交付税の合併算定替えと高山市の地域振興特別予算
2013.02.15:中田清介
合併後の議会が直面する議会改革の現状
 このところ高山市議会への視察が増えています。議会改革への取組が評価されて改革度ランキングで上位に評価されている効果とも言えます。そうした中で一つ気になることがあります。ここに来て今一度の議員定数の削減を迫られている議会が目立つことです。皆さんご承知のように、平成の大合併で議会の構成は大きな関心事の一つでした。それぞれ在任特例や定数特例を採用して対応されたのですが、在任特例では合併後の大増員の後の次の選挙で議員数を削減し、定数特例では増員選挙とあと一回の選挙を行った後、削減した定数で選挙を行ってきました。高山市の場合は定数特例を採用したので、H17年合併直後の増員選挙、H19年の統一地方選を経て、H23年からそれまでの特例定数の36人を24人と削減して実施しています。
 鶴岡市、伊勢原市、山陽小野田市などで議員定数の削減がスケジュールに乗っているようで、その議会関係者からは、目前に迫った問題として高山市の取組を聴取して帰られました。デフレ下の経済的苦境が続く中で、合併後の議会のあり方が市民にどう受け止められているのかを示す現象とも言えるのではないでしょうか。どこももう一段の定数減を迫られている状況です。先日対応させていただいた山陽小野田市では定数削減についての住民投票が行われるともお聞きしました。
 やはり議会と議員の活動が市民に見えないまま、これまでのような惰性で推移する事は許されないといえます。2011年12月末時点で、全国の260の自治体議会が議会基本条例を制定しています(16都道府県、6政令市、152市、86町村)。こうしたことからも行政運営から自治体経営への転換が言われる中にあって、議会はどう関わっていくのかが問われていると言えます。議会改革を通じてもっとその活動を充実させる事が求められているのではないかと思います。今回少し財政的見地から高山市の交付税の動向と地域振興特別予算について検証し、今後の問題点等を見てみたいと思います。
(下段にこれまでの議会改革関連の視察受け入れ状況を示しておきます。)
H24年度議会改革に関する視察受け入れ状況等
自治体議会名 組織 視察目的 人数 対応
7月 13日 宇治市 議会運営委員会 議会改革全般 13 議運正副委員長
18日 小松島市 広報特別委員会 議会広報誌について 12 広報委員長
25日 加賀市 議会活性化特別委員会 議会改革の取組 11 議運副委員長
南九州市 議会運営委員会 議会基本条例について 10 議運副委員長
8月 1日 高槻市 議会運営委員会 議会改革の取組 11 議運正副委員長
2日 滋賀県湖南地区 議長会 政策討論会について 14 議運正副委員長
27日 下呂市 議会改革特別委員会 市民意見交換会等 7 議運正副委員長
10月 11日 鶴岡市 議会改革特別委員会 議会改革について 12 議運正副委員長
12日 和歌山市 事務局 議会基本条例について 2 事務局
19日 牧ノ原市 議会運営委員会 議会報告会のあり方 11 議運正副委員長
23日 兵庫県市議会議長会 議長会 議会改革について 23 議運正副委員長
1月 22日 和歌山県 県下市議会事務局 議会改革について 18 事務局
30日 伊勢原市 会派:新政いせはら 議会改革について 4 議運委員長
2月 12日 八幡平市 会派:しんせい会 議会改革について 6 議運副委員長
13日 山陽小野田市 会派:刷新 議会改革・定数のあり方 3 議運委員長
迫られる合併特例期間終了後の対応
@合併特例期間の交付税算定替えの状況はどう推移してきたか。

