く     

2-1次代の人材を生み出し続ける

@    松江からグローバル人材を輩出する。

A    子ども・若者の「学び直し」をサポートする地域コミュニティ

B    次代の専門人材を輩出する新たな島根大学・島根県立大学・松江高専

C    連携をリードする高等教育機関(島根大学・島根県立大学・松江高専)再掲

2-2女性・若者など多彩な人材が松江に新たな価値をつくる

@    女性・若手リーダーの創出〜女性と若者の感性で地域を変える〜

A    女性・若手クリエーターによる松江のリデザイン

B    若手アーティストと伝統産業とのコラボレーション

C    海外からの留学生など外国の人々が活躍できる舞台づくり

2-3アクティブシニアが躍動するまち

@    シニヤベンチャーの促進〜高齢者の知恵で仕事をつくり出す〜

A    アクティブシニアのライフスタイルが創造する新たな松江

B    健康寿命を延ばすプログラム

    3.松江の魅了を高める「都市デザイン」    

3-1景観・まちなみのトータルマネジメント

 

@    松江駅から塩見縄手、松江城までのトータルデザイン

A    松江らしい駅前と水辺空間をつくる

B    松江駅から松江大橋までの2本の大きなまちあるきルート

3-2中心市街地の再活性化と連携

@    中心市街地の「日常的賑わい」を再生する

A    産官学連携のまちづくり会社の設置・運営

B   歩きたく・つながるまち

3-3世界とのつながりの中で輝く松江づくり

@    世界とのダイレクトなネットワークづくり

A    「松江の文化力」で世界に広がるネットワーク


  

 【構想策定の経緯】

     ・ビジョン懇話会 平成23年11月 〜平成25年2月まで6回

       懇話会委員 大西 隆    東京大学教授

              垣内 恵美子  研究制作大学院教授

              藻谷浩介    鞄本総合研究所 主席研究員

              小林 詳泰   島根大学学長

              浜田 真理子  ミュージシャン

              古瀬 誠    松江商工会議所会頭

              山根 常正   且R陰中央新報社会長

     ・市議会    平成23年12月20日  まちづくり対策特別委員会

             平成24年2月15日   まちづくり対策特別委員会

     ・シンポジウム 平成24年5月27日(日)

             平成25年2月3日(日)

     ・ご縁タビュー 松江にご縁のある方へインタビューを行い、懇話会で構想の骨格を
             考える際
参考とした。

     ・「若い世代の皆さんと意見交換」 平成23年12月9日

             松江商工会議所青年部、青年会議所、青年会議

     ・市民懇話会  平成24年7月〜平成24年9月まで8回

各種団体とワークショップ形式で意見交換

教育福祉分野・アクティブシニア部門・NPO・女性コミュニティ

事業者分野・観光文化生産者部門・若者コミュニティ(2回)

     ・地域座談会   平成24年8月〜平成24年9月まで6ブロックで開催

     ・市民への提案会 平成24年9月27日・9月28日


○松江市中心市街地活性化計画  

これまでの中心市街地活性化への取り組み】

 1.平成10年9月 松江市中心市街地活性化に関する基本計画 国に提出。

   当時の状況:平成6年 松江サティ JR松江駅商店街とは反対方向に進出。

         平成10年4月 一畑百貨店 殿町からJR松江駅前に移転

         商店街地域(南殿町、本町、天神町等)は空き店舗や月極駐車場等が増加。
          平成9年3月策定の第4次松江市総合計画後期基本計画にも、中心市街地活
         性化への方向が打ち出された。
     

主な取り組み
・カラコロ工房の整備
 平成12年4月オープン

旧日銀松江支店を活用した「匠」をテーマとする 製造・展示・販売一体型観光拠点施設
所  有:松江市
施設管理:財団法人松江観光開発公社

施設運営:まちづくり工房(TMO松江)

歴史的建造物の有効活用集客拠点

 カラコロ工房は当初の目的どおり集客拠点としての役割を果たし、現在も継続中。

               中心市街地周辺の交通政策と観光政策   

ぐるっと松江レイクライン

ぐるっと松江堀川巡り

平成7年事業開始・20分間隔で運行。観光都市松江にとってはなくてはならない交通手段として位置づけている。大人200円一日券500円。


平成9年事業開始・15分間隔定時運行

年間利用客約30万人・約2億5千万円/年

船頭110人・船舶45隻

約4キロを50分で一周

 2.改正中活法に基づく第1期中心市街地活性化基本計画:平成20年7月国の認定   

    計画期間:平成20年7月〜平成25年3月

    計画区域:403ha
       

    

