倉田議員令和4年9月議会一般質問添付資料で読み解く
火葬場新設問題に関する疑問点と改善すべき役所の体質
和4年9月14日の一般質問における質問通告は三項目あり、その1と2は火葬場新設問題に関する質問であった。その内容は以下の通告内容であった。
1.政治と宗教の相関に係る新市長の見解について
2.新聞社による新火葬場建設計画のアンケートでは、新市長は市長候補者として「再検討の余地あり」とされ,「経緯や意見の整理」や「必要なら実施計画にこだわらない」
と答えているその発言に対する責任と誠意ある実行につい
今回は通告の2の内容について取り上げ、その問題点を探ってみた。

まずは今回の一般質問の内容を、私的な反訳で文字起こしをしたものと、添付資料について見てみたい。

倉田議員質問通告2の質疑応答全文
こちらからご覧ください
当日提出された添付資料
一般質問添付資料@ 新火葬場建設計画 進捗時系列 はこちらご覧ください
一般質問添付資料A 新火葬場建設計画 創政・改革クラブ市民アンケート集計結果はこちらご覧ください。
一般質問添付資料B−1 新火葬場建設計画 各種収集データはこちらからご覧ください
一般質問添付資料B−2 新火葬場建設計画 市内における積雪深測定結果はこちらからご覧ください

「市長選を通じて分かってきた市の用地取得に対する見解の欺瞞性」
  倉田議員が一貫して追及してきた市の見解の不誠実さは、市長選を通じた中日新聞の取材記事からもろくも崩れ去ったと言って良い。候補地選定の最後の決め手は用地の無償提供であったとするのは、検討委員会の委員の間でささやかれてきたことでした。中日新聞の取材に際して教団関係者はこうも述べています。「市の担当課が教団を訪れ 『火葬場の土地がなくて困っている 』 と窮状を訴えたので、 教団は所有土地三カ所を提示した。そのうちの一つが大萱で、教団は「大萱は地形的に適さないかなと思ったが 、市はそこを選択した」というものです。また市が教団からの 土地 寄付申し出を検討委員会へ報告するときには、 「教団として地元住民の了解がなければ寄付できない 」と市に伝えたが、「住民も了解しているし説明会も行って いるので大丈夫だ」と市に言われ、教団は(土地寄付の)申し出書を提出した 」と

 
これまでの市の言い分は「検討委員会に言われ、教団に問い合わせをするまで寄付を働きかけてはいない。有償か無償かは聞かなかったが、教団が所有土地の利用提供を申し出た」というものでした。
 この点については、教団は「無償提供は伝えたつもりだったが、市がそう言うのなら自分たちの伝え方が悪かったのだろうと」と答えており、倉田議員は「寄付も知らないのに特別の意図があって争うはずはない」 としたい 市の言い分との違いをソフトにくるんだ言い回しだった」と 感想を述べています。しかし、「8 月 20 日に 掲載された中日新聞の記事 の中で、新聞社の取材に対し崇教真光教団は「土地の寄付を決めた理由と経緯に関して、市当局の担当者より話を頂いた」。と答えられています。市から土地寄付を持ちかけられたという確かな回答であったと、記者にも確認を取らせて頂いた。として質問を続けていました。その上で「このことはある時期から市に歩調をあわせるその前に教団が言っていた事。丹生川住民が 最初に 教団から聞き取っていたことと完全に一致します。 しかしながら市は全面否定を続けて き て、全面否定を続けてきたことであり、これまでの言動を 根本から覆す画期的な 証言答弁 です。この新聞証言により 候補地選定の当初から 市にその意図があったことが 明白となり、 市の選択の公平性は崩壊したものと受け止めています。丹生川候補地ありきの強引な理論展開とも符合します。この点以外に市の発言の不整合と迷走ぶりはこれまでも議論の俎上に上げてきました。全市民、検討委員会、 議会等の信頼を裏切る事にもつながる事案に対し、田中市長にはご自身の『経緯や意見の整理 』 において市役所の中の身びいきと採られないしっかりとした検証を今後頂きたいと 考えます 。それについての見解を伺います。」と答弁を求めています。
 それに答える形で田中市長は次のように答弁しています。「もう一度経緯についてはしっかりと検証させて頂き たいと考えています。その 事実関係をはっきりさせて頂いた上で、火葬場の事業をそのまま進めるのか、或いは立ち止まるのか、そういったことを判断したいと思っています」と


