指定管理者制度の可能性と問題点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
高山市議会議員中田清介 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
−5−第一次公募における指定管理者の指定議決を終わって | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成18年2月2日高山市議会第1回臨時会に於いて、179の公の施設の指定管理者に53の団体を指定する指定議決を可決致しました。 合併により町村から引き継いだものを含め、高山市の公の施設は644と多くの施設を抱えることとなっていました。そのうち移譲・譲渡するものは108施設、直営で管理するもの167施設、指定管理者へ移行するものは残り369施設。そのうち平成18年4月1日から移行するもの245施設、平成19年以降に移行分124施設という方針が発表され、18年6月議会に於いて「高山市公の施設における指定管理者の指定の手続きに関する条例」・9月には「指定管理者制度の導入に伴う関係条例の整理に関する条例」を可決し、238施設を指定管理者制度で管理運営する事となりました。 245施設の内訳は、これまでの経緯から管理委託から指定管理者へ移行するもの87施設、直営から指定管理へ移すもの151施設、すでに指定管理へ移行済みのもの7施設となっていました。 10月11日には公募に伴う基本的事項が示され、全体を71件238施設としてグループ化して募集することとしてきました。 そのうち従来からの管理委託の経緯や、地域事情を考慮して非公募としたものは37件・105施設、公募としたものは34件・133施設です。下にその内容を掲載します。
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運営管理を指定管理者に委ねる施設名と指定管理者はこちらからご覧下さい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
指定管理制度に期待するもの | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
指定管理者制度については、公共サービスも規制改革の対象として取り上げ、官・民の連携の中でその効率化とサービスの向上を目指すと共に、地域産業の活性化を図ろうとする考えのもと、自治法を改正してその導入が法制化されたものです。 公の施設の管理を従来の公共団体や公共的団体以外にも広げ、民間企業やNPO等にまで門戸を広げることにより、公共サービス提供のあり方の中にも、市場メカニズムに基づいた効率的で高品質なものへと変革していく事が期待されています。 本制度の導入にあたっては「全ての事業を公募とすべきか」、「既存の公的団体をどう扱うのか」、「民間事業者に任せて公的サービスが担保されるのか」、等が議論となったところです。 特にその効率化やサービス水準に置いては、「プロポーザルにおいて、市が要求する水準以上の提案を受けることを前提条件とする」と設定し、これをクリアー出来る団体が応募してきたものです。 そうした中にあっては、サービスの向上とその経費についても効率化がはかられるかが選定の大きな要素でありました。しかしながらもう一つの大切な視点は、強固な信頼関係の下で安定した運営をまかせられる団体であるか、その目指すサービスの展開が市民の納得を得て信頼されるものとなるか、この2点も大きな選定の要素であったと思います。 ◎企業経営的手法導入による事業運営に対する期待 今回は制度導入で公募した238施設の内、181施設について指定管理者を指定することが出来ましたが、残念ながら57施設については指定管理を見送る結果となりました。181施設の内容を見てみますと従来から業務委託していた施設を指定管理に切り替えたものもありますが、これまで直営で管理してきた施設を今回の制度導入で指定管理へと移行させた施設があります。例えば「火葬場」・「水道施設」・「簡易水道施設」・「勤労青少年ホーム・女性青少年会館」・「飛騨民族村」・「福祉センター」・「デイサービスセンター」・「温泉施設」・「自然体験施設」・「観光施設」等々です。 実はこうした幅広い対象を指定管理者に委任していくことが、制度導入のねらいと言え、官民のパートナーシップの中で公の仕事を見直し、責任を分担しあう中でその効率化とサービス向上をはかることができるといえます。 今回、企業会計で運営された施設や、観光施設・温泉施設など利用料金制を導入して指定管理へと移行した施設については、民間の企業経営的発想で、今まで以上の運営が期待出来る施設が多くあります。