    基本方針:住んでよし、訪れてよしの松江らしいまちづくり

〜住み続ける暮らしの中に流動性を生み出す〜

        1.観光と交流

        2.近隣集客拠点

        3.まちなか居住

   主な実施事業
     1.観光と交流

 ・松江歴史観整備事業・宍道湖しじみ館整備事業・松江開府400年祭

 ・松江暖談食フェスタ・松江水路灯・史跡松江城整備事業 等 

指標

H19基準値

H24目標値

H23実績値

中心市街地の観光客入り込み数

3,627千人

4,100千人

3,628千人

      2.近隣集客拠点 ・母衣地区暮らし賑わい事業(日赤病院の現在地での立て替え)

              ・松江SATY増床・増築

              ・松江京店・カラコロCOCOLO SUNDAY

              ・松江市公共交通体系整備

              ・商店街チャレンジショップ支援事業 等

指標

H19基準値

H24目標値

H23実績値

中心市街地通行量

17,380

19,000

20,101

     3.まちなか居住 ・南殿町地区再開発事業

           ・若者定住促進事業補助金 

           ・大手前通り周辺地区まちづくり交付金事業

           ・松江市情報サービス等立地促進補助金

                       ・uby City Matue Project

指標

H19基準値

H24目標値

H23実績値

中心市街地内人口

15,713

16,000

15,441


  

 3.第2期中心市街地活性化基本計画

  「計画期間」:平成25年4月〜平成30年3月
   「基本方針」:テーマは第1期と同じ

           住んでよし、訪れてよしの松江らしいまちづくり

〜住み続ける暮らしの中に流動性を生み出す〜

第1期の基本方針

第2期の基本方針

「観光・交流」

まちなかを楽しむ「観光・交流」

「近隣集客拠点」

まちなかが賑わう「近隣集客拠点」

「まちなか居住」

住みたい・住み続けたい「まちなか居住」

      第1期の検証を行い基本方針の表現を改正し、より充実した計画を策定した。

      1.まちなかを楽しむ「観光・交流」

主たる取り組み

 ・千鳥町ビル再開発事業:老朽化ビル建て替え、商業施設、老人ホーム、温泉施設整備

         ・興雲閣解体修理・活用事業:旧迎賓館修理、カフェ、ギャラリ、多目的施設整備

         ・まち歩き観光推進事業:街中の自然・歴史・文化を巡るまちあるきガイド実施

指標

H23基準値

H29目標値

宿泊客数

1,278千人

1,406千人

あるき観光定時ガイド参加者数

6,840(H24推定値)

8,000

      

      2.まちなかが賑わう「近隣集客拠点」

主たる取り組み

            ・松江水路灯:秋に堀川周辺での明かりイベント開催。
          滞在時間の増加と夜間の観光振興。
市民観光客の夜間の消費拡大へ
        ・街なか知っ得ゼミナール事業:商店街の専門知識や技術を学ぶまちゼミ
          の開催。
商店街へのさらなる集客を図る。
             Ruby City MATSUE プロジェクト」:JR松江駅前に設置した「松江市開発交流
               プラザ(松江オープンソースラボ)」を拠点に、松江市在住のまつもとゆきひろ氏
               が開発したプログラミング言語である「Ruby」(ルビー)を核としたプロジェクトを展
               開し、新たな地域ブランド創出、IT産業振興、人材育成、雇用の創出を促進する 

指標

基準値

目標値

中心市街地通行量

20,101(H23)

23,000

商店街空き店舗数

97軒(H24

82

      
    3.住みたい・住み続けたい「まちなか居住」

主たる取り組み

              「都市再生整備計画事業(大手前周辺地区第2期)」: 快適なまちなか回遊を促す
                 居住者、観光客の歩行環境整備と、災害時の避難場所となる公園を整備する。

              ・県立プール跡地整備事業:広場の整備、市民観光客の休憩交流の場整備。

・景観形成区域の指定による住環境の維持

  景観形成上重要な地域にすることで、良好な居住環境を確保する。

指標

基準値(H23)

