平成26年10月 新風会視察調査報告書 中田清介 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
松江市の平成の開府元年まちづくり構想並びに中心市街地活性化計画 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○松江市の生い立ち 松江市は、古代出雲の中心地として早くから開け、奈良時代には国庁や国分寺が置かれていました。地名の由来は、慶長16年(1611年)堀尾吉晴が亀田山に城を築き、白潟・末次の二郷をあわせて松江と称したことにはじまります。江戸時代には堀尾氏3代・京極氏1代・松平氏10代の城下町として栄えました。そして、この頃、今日に見る都市の基礎が形成されました。 その後、昭和9年から35年にかけて9回にわたり周辺の村を合併、そして平成17年3月31日に八束郡7町村と合併し、さらに平成23年8月1日に八束郡東出雲町を合併し、現在の市域になっております。この間、昭和26年(1951年)には松江国際文化観光都市建設法が制定され、奈良市・京都市と並んで国際文化観光都市となりました。さらに、平成7年(1995年)には出雲・宍道湖・中海拠点都市地域に指定され、山陰の中核都市として発展してきております。 |
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○松江市の総合計画と平成の開府元年まちづくり構想 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成17年3月に八束郡7町村と合併したことにより、平成19年を初年度とし平成28年を目標年次とする総合計画が策定されており、平成24年度から28年度にまたがる後期基本計画が策定されています。またそれに基づき平成の開府元年まちづくり構想が別途策定されています。 「松江市の総合計画」
前期基本計画(目標年次平成23年度) 後期基本計画(目標年次平成28年度) 実施計画(3年間) ローリング 「後期基本計画の基本的な考え方」
3つの重点プロジェクトとその取り組み
「平成の開府元年まちづくり構想」 松江市の後期計画において様々な課題を取り上げ計画策定したところではあるが、時代の大きな転換点にたって考えるとき、発想を変え新たなまちづくりに踏み出すために、総合計画とは別に20年後の将来を見据えた新たな価値観を生み出すために「平成の開府元年まちづくり構想」を策定された。 【構想のコンセプトと目指すまち】 「また八雲が歩きはじめるまち」 120年前に来松した小泉八雲は、当時、誰もあたりまえに思い、気づかない松江の良さを見つけ海外に紹介しました。私たちは、今一度、八雲の視点に立ち返り、松江の良さや松江らしさを再発見し、それを誇りに感じながら、新たな価値を生みだしていく。 「新たにチャレンジするポイント」 ・世界市場で注目を集める松江発の新製品 ・新しい息吹が吹き込まれる「松江の伝統と文化」 ・国内外の人を惹きつける松江スタイルの旅 ・まちなみの統一感に古くからの自然景観がとけ込んだ都市 ・挑戦を繰り返し新たなものを生み出す人々とまち 「松江が持っているものを十二分に活かすための逆転の発想」 ・従来型の大規模資本の起業誘致を柱とする産業発展ではない。 ・世界の大規模市場ではなく、小規模だがなくてはならない製品を供給するすき間市場(ニッチ市場)で勝負する。 ・厳しい状況にある伝統産業・農林水産業の復活の鍵は大量生産型ではない。 製品価値が高まる少量供給型(小ロット)でストーリー性のあるもの。 ・高齢化先進地の状況を逆にまちの活力とする。
【松江の挑戦目標】 1.松江に新たな産業を興していく
2.松江が「人」を育てる、「人」が松江で輝く
3.松江の魅了を高める「都市デザイン」
【構想策定の経緯】 ・ビジョン懇話会 平成23年11月 〜平成25年2月まで6回 懇話会委員 大西 隆 東京大学教授 垣内 恵美子 研究制作大学院教授 藻谷浩介 鞄本総合研究所 主席研究員 小林 詳泰 島根大学学長 浜田 真理子 ミュージシャン 古瀬 誠 松江商工会議所会頭 山根 常正 且R陰中央新報社会長 ・市議会 平成23年12月20日 まちづくり対策特別委員会 平成24年2月15日 まちづくり対策特別委員会 ・シンポジウム 平成24年5月27日(日) 平成25年2月3日(日) ・ご縁タビュー 松江にご縁のある方へインタビューを行い、懇話会で構想の骨格を ・「若い世代の皆さんと意見交換」 平成23年12月9日 松江商工会議所青年部、青年会議所、青年会議 ・市民懇話会 平成24年7月〜平成24年9月まで8回 各種団体とワークショップ形式で意見交換 教育福祉分野・アクティブシニア部門・NPO・女性コミュニティ 事業者分野・観光文化生産者部門・若者コミュニティ(2回) ・地域座談会 平成24年8月〜平成24年9月まで6ブロックで開催 ・市民への提案会 平成24年9月27日・9月28日 ○松江市中心市街地活性化計画 【これまでの中心市街地活性化への取り組み】 1.平成10年9月 松江市中心市街地活性化に関する基本計画 国に提出。 当時の状況:平成6年 松江サティ JR松江駅商店街とは反対方向に進出。 平成10年4月 一畑百貨店 殿町からJR松江駅前に移転 商店街地域(南殿町、本町、天神町等)は空き店舗や月極駐車場等が増加。