 
続いての通告事項A番、「検討委員会が三候補地を答申した後は、市がフラットな目線で最終候補地を選ぶとしています。そこで市が最重要要件としたのは、景観上人目につかない場所でした。私たち創政・改革クラブは「市民が望む要件」とは本当にそれなのか、最終選考の基準は市民の思いが行政の 都合より は優先されるべきではないのか」として、創政・改革クラブが行った「市民アンケート」とその結果についての検証を基に質問を続けています。
 この点については「具体的には資料、添付書 2 ですけれども、その一つ目と言いますか1点目として、市が候補地の最重要要件とした「人目につかない場所」というのは 、 市民感覚から根拠がきわめて薄いばかりでなく、亡くなった市民の尊厳 に対する 市の感覚にむしろ憤りを感じていると い う市民が多かったこと、2点目として 丹生川候補地は火葬場として遠くて不便だと言う声が多かったこと。それについては以前に示した「人口重心表示図」や私たち の 実測の「到達所要時間表」に加え 新( 添付) 資料 3 として 、行き来に伴うCO2の排出量比較調査表も検討させて頂きました。3点目として大萱候補地への経路が特に冬期は非常に危険であると感じる市民が 大変 多いということ。これについては市の道路建設においての斜度基準 8 %未満を大きく超える箇所が複数箇所存在している 調査結果資料、また市の維持課発表の積雪量の 比較調査 結果 資料も 資料 3 で示させて頂きました。4点目、特定の宗教団体の関与は避けるべきだと 考える市民 が多数あること。
以上4 点に加えて、なぜ市はこの件に関しいろいろ事実を隠そうとするのかという点、新火葬場の建設検討委員を務められた外部専門知見のお一人でさえ、答申後の経緯から当時十分な 情報を市から 与えられていなかったと いう事例に ついての ご 不満を 、 公的な場で発言されたという ような ことを聞いて います。 これらについて是非新市長の「経緯や意見の整理」の中で身びいきにならない確たる ご 検証を頂き、今後の誠意と責任ある行動に繋げて頂きたい」と質しました。田中市長からは「今後新火葬場の建設を進めるに当たりましては、先ほど申し上げしたように 誠意であるとか様々な意見、 或いは議会のこれまでの対応やって頂いておりますし、勿論検討委員会の答申も出ておりますので、あの丁寧に対応する中で課題をしっかり洗った上で 事業を進めて いきたいとしておりますので、決して身びいきとかそういったことは
考えておりません」。と答弁があったところです。

この問題の本質は
  @「高山市はなぜ丹生川候補地ありきの強引な理論展開に持って行かざるを得なかったのか」
  Aその為の「発言の不整合と迷走ぶりはこれまでも明らかであるのに、なぜこれまで迷走を許してきたのか」
です。

その原因と今後の方向性を探ってみます。
委員会審査の未熟さと議会の責任
任委員会は福祉・文教委員会です。手間暇をかけて審査と調査に時間をかけておられました。しかし最後にきて候補地の選定についての疑問を行政に投げかけられ、その回答が的外れであると指摘されたのであるが、それ以上の回答に行政は努力することはありませんでしたし、委員会でもそれ以上の議論の深掘りはできませんでした。(最後まで倉田議員の抵抗はありましたが)。委員会では協議の段階では疑問点がある内は結論を急ぐことなく、情報を共有して合意を目指して努力すべきです。
当時の委員会を傍聴していた私は、その印象についてHP上でこう述べています。
「火葬場の候補地選定に関して4つの問題から解答するように求められた行政は、牽強付会な『景観重視』の回答で方付けただけの不思議な議論を展開して片付けていたと感じました。それを受けて「はいわかりました」と答えるだけで良いのか、議論の深掘りができていない」と。我々が質した疑問点に答えてくれたからそれで良しとされた委員もおられたのだが、肝心なのはその中身を吟味する事でありその審査能力の問題です。
 また前日の朝日新聞掲載の多事奏論では「あなたの意見には反対だが、あなたがそう考える理由はわかった」そのプロセスも公益」の一部だとする見解を示していましたが、その指摘は議会の議員間討議で重視する視点です。合議機関としての議会の勤めです。しかし「あなたがそう考える理由」をわからせようともわかろうともせず、結論ありきの予定調和で締めくくる事しか考えないのでは、議会基本条例に盛り込んだ委員会の深い審査やその前提となる論点整理をなめきっているといえるのでは? 議会基本条例に則ったあるべき姿について真摯に学び直されたい。」と。
 委員会審査にも行政の説明責任についても課題の残る『後味の悪さ』もあった審査でした


 「協議はあくまで合意を目指して整えるもの」です。「相手が納得可能な説得力をもって説明に努力する事は行政マンの必須課題」なのです。的外れな説明しかしていなかった点で行政は説明責任をを果たそうとしなかったし、委員会にも審査や協議という点での運営に稚拙さが表面に出てしまった。

 想定どうり行政はこのこの委員会での議論で、委員会は認めたものと解釈してしまいます。

市長選挙に絡み中日新聞の「
難航する新火葬場建設
」が報道したように
 「高山市で十二年前から懸案となっている新火葬場の建設問題。市は二〇二〇年に市議会で、市内の三建設候補地から、丹生川町大萱の丘陵地帯の土地に絞り込んだと説明した。だがその後、地元住民や市議らの反対意見が相次ぎ、現時点で建設地として正式決定する見通しは立っていない。」
という状況です。
新火葬場建設検討委員会とは何だったのか 調査不足とその権限、十分な説明資料は提供されなかったの
検討委員会は次のような設定で当初組織された。
有識者5名、各種団体代表33名、公募委員3名あわせて42名という大所帯。
 その役目は  
・委員会は、委員会設置条例の施行前に実施した新たな火葬場の候補地の選考方法を検証するとともに、次の事項について検討し、
  市長に提案する