(H19H23の年平均)

目標値(H29

H25H29の年平均)

中心市街地内の社会増減

38人

66人


【松江市まちづくり協議会の活動】     

まちづくり協議会は、改正中心市街地活性化法により設置が義務づけられた組織です。まちづくりに関す る多くの団体を構成員として位置づけ、中心市街地の活性化を推進する役目を持っています。
松江市でも第一期の事業計画に伴い、まちづくりプロデューサーを活性化協議会事務局に置き、中心市街地活性化のマネジメントに当たらせる体制をとりました。第1期で「まちづくりプロデューサー設置事業」と して位置づけて活動してきました。  まちづくりプロデューサーは中心市街地の運営効果向上を図るため、専門的知識と経験を有する外部人材を招致し、中心市街地全体のマネジメントを担うタウンマネージャーです。タウンマネージャーの仕事は、ハードソフト両面でのまちづくりへの総括的マネジメントにあたる責任と能力が要求され、どれだけの成果を5年間で達成できるのかが評価の基準ともなるハードワークです。第2期の活性化基本計画が策定される中で、松江市では「まちづくりプロデューサー」を廃し、まちづくりサ ポーター制度を導入しています。
・協議会の位置づけ
中心市街地活性化協議会は「都市機能の増進を推進する者」と「経済活力を推進する者」が設置者となります。  さまざまなまちづくりプレイヤーを構成員として組織する法定協議会です。協議会の権限として中心市街地活性 化基本計画を策定する行政に対し、行政に意見聴取を求めたり意見を述べる事ができます。
・まちづくり会社の位置づけ
松江市のまちづくり会社は行政等の出資金が入らない、100%地元有志の出資による組織ばかりです。TMOの設立とは別のものとして位置づけ、地域の課題を解決するための民間会社設立が続いている。
まちづくりサポーターとサポーターの仕事
江中心市街地活性化協議会には2名のサポーターが常駐しています。
井ノ上知子さん

喜多川和夫さん

まちづくりの事例を探したり、具体案(たたき台)を提案したり、必要に応じては行政も巻き込んだり、皆さんと一緒に汗をかきながらイメージされているまちづくりの実現を支援していきます。
第2期で導入されたまちづくりサポーターですが、文字どおりまちづくりの活動を下支えする縁の下の力持ちです。第一期でのまちづくりプロデ゙ユ―サーよりより地域に密着した人材を登用することにより、きめ細かなサポートを目指して活動中です。特に25年度からの地方活性化への「まちづくり補助金」、「賑わい補助金」の活用や、各種ソフト事業面のサポートには強みを発揮して活動中です。
・まちづくり協議会事務局

松江商工会議所産業振興部産業振興課

松江市歴史まちづくり部都市政策課

松江市産業観光部商工企画課

松江市産業観光部観光文化課

松中心市街地活性化協議会まちづくりサポーター

・今回の視察でお世話になった松江商工会議所内「松江中心市街地活性化協議会」の皆様


写真左より

松江商工会議所産業振興課 松尾敦子さん

まちづくりサポーター 井ノ上知子さん

松江商工会議所常務理事 森秀雄さん

松江商工会議所産業振興課長 高尾健司さん

まちづくりサポーター 喜多川和夫さん

・協議会から見た第2期の中心市街地活性化事業
4つのプロジェクトに力を入れている

@    各種活性化計画における事業家へのサポート

A    アフターコンベンションへのサポート(おもてなし部分の充実)

B    工場跡地の再開発

C    温泉地区の活性化(宍道湖温泉)

第一期の課題を第2期の事業の柱に

@街中に集客施設を整備することの成果は出たが、それを商店街の集客や回遊性をアップすることにつなげていく。

A集客に結びつく商店街づくりの推進と商店街の賑わいづくりを推進。夜の賑わいづくりに向けた環境整備を図る。 
B既存ストックの有効活用を展開し、まちなか居住やビジネスを促進する。特に中心部の人口について社会的要因の増を図る。