計画期間:平成20年7月〜平成25年3月 計画区域:403ha 基本方針:住んでよし、訪れてよしの松江らしいまちづくり 〜住み続ける暮らしの中に流動性を生み出す〜 1.観光と交流 2.近隣集客拠点 3.まちなか居住 主な実施事業1.観光と交流 ・松江歴史観整備事業・宍道湖しじみ館整備事業・松江開府400年祭 ・松江暖談食フェスタ・松江水路灯・史跡松江城整備事業 等
2.近隣集客拠点 ・母衣地区暮らし賑わい事業(日赤病院の現在地での立て替え) ・松江SATY増床・増築 ・松江京店・カラコロCOCOLO SUNDAY ・松江市公共交通体系整備 ・商店街チャレンジショップ支援事業 等
・若者定住促進事業補助金 ・大手前通り周辺地区まちづくり交付金事業 ・松江市情報サービス等立地促進補助金 ・Ruby City Matue Project
3.第2期中心市街地活性化基本計画 「計画期間」:平成25年4月〜平成30年3月 住んでよし、訪れてよしの松江らしいまちづくり 〜住み続ける暮らしの中に流動性を生み出す〜
1.まちなかを楽しむ「観光・交流」 主たる取り組み ・千鳥町ビル再開発事業:老朽化ビル建て替え、商業施設、老人ホーム、温泉施設整備 ・興雲閣解体修理・活用事業:旧迎賓館修理、カフェ、ギャラリ、多目的施設整備 ・まち歩き観光推進事業:街中の自然・歴史・文化を巡るまちあるきガイド実施
2.まちなかが賑わう「近隣集客拠点」 主たる取り組み ・松江水路灯:秋に堀川周辺での明かりイベント開催。滞在時間の増加と夜間の観光振興。市民観光客の夜間の消費拡大へ ・街なか知っ得ゼミナール事業:商店街の専門知識や技術を学ぶまちゼミ の開催。 商店街へのさらなる集客を図る。 ・「Ruby City MATSUE プロジェクト」:JR松江駅前に設置した「松江市開発交流 プラザ(松江オープンソースラボ)」を拠点に、松江市在住のまつもとゆきひろ氏 が開発したプログラミング言語である「Ruby」(ルビー)を核としたプロジェクトを展 開し、新たな地域ブランド創出、IT産業振興、人材育成、雇用の創出を促進する
3.住みたい・住み続けたい「まちなか居住」 主たる取り組み ・「都市再生整備計画事業(大手前周辺地区第2期)」: 快適なまちなか回遊を促す居住者、観光客の歩行環境整備と、災害時の避難場所となる公園を整備する。 ・県立プール跡地整備事業:広場の整備、市民観光客の休憩交流の場整備。 ・景観形成区域の指定による住環境の維持 景観形成上重要な地域にすることで、良好な居住環境を確保する。
【松江市まちづくり協議会の活動】
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○「松江開府元年まちづくり構想」と「松江中心市街地活性化計画」を調査しての考察 1.高山市の8次総合計画基本計画素案との比較で考える。 今回、事前に松江市の「平成の開府元年まちづくり構想」を書面で調査しての視察を行いました。 総合計画に伴う基本構想、基本計画、実施計画」という三層制での構想があるにもかかわらず、(松江市の後期計画は平成24年度から28年度までを対象年度と位置づけています。)あえて平成25年三月に20年先を見据えた長期にわたるまちづくりの指針ともいえる構想を策定されたことに、少し驚くと共に中身を改めてじっくりと読ませていただきました。 松江市総合計画前期計画、後期計画。松江市中心市街地活性化基本計画1期、2期計画、そうしたものについても一応当たってみました。そうした計画書を読ませていただいて印象に残ったのは、前期計画や1期の計画をきちんと検証することによって、その課題を市民と共有する中で後期計画や2期目の計画に反映させているという点でした。 そのことは、現在どこに問題があって今後必要とされる政策は何か、誰のために何をしなければいけないのか、問題点を的確に把握できる検証体制を確立されているということもでもあると考えます。そうした点では手を抜かない体制が定着しているともいえると思います。 現在国の政策の柱の一つに、「地方の活性化」があることでもわかるように、地方を取り巻く社会・経済環境は厳しい状況となっています。特に今後の人口減少化への対応は難しい局面となっており、地方自治体の財政面でも地域の産業構造面においてもますます追い込まれる状況が続いており、将来への不安はぬぐえないのが現状です。 そうした意味では、これまでどおりのやり方では通用しない、発想の転換が迫られているということです。そうした意味からは「松江市の平成の開府元年まちづくり構想」は、20年先を見据えた政策の柱をまちづくりの指針として位置づけており、現在課題となっている問題点を的確に抽出して示し、又その問題解決のために現状で考えられる施策や施策の方向性を具体的に示すことで、市民との協働から共に創る共創のまちづくりを目指すとしています。 こうした点でまちづくりにおける政治の責任を果たす意志と取り組みが見て取れます。