修正特化係数で読み解く高山市の稼ぐ力と雇用力
平成27年6月15日:中田清介
基盤産業(稼ぐ力)と雇用吸収産業(雇用力)の相関図(チャート図)
 昨年度、いわゆる「産業連関表による地域経済構造分析」について文教産業委員会で調査し、その第一人者である岡山大学の中村良平教授から私たちが作成した視察レポート(朝来市の経済成長戦略)に対して数々のご指摘やらアドバイスをいただいたところです。
 先日、日本経済新聞の経済教室に中村先生の「地方創生地域の視点」に「稼ぐ力もつ産業を伸ばせ」と題するレポートを発表され、興味深く読ませていただきました。ポイントは3つあり、
 ○わが町の経済構造の精緻な分析が必要
 ○域内市場だけで地域経済成り立たず
 ○自治体は各産業の稼ぐ力と雇用力把握を
という事でした。
 各自治体は政府の「まち・ひと・しごと創生ビジョン」に沿って、「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略プラン」の策定へ向け動き出しています。しかし両計画とも具体的なプランを示すことは容易ではなく、さらに個別の計画についてはその実施結果を根拠のある数値でもって示すことを求められています。、
 そうした背景の中で泣かぬr先生は次のように指摘されています。「市町村の振興計画を見ると最も欠けていたのは客観的数字に基づく評価指標とそれを読み解く知識と経験であろう」と。また「施策を実施した時に生まれる地域経済効果の定量的把握である」と。
 昨年度文教産業委員会が注目したのもこの点でした。施策の経済効果のシミュレーションや産業間の連関による地域経済への波及効果の把握、そうした視点での施策の展開の必要性を強く感じていたからです。高山市第8次総合計画への政策提言においてもそうした必要性を認識したところです。
 今回中村先生は自治体独自の産業連関表の必要性を説かれる中にあっても、比較的に統計データの得やすい従業者数を使った代替指標である「特化係数」で間接的に発見することができるとされ、さらに先生が開発された「修正特化係数」による分析を提唱されています。
 それを用いて作成したチャート図が上に示した高山市の産業構造分析「雇用力」と「稼ぐ力」です。改めてその代表的産業を見てみます。
高山市の稼ぐ力を持った産業
@家具装備品製造業
A林業
B宿泊業
C協同組合(他に分類されないもの)
D協同組織金融業
E農業
F木材・木製品製造業(家具を除く)
G鉄道業
Hはん用機械器具製造業
I宗教

高山市の雇用吸収力のある産業
@飲食業
A宿泊業
B社会保険・社会福祉・介護事業
C小売業
D医療業
E総合工事業
F飲食料品小売業
G食料品製造業
Hその他の事業サービス業
I学校教育

という事になります。こうした分析からは今後の経済成長戦略や稼ぐ力を持った産業をどう育てるか、又雇用の観点から言ったらその動向を比較分析する中でどの産業を守りながらどの産業を育てねばならないかなどが見えてくると考えます。
ただし特化係数は相対指標であるので比較優位な産業を発見するのには有効だが、経済規模を考慮していない点が和えいます。そうした点は林業のポジショニングに現れていると言えます。
 このほかに基板部門の産業を分析することで、地域の人口を増やすのには基盤部門の雇用をどれだけ増価させればその波及効果で人口が増える、例えば人口を一万人増加させるには基盤産業部門で□□□人増やせばいい、という様な分析ができるとされています。今回はチャート図による稼ぐ力と雇用吸収力についての部分を取り上げて分析してみました。