H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 累計
一本算定 11,301,269 10,624,097 10,795,401 10,955,329 11,818,777 12,731,065 12,070,435 12,147,558 92,443,931
算定替増加分 3,803,515 3,676,790 3,814,088 4,083,866 4,328,147 4,823,965 4,706,353 5,884,966 35,121,690
合併算定替 15,104,784 14,300,887 14,609,489 15,039,195 16,146,924 17,555,030 16,776,788 18,032,524 127,565,621
 ここでは合併以後の交付税の一本算定と算定替え交付税の動向を見ていただきます。臨時財政対策債を含めた額で見ていただきます。当初H17では約38億円であった差額が、民主党政権下での交付税の増額処置でH24では58.8億円まで増えています。政権交代による自民党政権の方針では交付税額の圧縮が図られる様ですので、(H25地方財政計画 ▲3,921億円、▲2.2%前年比)少しは減るものと思いますが、合併特例期間が終わるH26年度についてはそのマイナス巾が5%となると仮定しても、約55億円の算定替え部分が交付税として交付されることとなります。
 こうした地方に対する手厚い処置が講じられること自体はありがたいことなのですが、あくまでも特例期間だけの処置でありH27年度からは5年の激変緩和期間を通じて一本算定の額まで減らされます。手厚い処置は裏返せばそれだけ多くの交付税の減額を伴うことになります。現在の財政規模は一般会計で予算規模で450億円、決算規模で約500億円という水準で合併後推移しています。財政規模で約11%の財源を削られる訳ですから、行政運営から自治体経営への転換が協調されるところです。
 こうした合併算定替えの交付税を活用して、合併に伴う財政的負担や増嵩する起債残高の償還に充て、合併自治体の体力を強化する事が協調されたのが、平成の大合併のもう一つの面でもありました。
 高山市は合併後職員の削減等で(約100人)経費を削り、起債残高の繰り上げ償還や基金の積み増しを実現でき、経常収支比率が72%まで改善でき、特例期間終了後の交付税減額に備えている状況です。
 それではそうした合併算定替え交付部分を利用した、地域振興特別予算についてこれまでの動向を見てみたいと思います。
これまでの地域振興特別予算の配分
(千円) H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 合計
丹生川 86,551 91,508 85,241 87,022 90,484 89,741 114,099 86,351 730,997
清見 91,648 76,991 69,138 70,958 72,792 69,988 73,357 69,037 593,909
荘川 44,164 51,063 49,043 51,075 51,497 49,217 53,375 51,285 400,719
一之宮 51,449 58,214 55,512 57,075 59,932 57,368 66,165 59,692 465,407
久々野 71,624 78,124 74,044 78,057 80,107 75,856 79,465 75,359 612,636
朝日 54,277 61,127 58,171 60,048 60,500 56,875 61,640 58,308 470,946
高根 37,066 42,056 40,097 42,018 44,244 42,396 44,476 42,319 334,672
国府 96,707 118,745 156,955 140,977 108,239 104,199 109,579 104,289 939,690
上宝 80,171 89,635 86,776 89,817 91,395 88,707 87,435 83,297 697,233
613,657 667,463 674,977 677,047 659,190 634,347 689,591 629,937 5,246,209
 地域振興特別予算は、合併協議の中で支所地域の振興に充てるため設けられたものです。合併算定替えの増加分の中から一定割合を算定し、その額を人口割り、均等割、基準財政需要額割で配分するものです。
先程見ていただいた算定替え増加分には、臨財債も含まれていますのでこれを除いた額が以下のとおりとなります。

(千円) H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 累計
算定替増加分 3,090,583 3,028,009 3,225,453 3,532,515 3,472,454 3,679,340 4,175,326 5,478,138 29,681,818
 導入当初の説明では、「算定替え増加分」の1/4程度を地域振興予算に振り向けることとし、高山市分を引いた金額を配分するという方針でした。ちなみに合併前の10市町村合算の交付税額の割合でいうと、高山市は21%ですので、その分を引いた額を配分額の目安としていました。
H17で説明します

算定替え増加額の1/4 高山市分除いた配分額
3,090,583 ×0.25 772、645 ×0.79 610,389
 こうした内容で配分してきましたが、H22以降民主党政権下で地方に手厚い交付税処置がされる中で、算定替え増加分も増えていますが算定式とおりには配分されていません。本来H22で7億2千万、23年で8億2千万、24年では10億8千万位になっても良いのですが、交付税の増嵩がなかなか事前に読み切れないことや、配分額の使途が年数を経過する中で絞られてきたこと等から、財政当局の裁量で6億円台で調整されているといえます。一定のベースで推移していくことが特例期間終了後の影響を大きくしない配慮ともいえます。
特例期間終了後の課題。