政治が目指すところは政策で市政の課題を具体的に市民に示し、共に目的に向かって努力していくことです。高山市は平成27年からの第8次総合計画を策定しているところであり、昨年から議会もその為の基礎調査を進め政策提言を行ってきたところです。 現在示されている基本計画素案では、こうした政策の基本面を示す記述が少なく、施策の体系ばかりでは議会に身を置く私たちには不満のあるところです。 言葉の羅列でごまかすのではなく、今ある課題を具体的に示す。その解決法をこれも明示していく政治の責任が今必要とされていると確信します。議会が基本計画を議決事項とした決断は、政治の責任をわかりやすく市民の皆様の前に示すことにあると考えます。その意味では政策の柱をきちんと示し、施策の体系と施策の内容を具体的に示してこそ、その責任が果たせるのだと思います。 これから高山市第八次総合計画の策定作業が進んでいくことになりますが、議会も行政もそれぞれの立場で政治の責任を全面にとらえた計画に努力していきたいと思います。たとえ今回の策定が物足りないものであっても、今後の改善に向かって努力していきたいと思います。2. 2.総合計画のローリングについて考え
今回、松江市の中心市街地活性化計画第二期の計画についても調査し、松江商工会議所の中心市街地活性化協議会の皆さんのお話を聞かせていただきました。 松江市でも平成10年に中心市街地活性化計画を策定し、まちなかの集客施設の整備などにも取り組んできましたが、平成18年の国の法改正に伴い、平成20年国の認定を受けた中心市街地活性化基本計画に取り組み、観光と交流、近隣集客施設、まちなか居住を3本の柱とする各種事業を実施してきました。 ご多分に漏れずTMOの設立やタウンマネージャーの導入などにも取り組まれ、それなりの活性化に取り組まれてきたところですが、それぞれの数値目標についても実績を残されてきています。 しかしそれなりの集客施設の整備などはできたが、その人の流れを商店街へつなげ商店街の売り上げにつなげていくことは難しい課題だったようです。そのような点は、中心市街地の通行量は増加傾向となったが、商店街地域の通行量は目標の9割に留まったと報告された点にも現れています。 又、まちなか居住については社会動態による人口はプラスとなったが、自然動態による人口減少が進む中では全体として基準値を下回ってしまったと報告されており、こうした問題の解決に地方自治体は苦悩する姿が見てとれました。 こうした中で導入されたまちづくりサポーターですが、従来のタウンマネージャー導入と大上段に振りかぶるより、より地域に密着した人材を登用することにより、きめ細かなサポートを目指した点に注目してきました。 特に25年度からの地方活性化へむけた「まちづくり補助金」、「賑わい補助金」の活用や、各種ソフト事業面のサポートには強みを発揮しているのではないかと感じました。曲がりなりに5年間の事業計画は認定されて取り組むのですから、都市計画事業など専門的な視点が必要な計画事業はともかくとして、きめ細かにサポートする人材こそが必要とされているといえます。 第2期の計画の中にはソフト事業も多く盛り込まれており、松江のまちづくり会社は純民間の組織がいくつもあるという中にあっては、頼もしい体制といえるのではないかと感じてきました。 計画づくりには政策の提供感が必要な面もありますが、計画を実行する中ではワンストップの相談窓口とサポート体制は不可欠な要素です。 4.まちづくり会社の運営について考える 高山市第8次総合計画素案にも記述が盛り込まれていますが、現在休眠中の「まちづくりたかやま」の活動を支援し、まちづくり会社の活動による中心市街地の活性化への方向性が打ち出されてきています。高山市は行政が出資をするまちづくり会社の体制となっていますが、どのような活動を組み立てて持続ある活動につなげていくのか、その活動範囲をどの辺に線引きしていくのか等市民にもわかりやすくその内容を示していくことがまず迫られることになります。又同時にその運営基盤を強化して永続できる体制づくりも重要な課題です。 そうした点では、伝建地区を含めた空き家対策への取り組み、商店街地域の空き店舗への対応、まちなか居住への取り組み、買い物弱者対策の取り組み、まちなかの公共交通への取り組みなどが迫られることになると思っています。 空き家や空き店舗対策というと補助金をすぐに連想しがちですが、新たにそうしたところへ新規加入したり借りたい人たちにとって、利用しやすい体制を整備してやるなどのサポート体制の確立も大切な視点であると考えます。 高山市の中心市街地活性化にとってもう一つの大切な視点は、観光客の回遊を高め観光消費の波及効果を高めるまちづくりを推進することです。それには文化・商業政策と都市計画の連動による観光まちづくりの推進が欠かせぬ課題です。そうした観点からのまちづくりへの再投資ができるまちづくり会社の活動が望まれます。 もう一点、松江市では中心市街地をめぐる循環バス「レイクライン」を運行しています。20分間隔で大人200円での運行です。高山市ではまちなみバスの運行を委託していますが、今後は積極的にまちづくり会社が関与を深め、連携して観光と市民生活の融合の接点として活用していく体制が必要になるはずです。 |