○「松江開府元年まちづくり構想」と「松江中心市街地活性化計画」を調査しての考察

1.高山市の8次総合計画基本計画素案との比較で考える。

今回、事前に松江市の「平成の開府元年まちづくり構想」を書面で調査しての視察を行いました。

総合計画に伴う基本構想、基本計画、実施計画」という三層制での構想があるにもかかわらず、(松江市の後期計画は平成24年度から28年度までを対象年度と位置づけています。)あえて平成25年三月に20年先を見据えた長期にわたるまちづくりの指針ともいえる構想を策定されたことに、少し驚くと共に中身を改めてじっくりと読ませていただきました。

 松江市総合計画前期計画、後期計画。松江市中心市街地活性化基本計画1期、2期計画、そうしたものについても一応当たってみました。そうした計画書を読ませていただいて印象に残ったのは、前期計画や1期の計画をきちんと検証することによって、その課題を市民と共有する中で後期計画や2期目の計画に反映させているという点でした。

そのことは、現在どこに問題があって今後必要とされる政策は何か、誰のために何をしなければいけないのか、問題点を的確に把握できる検証体制を確立されているということもでもあると考えます。そうした点では手を抜かない体制が定着しているともいえると思います。

現在国の政策の柱の一つに、「地方の活性化」があることでもわかるように、地方を取り巻く社会・経済環境は厳しい状況となっています。特に今後の人口減少化への対応は難しい局面となっており、地方自治体の財政面でも地域の産業構造面においてもますます追い込まれる状況が続いており、将来への不安はぬぐえないのが現状です。

そうした意味では、これまでどおりのやり方では通用しない、発想の転換が迫られているということです。そうした意味からは「松江市の平成の開府元年まちづくり構想」は、20年先を見据えた政策の柱をまちづくりの指針として位置づけており、現在課題となっている問題点を的確に抽出して示し、又その問題解決のために現状で考えられる施策や施策の方向性を具体的に示すことで、市民との協働から共に創る共創のまちづくりを目指すとしています。

こうした点でまちづくりにおける政治の責任を果たす意志と取り組みが見て取れます。政治が目指すところは政策で市政の課題を具体的に市民に示し、共に目的に向かって努力していくことです。高山市は平成27年からの第8次総合計画を策定しているところであり、昨年から議会もその為の基礎調査を進め政策提言を行ってきたところです。

現在示されている基本計画素案では、こうした政策の基本面を示す記述が少なく、施策の体系ばかりでは議会に身を置く私たちには不満のあるところです。 

言葉の羅列でごまかすのではなく、今ある課題を具体的に示す。その解決法をこれも明示していく政治の責任が今必要とされていると確信します。議会が基本計画を議決事項とした決断は、政治の責任をわかりやすく市民の皆様の前に示すことにあると考えます。その意味では政策の柱をきちんと示し、施策の体系と施策の内容を具体的に示してこそ、その責任が果たせるのだと思います。

これから高山市第八次総合計画の策定作業が進んでいくことになりますが、議会も行政もそれぞれの立場で政治の責任を全面にとらえた計画に努力していきたいと思います。たとえ今回の策定が物足りないものであっても、今後の改善に向かって努力していきたいと思います。2.

2.総合計画のローリングについて考え
 今回松江市の総合計画とその体系についても読ませていただきました。松江市は基本構想、基本計画、実施計画の三層制をとっており、その検証を確実に行い次期の計画に反映させていると指摘しましたが、もう一点実施計画を三年間として位置づけその後ローリングによる検証と改善を図る体制としている点に、なるほどと納得したところです。
 高山市でもそうですが、これまで実施計画や財政計画については毎年のローリングで軌道修正をしていくと説明されていました。一見その時々の課題に対して機動的に対応する体制とも理解しがちですが、計画行政の推進という点からは少し問題が浮かび上がってきます。
 はたして総合計画の基本計画に盛り込まれた施策や、施策の体系を具現化する事務事業などは、毎年一年ごとのローリングが必要なのかということです。毎年のローリングという点では予算消化という点にばかり目がいくのではないでしょうか。計画行政というのであれば毎年の予算の執行ばかりではなく、施策の成果を見極める面でも一定期間は時間的にかかるものであり、松江市が行っているように三年間の施策の成果を見極める中でローリングを行い、軌道修正をするものはそれを実施する中で次期の計画への土壌づくりを行う体制は必要な視点ではないかと強く感じました。そうした準備態勢があって初めて前期の課題を次期の政策課題とする体制ができ、必要な施策や施策の方向性を示していくことができると確信します。

