高山市小中学校の2学期制への移行についての論点B
高山市の前後期制移行への説明資料と金沢市新3学期制への転換に対する説明資料の比較
 これまで高山市教育委員会が表明した、高山市立小中学校の前後期制移行(2学期制)ついて、論点@でこれまでの経緯についてみていただきました。

 また、論点A「2学期制の議論と3学期制への復帰」では、全国に広がっている3学期制への復帰状況についてみていただきました。
 論点Aで見て取れるところは、2学期制の導入は平成15年頃を境に学校週休2日制への対応として始まっており、特に都市部での導入が多かったと言えます。
 同時に2学期制導入に際しての狙いと目標といった点では、今回の高山市の説明にあるような理由が多かったと言えます。又、平成17年前後の市町村合併でも合併自治体内での制度の統一から導入されたところも目が付きました。
 
 今回は金沢市の3学期制へ復帰する際の(平成26年度)検討経緯と説明資料を、高山市の今回の2学期制移行への説明資料と比較して見て頂こうと思います。
 金沢市は平成16年に2学期制へ移行しており、全国の2学期制導入自治体のモデルともなったところです。今回の見直しでどんなところが議論になり、どのような検討作業を通じてその内容を児童生徒はもちろん、保護者や地域へ周知していったかなどを見て頂くことが出ると思います。

 比較資料はPDF資料でご覧いただきます。(印刷書式はA-4横置き)こちらかご覧ください。
高山市と金沢市の比較資料
比較を通じて見えてくるもの
まず両市の相違点を説明資料から項目別に見てみます。

あくまで高山市はこれから2学期制を導入するという視点からの説明。

金沢市は2学期制を導入したが、新たな3学期制で対応するという視点での説明です。

   
比較項目 高山市 金沢市
@目的 子どもに向き合う機会と場面を確保する。
「すべての子どもが安心して学び生きる力を育む教育」を推進する為の見直し。
児童生徒一人一人が新たな課題や目標を明確に持って次学期・次学年に臨めるよう長期休暇を学期の節目とし、学力の定着状況を確実に情報提供する。もって児童生徒のより一層の学力の向上を目指す。
@の検証ポイント あくまで子供と向き合う機会の充実 長期休暇を学期の節目とし学力の向上を目指す。
A見直し内容 前期:4月1日〜10月の第2月曜
後期:10月の第2月曜の翌日〜翌年3月31日

夏季休業、冬季休業、学年末及び学年始休業は変更しない。
学びのステップを大切にした新たな3学期制
 学習の支えとなるものを、学習面と生活面でとらえ、  それぞれの学期を「基礎」「向上」「充実」と教師が意  識して指導に当たる。
Aの検証ポイント 先行自治体が導入した2学期制と同じ内容。長期休業等は変更しない内容。 新たな3学期制では、子供たちがそれぞれの学期で身につけるべき学習内容のより一層の定着が期待され、学力向上につながる。
B見直し期間及びその経緯、工程表 H27〜H28.7 :校長会が前後期制について研修

H28.9.26 :校長会が教育長にH29年からの前後
        期制への移行を要望

H28.10.3 :教育委員に校長会からの移行の要望
        を説明

H28.10.11 ::市教委が校長会に前後期制への考え
        方及び進め方につき説明

H28.10月 各学校長が教職員に前後期制の考え
       方を説明

H28.10.24市教委、連P会長に29年度から前後期
        制導入の考え方を説明

H28.10.26教育委員に今までの経過と概要を説
        明
市教委、連P本部役員に概要説明
H28.10月  :各学校長単P本部役員に前後期制の
        考え方について説明


H28.11.24 :市教委定例会にて「意志」決定
       :同日各学校長より保護者に、H29から
        前後期制実施を書にて周知

H28.12.16 :市議会文挙産業委員で協議

H29.2月 :市教委定例会にて高山市小中学校管
       理規則の一部改正予定
H24年度:金沢市立小中学校学期制検討委員会設置

H25.5月 :「金沢にふさわしい学期制のあり方」提言

H25.6月:新たな3学期制の基本方針の策定

H25.7月市教委、校長会議にて基本方針配布説明

H25.8月:各学校で新たな3学期制の学内周知
     :教育課程再編成の準備に入る

    :通知表の検討準備に入る

H25.9月各学校で学びのステップを大切にした「新た
      な3学期制」の保護者への周知


H25.11月:教務主任連絡協議会でH26年度」教育課程
       作成の留意点等確認


H25.12月:金沢市小中学校管理規則の改正
H26.1月リーフレットの配布による保護者・一般市民
       への周知


H26.4月 :平成26年教育課程の提出
H26.5・6月:平成26年度通知表様式の完成
Bの検証ポイント 校長会が教育長に要望してから2か月で市教委は「意思決定」し、同日各学校長は保護者にH29からの2学期制移行を周知。 H24に学期制検討委員会を設置、検討委員会は一年後H25.5月に「ふさわしい学期制のあり方」を提言。それを受けて「新たな3学期制の基本方針」を策定。その後の対応も十分な時間をかけて学校内、保護者、地域への説明を進めている。
C期待する効果と新たな3学期制ンポイント 子どもが長期的な目標達成に向けて、なすべきことを自ら考え行動する力を一層身につけることができる