特に観光関連では、役所の垣根を取り払うことで、業界のネットワークを活用したより大きな連携も可能になり、営業活動を活発化させることが可能となるのではないでしょうか。又、従来の企業会計的制約を超えて、予算の重点投資や事業の集中展開等の中に、従来とは異なった活性化への道が開けるものと考えます。特に長期低落傾向にある「飛騨の里・民族村」は、これまでも担当者の努力で、様々な取り組みがなされて何とか持ちこたえてきましたが、矢張り昨今の観光地・観光施設の競争の中にあっては、今回の指定管理への移行が大きな転換点となると確信します。 又、温泉施設などの支所地域の地域振興にも、そうした点では経営感覚を取り入れた発想の転換が必要であり、3セクであっても株式会社は会社です。出資者も役員もそこに働く人達も経営にたいして責任を持つ姿勢・営業への努力目標が必要です。この点においてコスト意識の徹底が活性化への道であるとも言えます。 ◎水道施設における論点と今後の事業運営への期待 次ぎに、安全性へのチェック体制等について議論が高まった、「水道施設」について考えてみたいと思います。 高山市の水道施設については、旧高山市の「上野浄水場」・「岩滝簡易水道」・と旧国府町「鶴巣浄水場」を1グループ、残り8支所地域の簡易水道等を8グループに分けて公募しました。この簡易水道8グループ49施設についての水質検査体制が今回大きな議論の対象となったと言えます。 こうした施設については、水道法に定められる水質検査や技術的な管理運営体制については、少ない役場の人員体制の中では法律どうりの運営管理が難しい面もあり、水質検査については検査機関に業務委託していたのが実情でした。そうした中にあって水道技術管理者は置くものの、維持管理については、コンサルタント会社や、メーカーの支援を受けて、基盤整備部門の職員の兼務体制でしのいできたといえます。 その背景としては、支所地域では地形上も多くの谷筋に部落が点在する為、その集落毎に谷筋に水源を求めざるを得ず、複数の簡易水道を設置せざるを得ない状況がありました。又、平成13年の水道法の改正により、その求める水質基準も厳しくなり、こうした背景から水道事業規模の小さな自治体では、その技術的な運営管理については外部委託するところが多くなってきている現状です。現状では水道事業運営のコンサルタント会社や、多くの水道関連機器メーカー並びに敷設管メーカーなどが共同で出資した事業運営会社が設立され、専門的知識を活かした水道事業の受託を行っているところです。(こうした簡易水道の包括委託の事例調査報告、北広島町の簡易水道委託調査報告はこちらから) 今回は、この多くの水源を持つ簡易水道と浄水場全てを一体管理する提案に基づく応募が3団体より提出され、その中の1グループ(高山官設備工業協同組合・株式会社登用設計・月島テクノメンテサービス株式会社)の提案が採用され指定管理者となりました。 この事は、新市となったことでこれまでの自治体の境を超えての一体管理が可能となり、経費面での効率化が提案出来る要素があったと認識して良いと思います。又、水道事業の特性から、簡易水道面ではその業務の内容に性能発注的要素を盛り込むことで、運営管理の安全性と効率性を共に可能とすることが出来る面があるという点もあります。 水道事業における市民への最大のサービスは、安全安心な水の安定供給です。こうしたことを考えれば民間の団体が水道事業に関わるということは、準公務員的な責任と使命感が要求されることといえ、行政や市民との間に強固な信頼関係を築けなければその委任に答えられないこととなります。その事は指定管理者に指定する段階に置いては、そうした信頼に足る団体であることが第一となり、かつサービスの向上に資する団体であるということになります。議決に際してもそうした点を重要視して可決されたと認識しております。 今回安全面・安心面の保障を市はどう担保していくのかについて、様々な角度から議会において議論となりました。 しかし、指定管理者に業務の一部を委任していくことについては、水道法上の規定する要素をクリアーしていくことが前提であり、、そうした中で水道事業者としての市の関与は残り、責任を持って指定管理者と連携する中で事業運営にあたることを確認したところです。 新市となって多くの簡易水道事業を運営維持していく中にあっては、官と民のパートナーシップで公の仕事としての水道事業を分担しあい、より良いサービスすなわち安全安心な水の安定供給が効率的に提供出来る体制が整ったといえます。 今回の水に関する議論は、今一度公の仕事に対する認識を深めると共に、その内容についての使命感や責任について行政も職員も、議会も市民も問い直す事が出来た認識しています。 今回指定管理者となられた高山管設備協同組合グループ3社は、SPCとしての法人を設立され全国の注目を集める中で指定管理にあたられますが、長年の水道事業に携われた経験を生かし、水道事業者としての高山市と連携を密にして、今後とも市民の満足度を高められる運営に努力して頂きたいと思います。 |
