高山市職員住居手当と高山市UIJターン家賃助成の比較を通じて考える
H24.03.10
高山市職員住居手当 高山市UIJターン家賃助成
対象者
月額12,000円以上の家賃を支払っている職員 UIJターンして就職した35才以下の若者
助成内容 ・23,000円以下の家賃の場合
 家賃から12,000円を控除した額
・23,000円を超える家賃の場合
家賃の月額から23,000円を控除
 した額の1/2に11,000円を加算 した額(ただし控除した額が  16,000円を越えるときは16,000 円)
・支払った月額の家賃(共益費等を除く)と当該借家等に附属する駐車場の借上料の合算額の3分の1 以内の額で、15,000円を限度
45,000円の家賃
の場合
45,000-23,000=22,000
22,000×1/2=11,000
11,000+11,000=22,000
45,000×1/3=15,000円
助成期間 期限なし 3年
根拠 地方自治法第204条
(条例で定めるところにより各種 手当てを支給することが出来る)
・高山市若者定住促進事業補助金交 付要綱
予算等 H23予算約2,900万円
H24予算約2,600万円 
 
H23予算:約3,300万円
H24予算:約3,300万円
対象者 対象者86人 利用実績 H21:87 H22:64  H23:76

 先日の3月議会一般質問で松本議員が問いかけた「職員住宅手当の廃止」問題の概要です。
地方自治体は国家公務員の給与に関する法律に準拠する形で、給与手当てを支給しています。その根拠が地方自治法第204条です。

第二百四条  普通地方公共団体は、普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員、委員会の常勤の委員、常勤の監査委員、議会の事務局長又は書記長、書記その他の常勤の職員、委員会の事務局長若しくは書記長、委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない
○2  普通地方公共団体は、条例で、前項の職員に対し、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、任期付研究員業績手当、義務教育等教員特別手当、定時制通信教育手当、産業教育手当、農林漁業普及指導手当、災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当を含む。)又は退職手当を支給することができる。
○3  給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 ご覧のように給料及び旅費は義務規定。各種手当ては出来る規定となっています。

これを受けて高山市職員の給与に関する条例は以下のように規定しています。

第3条 職員の給与は、給料、初任給調整手当、地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当、時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当、宿日直手当、管理職手当、管理職員特別勤務手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、災害派遣手当、武力攻撃災害等派遣手当及び退職手当とする。

(参考)<地方公務員の給与の体系と給与決定の仕組み
     <人事院勧告のポイントH23年9月
今回の問題提起と若者定住促進政策の今後
 今回の松本議員の問題提起は、高山市の今後の産業経済対策としても大切な視点であると認識しています。
 高山市の生産年齢人口は人口減少化の中で減少するばかりです。




 上記グラフでもおわかりのとおり、人口の減少化進展で、高齢者の増加と生産年齢人口の減少が様々な問題を提起しています。生産年齢人口の減少は地域の総所得の減少とそれに伴う消費を減退させ、地域の活力を奪っていくことになります。高山市は基幹産業たる観光により域外からの消費を取り込むことで発展してきましたが、観光消費額も頭打ちから減少に転じており、UIJターンによる若者の定住促進に力を入れなければ地域の活力は低下していくばかりです。
 今回の職員住宅手当の問題は、私も廃止も一つの方策であると考えます。元々地方自治体が準拠している国家公務員の住宅手当の問題ですが、転勤を想定した国の住宅手当と連動して高山市のような地方自治体の公務員に、一律適用する必要があるのかとの指摘もあります。しかし地方自治法が国に準拠する「出来る規定」を定めている中では、どの地方自治体も横並びでこの規定を適用しています。県下各市を見ても国の定める上限27,000円と同額を上限として明記しているところは岐阜市、大垣市、多治見市、関市、中津川市、美濃市、瑞浪市、恵那市、美濃加茂市、土岐市、各務ケ原市、可児市、山形市、瑞浪市、飛騨市、郡上市、下呂市、海津市、です。同様の内容を計算式で示しているところは羽島市、本巣市です。
 全てがまさに横並び。上限額が決まっているので地域の事情はそれで調整していると言えなくもありませんが、県下でも圏域によって住宅事情は様々であり家賃水準もバラバラな中で、全て一律で横並びというのはどういう事かと感じます。
 今回高山市の職員住居手当を廃止しても(予算2,600万円)、UIJターン家賃助成(予算3,300万円)を拡充せよとの主張でしたが、給与の官民格差が顕著な地方にあってはそれぐらいの思い切った政策こそが必要だと思っています。勿論家賃助成だけが定住促進策ではありません。UIJターンの前提となる職場はあるのかという問題があります。又子育てにお金のかかる世代にとっては子育て環境の充実は欠かせぬ課題です。そういった意味では高山市の子育て支援は充実していますので、こうした家賃助成と共に雇用の場の確保が重要となります。
 現状では高山市の就業構造を考えたとき、都会のような職場環境にないのも確かです。そのことが若者の都会志向を増大させていると言えます。

 高山市の現状は第3次産業依存、第2次産業で多くを雇用できる社会ではないということです。観光関連やサービス業、商業などでの門戸を広げる。農業での新機就業を拡大していく等で対応せざるを得ない状況です。その為の助成制度は各種準備されていますが、制度間の連携や総合調整など採れていないのが現状です。職員住居手当とUIJターン家賃助成との格差是正も手を付けざるを得ないでしょう。
 行政が新しい施策を要求されたときの決まり文句は「金がない財源がない」ということのようです。財源はあるじゃないか、自治体横並びで支給している職員の住居手当の予算を回すだけで、高山市にとって最も必要な若者定住への制度を拡充することが出来る。そう主張された今回の質問内容は、様々な意味で議員の鑑となるような提案ではなかったかと思います。高山市は職員の住居手当を廃止する考えはない。そのこととは別枠で助成制度の拡充は考えていきたいとの答弁でした。生ぬるい煮え切らない答弁であったと思います。
様々な意味で都市経営への取組が要求される時代にあって、若者定住促進は今後の産業経済部門の大きな戦略の一部です。ここでも役所の産業経済における戦略部門の必要性を感じます。
 私は今回、中低層のまちなみを維持することで収益性の高い中心市街地をを形成し、質の高いサービスを求める客層を引きつけることで持続性ある中心部の商業とそのエリアの発展を促し、またそれを支える循環型交通体系との連動によるまちづくりの可能性を述べました。踏み込んだ答弁など期待はしませんでしたが、現状を打破してまちの将来像を模索しなければ、この転換期の高山は守れない。持続可能性を探り大胆に政策を提案していくことが求められていると痛感しています。
岐阜県内UIJターン家賃補助支給額等の比較
自治体名 支給額(月額) 期間 総支給額
岐阜市 20,000円 1年 24万円
美濃市 10,000円 2年 24万円
飛騨市 15,000円 3年 54万円
下呂市 20,000円 1年目 48万円
10,000円 2年間