 高山市は総合計各条例を制定し、従来の三層制から二層制とする体制を定めました。今後の課題に対応していくためには、こうした改善への努力も必要と感じています。


3..中心市街地活性化計画とまちづくりサポーターについて考える。

 今回、松江市の中心市街地活性化計画第二期の計画についても調査し、松江商工会議所の中心市街地活性化協議会の皆さんのお話を聞かせていただきました。

 松江市でも平成10年に中心市街地活性化計画を策定し、まちなかの集客施設の整備などにも取り組んできましたが、平成18年の国の法改正に伴い、平成20年国の認定を受けた中心市街地活性化基本計画に取り組み、観光と交流、近隣集客施設、まちなか居住を3本の柱とする各種事業を実施してきました。

 ご多分に漏れずTMOの設立やタウンマネージャーの導入などにも取り組まれ、それなりの活性化に取り組まれてきたところですが、それぞれの数値目標についても実績を残されてきています。

 しかしそれなりの集客施設の整備などはできたが、その人の流れを商店街へつなげ商店街の売り上げにつなげていくことは難しい課題だったようです。そのような点は、中心市街地の通行量は増加傾向となったが、商店街地域の通行量は目標の9割に留まったと報告された点にも現れています。

 又、まちなか居住については社会動態による人口はプラスとなったが、自然動態による人口減少が進む中では全体として基準値を下回ってしまったと報告されており、こうした問題の解決に地方自治体は苦悩する姿が見てとれました。

 こうした中で導入されたまちづくりサポーターですが、従来のタウンマネージャー導入と大上段に振りかぶるより、より地域に密着した人材を登用することにより、きめ細かなサポートを目指した点に注目してきました。

特に25年度からの地方活性化へむけた「まちづくり補助金」、「賑わい補助金」の活用や、各種ソフト事業面のサポートには強みを発揮しているのではないかと感じました。曲がりなりに5年間の事業計画は認定されて取り組むのですから、都市計画事業など専門的な視点が必要な計画事業はともかくとして、きめ細かにサポートする人材こそが必要とされているといえます。

第2期の計画の中にはソフト事業も多く盛り込まれており、松江のまちづくり会社は純民間の組織がいくつもあるという中にあっては、頼もしい体制といえるのではないかと感じてきました。

計画づくりには政策の提供感が必要な面もありますが、計画を実行する中ではワンストップの相談窓口とサポート体制は不可欠な要素です。

4.まちづくり会社の運営について考える

 高山市第8次総合計画素案にも記述が盛り込まれていますが、現在休眠中の「まちづくりたかやま」の活動を支援し、まちづくり会社の活動による中心市街地の活性化への方向性が打ち出されてきています。高山市は行政が出資をするまちづくり会社の体制となっていますが、どのような活動を組み立てて持続ある活動につなげていくのか、その活動範囲をどの辺に線引きしていくのか等市民にもわかりやすくその内容を示していくことがまず迫られることになります。又同時にその運営基盤を強化して永続できる体制づくりも重要な課題です。

  そうした点では、伝建地区を含めた空き家対策への取り組み、商店街地域の空き店舗への対応、まちなか居住への取り組み、買い物弱者対策の取り組み、まちなかの公共交通への取り組みなどが迫られることになると思っています。

  空き家や空き店舗対策というと補助金をすぐに連想しがちですが、新たにそうしたところへ新規加入したり借りたい人たちにとって、利用しやすい体制を整備してやるなどのサポート体制の確立も大切な視点であると考えます。

  高山市の中心市街地活性化にとってもう一つの大切な視点は、観光客の回遊を高め観光消費の波及効果を高めるまちづくりを推進することです。それには文化・商業政策と都市計画の連動による観光まちづくりの推進が欠かせぬ課題です。そうした観点からのまちづくりへの再投資ができるまちづくり会社の活動が望まれます。

  もう一点、松江市では中心市街地をめぐる循環バス「レイクライン」を運行しています。20分間隔で大人200円での運行です。高山市ではまちなみバスの運行を委託していますが、今後は積極的にまちづくり会社が関与を深め、連携して観光と市民生活の融合の接点として活用していく体制が必要になるはずです。