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今回の指定管理制度導入に於ける問題点と今後の課題 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◎公募における課題・並びに財政的問題(指定管理料の算定) 初めての制度導入と言うことで、役所の対応にも様々な批判が出たことも事実です。 今回は多くの施設が指定管理へ移行する候補となりましたが、地域の活動拠点としての公民会施設や交流施設もその候補となりました。 そうした施設は、その性格上地域の社会教育団体等に受け持ってもらうのが適当であるという考えから、新たに団体を設立して頂く中で公募に応じて頂いた経緯がありました。しかしながら一部には経費面で折り合いが付かず、指定管理を見送らざるを得なかったものがあります。それが19グループ57施設の中にある内容です。 その背景は、旧町村地域にあっては直営で管理運営される中にあって、役場の関与が多く今回の指定管理における経費の算定面で、直接にはカウントされにくい間接経費的要素が多くあった為、一律の算定基準には不満が続出したといえなくもありません。 「事業予算の見積もりに甘さが目立つ。熟度が足りない面がある。」と市の財政担当。一方「赤字を出してまで仕事を押しつけられる筋合いはない。」と民間団体は反発する。そうした中で団体設立に奔走した担当部署は頭を抱える状況であったと言えます。 これらの施設についていえば、高山市のいうように「公民館などは旧市内では町内会の自主運営であり、市の関与は極力はずしていきたい。」という思いも理解出来ます。 しかし、支所地域にあってはコスト削減によるサービスの切り捨てと受け止められかねず、行き着く先は施設の整理統合による合理化であり支所地域の切り捨てという極論へと結びつく結果となり、本庁への反発だけが醸成された結果ともなっています。 「他の団体との差別化は出来ない、公平な応募基準を守る中で協議を続けた結果が指定管理の見送りであれば、致し方ない」。「指定管理に移行する前提で条例改正しているので、当面直営で推移し他の受託団体を模索していく」。これが高山市の姿勢です。 指定管理者の公募・選定にあたっては公平でなければならないのは、ゆるがせに出来ない原則です。ただ今回のこうした公民館的要素・交流施設的要素を持った施設の公募にかかる経費の試算については、もっと相手を説得出来る詰めの作業が必要でなかったのか。一年で役員が交代していく団体にあって、赤字を出す事は出来ない事情があります。又、事業運営について支所がアドバイス出来る要素がないのか。地域振興予算を活用した自主事業の運営など、ソフト面での計画立案等に相談窓口としての支所と連携してあたれないのか。そうしたハートの面でのバックアップがあれば、わずかの金額でこれだけこじれることはなく、もっとパートナーとしての信頼関係の構築が出来なかったのかと悔やまれます。 確かに役場が関与した間接人件費等については、財政としてはカットしていきたい要素です。 しかしながら、地域の住民の皆様に信頼されない制度導入は定着することはないし、かえって今回の見送りで反発だけが残ったという形は避けなければなりません。 今後本年6月には第2次の指定管理者の公募が予定されています。第2次分の公の施設については、今より以上に地域性の強い施設も含まれています。そうした中にあっては矢張り地域の信頼を損なわない公募が前提条件です。 今回の公募に際しても、3年間の試行期間として位置づけていく前提でなされました。こうした施設についても運営の裁量幅を広げることや、公募の前提としての仕様書を再検討する余地もあると考えます。 役人の立場からいえば、公の仕事を民間に移行することは御役所の管理基準で渡さざるを得ない。それが仕様書の内容であると言う論理が成り立つかもしれませんが、管理料を支払って指定管理に移行し運営していく施設については、パートナーとしての信頼関係で基準を見直すくらいの幅を持たないと、効率一点張りと言ってまた反発されるのではないでしょうか。第一次分の継続公募や第2次公募については、今一度信頼関係を再構築し、理解を得られるよう努力する必要があると思います。 |
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