1. 新たな火葬場の基本的な構想に関する事項

2. 新たな火葬場の候補地の選考に関する事項

 平成29年から15回の協議を重ねられ、まず平成29年3月には基本構想を策定し答申され、令和1年6月3日には最終答申(2件を除外、3件に順位付)を提出された。
市は令和2年には答申に基づく候補地3件の中より丹生川町大萱地区を選定、同11月19日の福祉文教委員会へ協議をかけ、翌年令和3年1月21日に再協議された。
(そうした中で発表されたのが令和 2 年 12 月 14 日付の創政・改革クラブの「高山市の火葬場建設候補地の選定に対する会派としての考え」であった。)
 市は丹生川地区の市民説政会の場で次のように説明している。「市は、検討委員会の検討結果を精査するとともに、インフラや道路整備の経費を検 討し、検討委員会の検討結果と総合的に判断する中で、建設地案を決定する。多くの 委員で丁寧なプロセスを経て答申が出され、尊重すべきものと捉えている」と。
 答申までの検討委員会の皆さんの献身的な協議については感謝するものです。

 しかしである、有識者として専門家5人を含む検討委員会を組織しながら、私たちの会派が指摘した各種収集データによる比較(人口重心表示図や、積雪深比較表、道路縦断勾配による最大斜度比較表、co2排出比較、到達所用時間等)がなぜ検討の範囲に入らなかったのか。こうした視点での検討は必要ではなかったのか。いや検討したというのならなぜ私たちの会派の意見表明に多くの市民から反応があったのか。(新火葬場建設計画市民意向調査・まち協地区別全意見
 有識者は著名な専門家の皆さんである、素人同然の私たち議員が指摘することぐらいは、容易におわかりになるはずと思う。行政は検討委員会に必要・十分な資料提供をしてきたのか。それを活用した全体像を捉える情報を出し惜しみしていたのではないか。
 倉田議員は質問のなかで「新火葬場の建設検討委員を務められた外部専門知見のお一人でさえ、答申後の経緯から当時十分な 情報を市から 与えられていなかったと いう事例についての ご 不満を 公的な場で発言された」 とも指摘しています。行政がなぜそこまでして丹生川町大萱地区の立地にこだわるのか、なぜここまで迷走を許してきたのかは今後検証を求められるものと認識している。その先は「情報共有」という問題と役所の体質という問題に行き着くのかなと思います。
3.行政内部の体質を改善し、自治体経営を正常に機能させるためには

 今まで見てきたように、迷走する新火葬場建設問題ですが、いろいろな意味で今後検証していかなければならない問題を含んでいます
まず第一点は先に述べた「情報の共有」という問題です。合成の誤謬 という言葉があります。正しいことを足していけば正しい結果が返ってくる(NOKA)
。どんな条件下でも常に正しい結果が返ってくるわけでもない事に結びつくというものです。議論の全体像を整える前提は、その問題に対して正しい情報が、必要・十分なだけ提供される条件下で議論されたのかの問題です。ミクロの視点では正しいことと映っても、全体像を俯瞰してみた場合には、どうしてこうなってしまうんだろうということです。今回の問題でも言えることではないでしょうか。これでは正しい行政運営や行政経営というものには結びつきません。

政策というのは行政内部で「政策調整会議」という協議の場を経て決定されてくると言われています。合成の誤謬という観点から言えば、何らかの判断があってそれを優先して政策を誘導しているのか、上司に対する忖度があってそうなってしまうのか、ものを言えない風土というものにメスを入れなければ、役所の体質は変わらないのではないかと思います。
  
議会との意見交換の場で「決定できない議会に変わって決めてやったのは我々だ」、「我々が決めたものに対してなぜまた反対を言い出すのか」などの発言をされる経済団体の皆さんもありました。審議会や検討委員会などの審議機関は、行政に対して答申をするのであって(検討課題について)それが使命です。それ以上でもそれ以下でもありません。それを加味して市長は議会に提案するのです。団体意思の決定を下すのは議会です。議会はその内容に疑問があれば当然として意見表明をするチェック期間なのです。

 そういった点を加味すれば、今必要なのは ニセコ町まちづくり基本条例にあるような「情報の共有」と「住民参加」を主眼に置いた条例の制定です。担当者は我々にこう答えられました。「何時もそれを主眼に置いた行政運営に心がければ、市民に対しても常にオープンに接した対応ができるし、そう心がけることで市民参加の輪は広がる」と我々に答えられたところです。
検討委員会に入られた皆さんの足を引っ張るつもりはありません。一つ一つを見れば一生懸命に取り組んだことだったのでしょう。しかし合成の誤謬が生まれる原因となったものは、50年、100年先を考えて、市民本位で政策を整えるとはどういうことなのかということを俯瞰して捉えられない行政マンの思考方法なのではないでしょうか。

 そうした点に留意し、行政が何時もいやがる条例制定を視野に、今後の議会活動に邁進したいと考えています