・子どもが目標達成に向けて努力する期間を
 長くし、細やかに変容を見届け、懇談の機
 会と場面を増やす等して保護者と連携を密
 にすることができる。


・飛騨地区の6高等学校及び全国の大学等が実
 施している前期・後期制と同じにすること
 により、子どもの生活リズムをスムーズに
 移行できる。


・1年間の行事や指導計画を見直し、年間の登校
 日数、長期休暇の期間・時期は変えずに年間の
 授業時間や相談時間を増やすことができる。
新たな3学期制のポイント。
1.通知表が替わります
 ・1,2学期末通知表では、それぞれの学習内容の習    得状況を評価。
  ・学年末通知表では学年の学習内容の習得状況を   評価
2.夏休みなどを学習期間として活用します。
  ・サマースクールや補充学習を実施。.
3.10月の活動が充実します。
 ・秋のさわやかな時期を生かし落ち着いて学習。
 ・運動会や文化祭など、学校行事に向けた取り組み   が充実。
4.学びと育ちのつながりを大切にします。

 ・学年末通知表で1年間の成長や課題を自覚、春休  みへの取り組みや次学年への目標を明確に。
 ・中学校進学がスムーズに行われるよう小中一貫教   育を稚拙にします。
Cの検証ポイント 長期休業等は変えないで、子どもが長期的な目標達成に向かうのを見届け、子どもや保護者と向き合う機会を増やす。地域の高校や全国の大学と同じ制度の導入で子供の生活のリズムを整える。 短いスパンでの評価を学習内容の充実へつなげる。夏休みなどを学習期間として有効活用。10月に学期の区切りがなくなり授業や学校行事が充実。学年を通じた評価が進級・進学への意欲や目標をもたらす。
その他@ 評価の充実
評価に当たっての基本的な考え
 学びのステップについては、あくまでも教師の指導意 識である。通知表の評価はそれぞれの期間の学習内 容の習得状況を評価するもの。
通知表による評価
 通知表によって学期末や学年末評価を情報提供。
 一貫制ある評価として捉えられるようにする
 
その他A 教育課程編成
 ・10月に学期の区切りがなくなり、学習を連続・継続   して行える事が可能となる総合的な学習の時間   や学校行事等の充実でより特色ある教育課程の    編成に努力。
 ・補充的・発展的な学習や長期休業中の学習機会の  充実で、教師はそれぞれの時期のを「基礎」「向上」  「充実」「課題克服・伸長」と意識して指導に取り組む  。
その他B 学校2学期制の成果を継承し発展させる。
引き続き授業時数の確保に努める。
3学期は学年のまとめや次学年への準備期間と して大切、教育課程編成の工夫をする。
運動部は従来から3学期制のリズムで活動、学  習面、生活面、部活動の面で一体的に指導する 。
・保護者や地域へ新たな3学期制への周知を行い 、その為のリーフレットを作成・配布する。

 今回は金沢市が平成16年に導入した2学期制から、平成26年に新しい3学期制へ転換した際の説明を、高山市の今回の2学期制移行表明の説明と比較してご覧いただきました。
 金沢市も3学期制へ復帰する根底には、国の教育方針が「ゆとり教育」から、学力重視へと舵を切ったことが見て取れます。論点Aで見ていただきました大阪府東大阪市の資料でもその点が説明されており、他の自治体の説明の中でもその方向性が打ち出されています。

 今回の事例比較で見えてくる相違点のもう一つは、高山市はなぜこんな短期間で意思決定し、学校長から保護者に周知してしまったのかという点です。教育委員会が決定したことを知らせおくという「通達」と受け取られても仕方ありません。
 教育委員会内部の権限に属すること(高山市学区管理規則の改正)であるから、外部の干渉を受ける問題ではないとしてこのような手法で行ったものと受け止めます。
 金沢市の事例では2年をかけて内部の検証作業を含めて準備した上で、新3学期制への政策転換を決定し、学校内外への周知を徹底しています。

 論点Aで見て頂いた新潟県長岡市は、約10年前に2学期制への移行を実施していますが、ここも平成16年に検討委員会を立ち上げてから2年間をかけ、周到な準備期間を設けて周知し実行しています。

 いずれも十分な期間をかけて多くの人の意見を聞き、内外の関係者に周知して実施する手法を取っています。
政策を転換するという作業はそれなりに時間がかかるものであり、教育政策の転換では今日的的背景として、児童・生徒はもちろん、保護者や地域に説明し了解を得る必要があります。
 それは学校経営の背景として開かれた学校・開かれた教育を、自ら学校が、教育委員会が説いてきたことなのですから。

 今回の高山市教育委員会の対応は、唐突と受け取られ拙速であると言われても仕方ないのではないでしょうか。もう少しその背景にも迫ってみたいと思います。

 論点@で見ていただきました、文教産業委員会が市長あてに請求した質問書(平成28年12月20日)の回答は
1月中旬に出てきます。今後そうした内容も見て対応していきたいと思います。