激変緩和の5年間モデル
@一本算定の交付税:産業振興が不可欠
 一本算定と算定替え部分との差額、この減額幅は合併論議の中では合併効果であるといわれてきた部分です。こうした財政のスリム化を合併効果に転化できるかが問われていると言えます。現状での経常収支比率72%、基金残高340億円、起債残高450億円は合併自治体の中では優良な財政運営といえます。合併算定替え部分を活用した模範的な負債の圧縮と基金の造成を達成しているといえます。財務諸表を活用した財政分析でも優良な数値が出ています。
 しかし算定替え増加分が54億円を超えている現在では、激変緩和の5年間を過ぎると普通交付税額は100億円すれすれということになり、現在の財政規模500億の一割が減額されることとなり、人口現象か社会の中で扶助費等の増加分をこなしきれるかが財政課題となります。義務的経費といわれる、人件費、扶助費、起債償還額はもちろんのこと、様々な行政経費の見直しが必要となります。しかし削れる部分は削れても後ろ向きの対応と言うことになり、経済の成長が今後の市政運営の最大鍵となるります。産業振興による税収増を図る必要があり、産業経済戦略会議の設立などで中長期の産業活性化へ舵を切らなければならない時と言えます。

A地域審議会以後の体制をどうするか:協働のまちづくりと地域自治のしくみ並びに財政的支援について
 これまで見ていただきましたように、地域振興特別予算は予算ベースで8年間に52億円を配分してきました。算定替え増加分として548億円を交付税処置されている中にあって、9.5%を配分してきたことになります。合併の特例期間を通じての地域振興特別予算は、9町村の特色ある地域づくりを推進し、自立を促す産業面での活性化を後押しする処置として機能することを配慮したものでした。今後こうした財政的支援を続けるのかも含めもう少し突っ込んだ議論が必要です。特例期間は後2年と迫っています。議会の役割としてこうした面での評価と検証を迫られることになります。
 平成23年12月議会の一般質問で
「市長の「お約束」との関連で考える今後の地域自治のしくみと財政的支援について」
 (ア)これまでの地域審議会は住民自治を担保する組織であり得たか
 (イ)今後は自治法上の地域自治区と地区協議会なのか、
                    独自条例制定による地域自治協議会なのか
 (ウ)地域振興特別予算の全市拡大なのか、交付金化による地域コミュニティの
                    活動資金なのか。地域担当職員との関係で考える
 (エ)制度設計の為、有識者を交えた「熟議」の場を設ける考えはあるのか
 (オ)地域コミュニティづくりはまちづくりの基本。
                     コミュニティ再生への「参画と協働」の指針は
 (カ)未来志向のまちづくりにおける方向性は


と質問しています。これは特例期間経過後の地域自治の仕組みについて述べたものです。この時は時間配分が上手くとれなかったため中途半端な質問となってしまいましたが、財政的支援も含めた今後の地域自治組織のあり方は今一度議論しなければならない内容であると思っています。

今回、合併特例期間を通じて増額される交付税と、それを活用した高山市独自の地域振興特別予算について数字面から報告させていただきました。次回はこれまでの使途や監査委員からの監査報告など調査し報告したいと思います。
H23年度県下21市:経常収支比率と実質公債費比率による比較
 H23年度決算から岐阜県下21市の比較をあげておきます。実質公債費比率は自治体の起債償還にかかる年度ごとの負担割合であり、経常収支比率は単年度の財政余裕度を表します。県下の平均値が実質公債費比率が10.2、経常収支比率が86.7となっています。平均値で線引きすると、右上のゾーンは単年度の財政の余裕度が低く借金の返済に多くの資金を要する自治体といえ、左下んPゾーンほど財政に余裕度があり借金返済も少なく済んでいる自治体といえます。特に経常収支比率が高い自治体ほど、合併算定替え終了後の財政運営は厳しくなるものと思います。今後特例期間終了後の財政運営について議論が高まるものと考えます。ゾーン